《《完結》待されてる奴隷を救った、異世界最強の龍騎士》第79話「を出す決意」

眠っているベルのことを、エムールに見ていてもらうことにした。

龍一郎はヤケクソの心境で、ケルゥ侯爵の邸宅に行くことにした。ベルが起きていれば、龍一郎のことを止めるはずだ。だから、ベルが眠っているあいだにを差し出すことにした。

すでに夜中だが、こうこうと輝く明かりのせいで夜というじがしない。

ケルゥ侯爵の邸宅にも、明かりが燈っていた。邸宅の口には見張りの騎士がいた。「こんな時間に何用だ?」と止められた。「白神龍一郎がを差し出しに來たと伝えてください」と返した。

騎士たちがケルゥ侯爵を呼びに行く。ケルゥ侯爵はすぐに出てきた。

「こんな夜にどうかしたかね?」

あいかわらず想の良い笑みを浮かべていた。

「1500人。奴隷の。オレが肩代わりしますよ」

「本気かね?」

「ええ。その代わりに1500……何人だか覚えてませんが、全員解放してもらいますよ」

言うと、ケルゥ侯爵はのけぞって笑った。

「ははははッ。これは面白い。ここまで來れば善意を越えて、もはや聖人だな」

「そんなんじゃないですよ」

もし人していたなら、酒でも飲みたいような気分だ。いや。レオーネではもしかすると未年でもお酒を飲めるかもしれない。チラリとそう思った。

「ずいぶんと不機嫌そうじゃないか」

「フられたんですよ」

にフられて、捨て鉢というわけか。まぁ良い、そっちがその気になってくれるなら、私としては有りがたいのだ」

「有りがたい?」

ケルゥ侯爵の笑みが深くなった。瞳の輝きが強くなった。

「ふっふっふっ。ふははははッ。質値200。あるいはそれ以上、老赤龍に匹敵するその。ぜひ、この私の手におさめたい」

さあ、こっちだ――とケルゥ侯爵は龍一郎の腕をつかんで、邸宅の中に引っ張り込んだ。

地下に連れて來られた。

今日の晝に見たときと景に変わりはない。1500人の拘束されたドームが広がっている。

ケルゥ侯爵が指をパチンと鳴らす。すると、拘束がいっきに外れた。掃除機のコードでも吸い取るかのように、チューブが暴に引き抜かれていく。壁に張り付けられていた人たちが、いっきに床に倒れた。

「良いんですか。先に解放しても? オレが、を出さずに逃げるかもしれませんよ」

「私は紳士だからね。君から強引に奪おうとするなら、すでにそうしていたよ」

たしかにその通りだ。

ここはケルゥ侯爵の都市であり、この男の手中なのだ。

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