《《完結》待されてる奴隷を救った、異世界最強の龍騎士》第78話「フィルリア姫からの手紙」

部屋。

風呂からあがってすぐにベルは、ベッドで倒れ伏した。ノボせていたくせに、ノボせていたと言うタイミングを逃していたらしい。

宿屋の主人に氷袋を用意してもらって、ベルの頭に乗せた。

以前、ベルに看病してもらったことがあったことを思い出した。カラダが冷めると、ベルはすぐに寢った。

「はぁ」

と、龍一郎は重いため息を落とした。

安穏と眠っているベルの顔を見つめる。

まさか告白を斷られるとは思ってもいなかった。自信過剰だったかもしれないが、れてくれるはずだと思っていたのだ。

「はぁぁ」

ため息が止まらない。

コンコン

トビラがノックされた。

ベルを起こさないように、龍一郎はベルから離れた。

トビラを開ける。

エムールだった。

「どうしたんだ?」

「夜分遅くに失禮します。……もう寢ていられましたか?」

「いや。風呂から出てきたところだ」

正直今は、誰とも話したくない。

何か用事あるならさっさと済ませてしい。

「そうですか。おくつろぎのところ申し訳ありません」

と、エムールは丁寧に頭を下げた。

「気にすることはない。それでオレに何か?」

「はい。フィルリア姫から返信の手紙がありました」

「もう?」

フィルリア姫からの返答は、2、3日後になるかと思っていた。

「我々〝龍の派〟のあいだでは、すぐに連絡をとれるように、鳥を使って連絡を取りあっているのです」

なるほど、と龍一郎はうなずいた。

伝書鳩みたいなものだろう。

「それで手紙の容は?」

「地下に奴隷たちを収容している件。フィルリア姫は激怒しておられます。ケルゥ侯爵の悪辣な手段は、決して許されるべきではない――と」

こちらがその手紙となります、とエムールがさしだしてきた。

異世界だから羊皮紙かと思ったが、いたって普通の紙切れだった。手紙にはフィルリア姫の怒気をブチまけたかのように、インクがにじみこんでいた。

「あの人らしいと言えば、あの人らしい」

誠実なフィルリア姫の人柄を思い出した。

誠実であり、クロエイと素手でやり合う激しさもめているのだ。

「ケルゥ侯爵が、都市の地下にそれほど大人數の奴隷を収容していたなんて、私さえ知りませんでした」

と、エムールは下を噛みしめていた。

「隠してたんだろうな」

「フィルリア姫は、すぐにこちらに來るそうです」

「こっちに?」

「1500人のかわりに、私がを肩代わりすると息巻いております」

手紙に目を落とす。

たしかに強烈な筆圧で、そう書かれていた。

「その必要はないと、返答を書いてくれるか」

「それは、どういう?」

はオレが出す」

わざわざフィルリア姫にを出させていたら、龍一郎の面目が立たない。どちらにせよを出すのであれば、フィルリア姫よりも、龍一郎のほうが適任だ。

「良いのですか?」

「わざわざフィルリア姫に出て來られたら、なんのためにオレが來たのかわからないからな」

ビビって腰が退けていたなんて言ったら、フィルリア姫に幻滅されそうだ。

それになにより、今は捨て鉢な気分なのだ。

もうどうにでもなれ――といったじだ。

「わかりました」

「その代わりに、1500人の奴隷をれる場所が必要だ」

「はい。グランドリオンのほうでれることになるかと思います。グランドリオンの後任の領主は、フィルリア姫の息のかかった者ですから、すぐに承知するでしょう」

「それから、もうひとつ……」

「はい?」

「萬が一、オレに何かあったときは、ベルのことをフィルリア姫に看てもらいたい。その約束はしているんだが……」

エムールはその場にかしずいた。

「リュウイチロウさまにもしものことがあれば、ベルはこの私エムール・フォン・フレイがフィルリア姫のもとまで送り屆けます」

「ありがとう」

「しかし、リュウイチロウさまのに何かあるだなんて、私は思えませんけどね」

「もちろん萬が一のことだよ」

と、龍一郎は笑いをつくって見せた。

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