《最強家族のまったりライフ》15話 一狩り行こうぜ!

『ひっぐ、ひっぐ、うええええええん!』

『ごめんなさい!決して忘れてたとかそんなんじゃないんです!』

『ううっ、あなたが転生してからいつ連絡が來るのか楽しみにして見てたのに、3年も待たされて!わ、私の事なんかっ!ふぇええええええええええん━━━━』

イリス様の加護で貰った神託スキルを発してみたところ、號泣したイリス様の聲が響いた。

やってしまった、…………。そうだよ。イリス様に転生したら連絡してって言われてたのに、俺はすっかり忘れてた。

『やっぱり忘れて………ふええええええええええん!』

あ、ヤバ………。

『本っ當にごめんなさい!なんでもしますから!』

『…………何でも?』

『はい!許してくれるならなんでも!』

『それじゃあ━━━』

イリス様がそう言った瞬間、俺のに包まれ、俺は思わず目を瞑った。

次に目を開けると、俺はイリス様と會った場所にいた。相変わらず周りには何もなく、ただただ真っ白な空間が続いているだけだった。いや、違う。目の前にいる銀髪のイリス様を除いてだ。イリス様はその紫水晶アメシストも霞んでしまう程のしさを放っている紫瞳を真っ赤に晴らしてこちらを睨んでいた。怒っている顔も綺麗だと思ったのは緒だ。

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「━━!!!」

あ!イリス様って心読めるんだった。

気付いたときにはもう遅く、イリス様は顔を真っ赤にして、その場にうずくまってしまった。

俺も俺で、まさか聞かれるとは思っていなかったので、中では恥ずかしさのあまり悶えしていた。

『…………ノイント。』

《…………なに?ティオ。》

『私達はどうすればいいのでしょうか?』

《………ボクの方こそ聞きたいね………。》

『《はあ…………。》』

一緒に転移されたティオとノイントは目の前で起こっている主神と自分達の主人の様子に溜息しか吐くことができなかった。

10分程の恥心との戦いにより幾分かマシになった俺とイリス様は、イリス様がテーブルと椅子とティーセットとお菓子をどこからともなく出現させたので、椅子に座って紅茶とお菓子を楽しみながら、お互いに向き合っている。しかし、どちらも目が合うと、先ほどのことを思い出して、恥ずかしさのあまりすぐに目を逸らしてしまい、話が進まないので、俺は一端紅茶を飲んでを潤してから、話を切り出した。

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「あの、ところで俺は何をすれば許してもらえるのでしょうか?」

ここに來たのは3年も連絡しなかったのを許してもらうために來たのだ。來て早々に話の腰を折ってしまったが………。

「ん~そうねえ……。どうしまししょうか?」

「え!?考えてなかったんですか?」

「し、しょうがないでしょ!ここに連れてくれば何か思い付くと思ったんだもん!」

んな無茶苦茶な。やっぱり駄神か……。

「あー!また駄神って━━」

「そうだ。聞きたいことがあったんですよ。」

「話をすり替えて………まあいいわ。それで何かしら?」

「なんで俺はあんな化けしかいない人外の巣窟に生まれちゃったんですか………。」

チートスキルをもらって負ける気がしなかった俺の心はレグサンド家の皆さん化け達によって完なきまでにへし折られることになったので、なんであんなところに転生させられたのか知りたかったのだ。

「ああ、それね。別に狙ってやったわけじゃないのよ。他にも生まれてくるハイエルフはいたのだけれど私のスキルとあなたの作ったスキルに耐えられる程、魂のが大きくなかったのよ。だから耐えられる魂を探していったらレグサンド家しか見つからなかったということなの。」

なるほど、スキルが強すぎたのが原因だったのか。

「なるほど、そういうことだったんですね。俺のためにありがとうございます。」

「べ、別に気にしないでいいのよ……。」

俺がお禮を言うと何故かイリス様はそっぽを向いてしまった。なんで?………い、いや、そんなはずはないだろう。相手は神様だぞ?

とにかく話を変えるべく俺は話しかけた。

「イリス様。一つ気になってたのですが、俺の家は教會と敵対しているので、もしかしてイリス様とも敵同士ということになるのですか?」

教會とは教會のでっち上げとはいえ、魔王と敵対しているのだ。つまり、教會が信仰している神とも敵対するということなので、イリス様とも敵対すると思ったのだ。しかし、イリス様は不機嫌そうにその貌を歪めて俺の質問に答えてくれた。

「いえ。むしろ私やほとんどの神は魔王側よ。一部の神々バカ共がある一柱の神を中心にして教會側についているの。そいつの名は下級神ヴェーニャ。教會の奴らはそいつを主神だと思って崇めているわ。」

「教會はそのヴェーニャという神が主神だと勘違いしているのですか?」

「いえ、そうじゃないわ。そうね。し長くなるけどいいかしら。」

イリス様の話はこうだった。

ヴェーニャは野心の強い神だった。同じ下級神仲間には、顔を合わせれば毎回「俺はいずれ主神になってやる!」と夢を語っていたそうだ。神の中にも野心がある神は多數いるので、ヴェーニャが野心があるからといって何らおかしいことではなかった。だが、如何せんヴェーニャの野心は強すぎた。普通、野心がある神々がいるといっても、彼らはせいぜい下級神から中級神へ、とかいずれは上級神へ、というくらいのものだった。

だが、ヴェーニャの夢は主神・・。數多の神々の頂點に君臨する、唯一無二の存在。主神がその気になれば腕を振るうだけで、どれほど高位の神であっても一瞬で消滅させしまえる。主神と他の神々とではそれほどの隔絶とした差があるのだ。

そんな主神に末端の下級神がなろうなど天地がひっくり返ったとしても、世界が終わろうとも絶対にあり得ないことだった。萬が一、億が一、いや兆が一に主神になれるだけの力があったとしても、彼は仕事は他人任せ、自分より下の者は見下すなどしていたので人は全くなく、周りからの評価もすこぶる悪かったため、主神になったとて誰しも彼を主神とは認めなかっただろう。

しかし、それでもヴェーニャは諦めきれなかった。自分の人の無さには気付いていなかったので、力さえあればいいと考えていた。そんな時、ふと彼はあることに思い至った。"自分に信仰を集めれば力が増すのでは?"と。

彼はそれを実証すべく、地上にある教會に降り立った。その頃から教會はあったが、金に貪だったため周りの住民は嫌がって近寄らなかったらしい。だが彼、ヴェーニャが降臨したのを見たことで、住民はこぞって信者になった。降臨したヴェーニャは信仰をもっと確かなものにすべく、その時近くにいた教皇に神託としてこう告げた。

「我は主神ヴェーニャ。我の信仰を広めよ。さすればその數だけ報われよう。」

ヴェーニャは信仰がしく、教會は信者から集まる金がしかった。どちらにも利がある話だ。ヴェーニャが降臨したこともあり、ヴェーニャの思通り順調に信者は増えていった。そして、その分だけヴェーニャの力も増していった。だが、所詮は下級神だ。力が増したといってもせいぜい中級神がいいところだった。

この結果にヴェーニャは憤慨した。同時に"もっと信仰を強くしなければ"とも思った。この考えは間違っていない。狂信者と一般の信者では狂信者からの信仰の方が齎される力が強いのだ。よってヴェーニャは明確な悪を作ることに決めた。そう、魔王だ。こうすれば、救いを求めてより信仰を深め、信者も増えると考えたからだ。すぐにヴェーニャは教皇のいる教會へと降臨した。そして神託として魔王は悪だと告げると、即座にこの神託を広めた。教會も信者からもっと金を巻き上げるには明確な悪が必要だと思っていたからだ。聖職者とは何かと考えさせられるような考えだ……。

これにより益々力の増したヴェーニャを見た神々は、対立する者とそれにあやかろうとする者に別れた。

そのあともヴェーニャは力を増すために好き勝手やっていたが、そんな橫暴がいつまでも許されるわけがなく、事の次第を見守っていた主神イリス様がついにぶち切れ、ヴェーニャを牢に閉じ込めた。

一件落著かと思えたが、その牢をヴェーニャの取り巻きだった神々がこじ開け、ヴェーニャを逃がしてしまったのだ。このまま神界にいてもまた捕まるだけだと思ったヴェーニャは取り巻きを連れて地上に逃げてしまった。地上で神の力を使うのは止されているにも関わらず、ヴェーニャたちはバンバン行使して神々から逃げているので、神の力を使えない神々には彼らを捕まえることはできず、現在に至る。

「……というわけなのよ。」

説明している間もこの事にかなりご立腹なのか終始不機嫌そうな顔をしていた。俺は話の中で疑問だったことを聞いた。

「なんでイリス様はすぐにかなかったんですか?」

「あ、ああ………えーとね……」

その途端、イリス様はあからさまに揺し始めた。

「地球のゲーム機?ってやつが面白そうだったから地球の主神に頼んで送ってもらったのよ…………。それでやってみたら結構嵌まっちゃって………100年くらい気づかなかったのよ………」

「何やってんだあんたっ!」

「仕方ないじゃない!地球のゲームが面白いのが悪いんだもん!」

「なんで逆ギレしてんですかっ!」

「うぅ、だって楽しかったんだもん………魔みたいなモンスターをおじさんが狩ったり、段ボールの中に隠れるおじさんで敵地に潛したり、茸食べて大きくなるおじさんが走ったり、おじさん同士の大闘をしたり………」

はあ………やっぱ駄神だ。なんかおじさんが出てくるゲームしかやってなくないか………?てか最後のやつス○ブラじゃん!出てくるのおじさんだけじゃないから!

ん?イリス?

「あのモンスターを狩るおじさんのゲームでイリス様、名前何にしてましたか?」

「え、ええと………確か"イリス☆ちゃん"だったかしら。」

「やっぱり!フレンド登録してましたもん!」

「え!?もしかして"漆黒さん"?」

そうなのだ。モンスターを狩るゲームでほぼ毎日協力プレイで一緒にやっていたのが"イリス☆ちゃん"だったのだ。人違いかもしれなかったが、チャットでの口調も同じで俺のプレイヤーネームを知っているのだから間違えようがない。

「こんな偶然あるんですね!」 

「本當ね。あなたが向こうの世界で死んでから全く來なくなっちゃったからびっくりしちゃったわ。あ、じゃあ久しぶりに今からやりましょうよ!それで許してあげるわ!」

「え!でもゲーム機もないし、もうデータも……」

「安心して!今あなたのゲーム機取り寄せたから。データも殘っているわよ。」

なんという職権用だ………。まあ遊べるならいっか。

………

………

………

「そっち行った!」

「分かってるわ!ってあなたなに焼いてるのよ!」

「♪~上手に焼けましたー!」

「上手に焼いてる場合かっ!ってうわあああああ。」

「ふっ、まだまだだな、イリス様よ。俺はを焼きながらでも………ってわあああああ今焼いてるからこっち來んなああああああ!」

コゲが手にった。

「………もう許さない。このクソモンスターがああああ!やるぞ!イリス様!」

「え、ええ。」

………

………

……… 

「「やったーー!」」

「いやー大変だったわー。」

「そうですね。一時はどうなることかと」

「あなたが焼いてるからでしょうが!…………はあ、もういいわ。何はともあれ今日はありがと」

イリス様はその幻想的なしい顔に笑みを浮かべてお禮を言ってきた。しドキッとしてしまったがどうやら気づかれずに済んだようだ。

「あ、あの………また、遊んでくれるかしら?」

イリス様は俺に恥じらいながらそう聞いてきた。

「はい!勿論です!」

するとイリス様はパアッと顔を輝かせて嬉しそうにした。

「それじゃあ用事も済んだし、また一狩りいきましょ!」

「またいつでも呼んで下さい!」

それを合図に俺の視界は消え、次の瞬間には俺の部屋へと戻っていた。どのくらい経ったのだろうか?であっちに5時間はいたからな。まさか、浦島太郎みたいに何百年も過ぎてたりしないよね?

『あの空間に跳ばされてから5分程度しか経っていないですよ』

良かった~。まあ、何百年経っててもなくともこの家の人達は生きているんだけど。

《あの~ご主人様~》

何?ノイント。

《ボ、ボクもあのゲーム~?をやってみたいです!》

そうか!じゃあ今度イリス様のところに行ったら頼んでみようか。

《!はい!ありがとうございます!》

さて、なんか疲れたし、今日はもう寢るか。

『おやすみなさいませ』

《おやすみなさ~い》 

おやすみ。

クルス達が帰った後、一人になったイリスは一人考え込んでいた。

「うーん………確かにヴェーニャ達神々が敵対するのは普通なら脅威かもしれないけど………クルスの家なら問題ないのよね…………」

イリスが心配していたのはヴェーニャ達地上に降りた神々のことではなく………

「それよりクルスの家にあいつらが余計なちょっかいを出さなければいいのだけれど……」

一人一人が世界を滅ぼすだけの力があるレグサンド家を教會が刺激してしまわないかというものであった。

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