《《完結》待されてる奴隷を救った、異世界最強の龍騎士》第74話「ベルの慕」

リュウイチロウは晝寢をしていた。

ベルはジッと主人の顔に見っていた。リュウイチロウの言うとおり、仮にリュウイチロウのに何かあれば、ベルは行き場を失う。

またかつての地獄に放り出されるかと思うと、発狂しそうになる。しかし、それよりも、ベルはリュウイチロウを失うことそのものに怖れを抱いていた。

(私のではなく、主さまのが心配なのです)

いつからそう思うようになったのかは、わからない。もしかしたら最初に會ったときには、その慕がすでに芽吹いていたのかもしれない。今では日に日に、思いが募っていく。ときおりが苦しくなるほどだった。

しかし――。

(私と、主さまでは釣り合わない)

そういう思いがあった。

質値200を超えるリュウイチロウと、奴隷の分際であるベルとではあきらかに格差があった。それは用意に跳びこせる壁ではない。

あまりに悲しく、2人を圧倒的にへだてる壁だった。

いつまでも一緒にいたいというしさ。同時に、私は主さまに釣り合う人じゃないという現実。

その二つのが、ベルの小さなの奧でせめぎ合っていた。何かあるたびに葛藤が起きる。

あまりにもドス黒い記憶が、ベルのことを過去へ引きずり戻そうとする。

「お前は幸せになれるじゃない」

「お前なんかいるとリュウイチロウが汚れる」

熱した鉄球を持つように命令されて、爪をはがされて、熱したペンチで舌をすこしずつムシられる。

そんな慘憺さんたんたる過去が、無數の手となってベルを引きずりこもうとしてくる。

「主さま」

ベルはソッと龍一郎の手をにぎった。そして龍一郎の小指と、自分の小指を結ばせた。

小指がつながると、海底から引きあげられたような覚になる。

でも、いつか――。

この大切な人を、その深い闇へと引きずりこんでしまうのではないか。そんな錯覚におそわれる。

一緒に溺れてはいけない。

溺れるときは、私1人で溺れるのだ。

この人を巻き込んではいけない。

でも――。

もっと主人にれていたい。

小指だけじゃなくて、腕をつかみたい。カラダを抱きしめたい。ぎゅーと強く抱きしめてもらいたい。

二度と闇へ呑み込まれないように、強く抱きしめてもらいたい。

でも――でも――。

「私と主さまでは、釣り合わない」

葛藤がぐらぐらとベルのことを揺さぶる。

ベルの質値がもっと高ければ、あるいは、リュウイチロウの質値がもっと低ければ、こんな葛藤にはいたらなかっただろう。

悲しくなって、が張り裂けそうになる。

過去に溺れないために、ベルはソッとリュウイチロウのベッドにしのびこむ。

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