《《完結》待されてる奴隷を救った、異世界最強の龍騎士》128話「笑顔」

3日3晩続いた日食が明けた。

暗闇のなかでもクロエイはまったく姿を現さなくなり、質値の低い者たちも自由に外を出歩くことができるようになった。

その日――。

ゼルン王國――否――世界各地から紳士令嬢がセリヌイアに集まった。セリヌイア城の大ホールに、各國の貴族たちが集まっている。吹き抜けになった2階で司會をしているのがエムールだった。

「えー。本日は、ご多忙にもかかわらず、ダンスパーティにお集まりいただきありがとうございます……」

と、紋切型の挨拶をしていた。

リュウイチロウのお見合いをかねたダンスパーティだった。リュウイチロウに申し込まれるお見合いの量が尋常ではなくなり、1人ずつでは対処しきれなくなったのだ。このパーティにはベルも參加していた。

パーティ用のドレスを、ベルは一著だけ持っている。青く染された絹のドレスを、リュウイチロウに買ってもらったことがあるのだ。ずっと大切に保管していたのだが、まさか実際に著る日が來るとは思わなかった。ベルのカラダの傷跡を隠すために、出部分はなくなっている。首の部分もシッカリと覆い隠されている。

このパーティは庶民も貴族も関係なかった。

質値の低い者たちも多く參加している。ベルがいてもなんら不思議ではないのだが、やはり奇異な目を向けられることが多かった。

顔の傷が目立つのだ。

貴族のたちから、くすくすと笑われている。あからさまに目をそらす者もいる。そういった態度には、ベルはもう慣れていた。

「それでは領主のリュウイチロウからも、挨拶をしていただきます」

とエムールがを退いた。

リュウイチロウが現れるや否や、歓聲があがった。リュウイチロウがそのをもってして、レオーネという全世界のクロエイの出現をおさえたことは、すでに周知の事実となっていた。

終末かとさえ思われた3日間の暗闇のなか、クロエイは一度たりともわかなかったのだ。

彼は自他ともに認めるほどの、英雄なのだ。

リュウイチロウの挨拶が終わりダンスパーティがはじまった。たちはしい乙から、獰猛な野獣に変貌したかのように、リュウイチロウに殺到した。

しかし、リュウイチロウは他のたちには一顧だにせず、まっすぐベルのもとに歩いてきたのだった。

リュウイチロウはベルに問う。

「一緒に踴っていただけますか?」

これはお見合いも兼ねた、ダンスパーティだ。この場で、リュウイチロウがベルを選ぶ。それはとても大きな意味を持つ。

言葉は必要なかった。

ベルは、リュウイチロウの手をとった。

この手が、私を救い上げてくれたのだと思うと、おのずと涙がでてきた。

そしてベルは、じたのだ。

かたくなにこわばり続けていた、みずからの頬がゆるんでいることにーー。

ベルは笑った。

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