《《完結》待されてる奴隷を救った、異世界最強の龍騎士》第84話「フィルリア・フィルデルン Ⅱ」

「やっ、止まれッ」

フィルリアはそう怒鳴った。

護衛の騎士があわえてブレーキを踏んだ。

「どうかしましたか?」

「エムールからの伝書鳥だ」

フィルリアは外に出て、空に手を振った。伝書鳥は目ざとくフィルリアのことを見つけて降下してきた。

伝書鳥は貴族たちのあいだではよく使われる鳥で、非常に頭が良い。《車》で手紙を屆ける郵便屋の商売敵だ。

手紙を広げる。

かなり急いで書いたと思われるエムールの文字がつづられていた。

リュウイチロウのを吸い上げて、セリヌイアが浮上したこと。セリヌイアの浮上とともに、できた影から大量のクロエイが出沒したこと。そして、リュウイチロウが助けた1500人は地上に置き去りにされたことも書かれていた。

「ケルゥ侯爵め!」

手紙はさらに続く。

貧民街はクロエイの襲撃により潰滅。

さらに、リュウイチロウの安否は不明。エムールとベルの2人はセリヌイアに乗っており、ベルの柄はエムールが保護しているということだった。

リュウイチロウの安否が不明。

その事実に、フィルリアは後頭部を毆られるような衝撃をおぼえた。

「バカなッ。ケルゥ侯爵は、リュウイチロウを連れて行かなかったということか?」

手紙に向かって怒鳴っても、返答はない。

手紙の容を護衛の騎士たちにも伝えた。

「いかがいたしましょう?」

と、護衛の騎士が問いかけてきた。

「急ぎセリヌイアへ行く。生き殘っている者がいるかもしれん。まだ私ので助けられる者もいるはずだ」

「しかし、都市の影でクロエイが大量発生しているのでは?」

「都市の浮上合にも寄るだろう。高く飛んでくれているのであれば、大丈夫だろうとは思うが……」

ここから見る限りでは、そんなに高くは飛んでいないように見える。空を飛ぶというよりも、空中に浮遊しているといったほうが的確かもしれない。

「接近は危険でしょう」

「安心しろ。危険だと判斷したらすぐに退く。それに、これからは朝だ」

「はッ」

エムールに返答を書いた。

リュウイチロウの柄はこちらで捜索するということ。ベルの柄は引き続き死守しておけ、ということ。

伝書鳥は、優雅にたゆたう空中都市へと引き返して行った。

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