《最強家族のまったりライフ》23話 魔法の訓練①

「それでは、転送します」

ギムルのその言葉を合図に俺達の足元にり輝く魔法陣が現れ、一瞬の浮遊じたあとには周りの景が一変していた。し離れたところは森のようになっているが俺達の立っている場所は踏み固められたように固い地面が広がっていた。

これが転移魔法か。というかここどこ?

『ここは屋敷のある大陸ら4000キロほど離れたところにある未開の地“浮遊島ペリュエイド”です』

4000キロ!?日本だったら沖縄から北海道までを往復できるような距離を一瞬でしかも浮遊島ってことは空の上!

『この浮遊島ペリュエイドは外界から隔絶されているので、この島の魔は獨自の生態系を築いています。また、天敵もない中で捕食されずに長い間生きているので、ほとんどの魔が地上の魔とは比べにならないくらい強いです』

なんてとこに連れてきたんだ………。

『あ、勿論マスターよりは強いですが他の方々よりは斷然弱いですよ』

そりゃそうでしょっ!ここにいる母さん達より強い魔なんてだれが勝てるの!

「最初は私がお教えしますね。坊っちゃま」

シェーラってことは最初は風とと無魔法か。

ティオの説明に驚いている間にシェーラ以外は俺達から離れた場所でこちらを見ていた。

姉さん達は……森の方にって行っちゃったけど大丈夫かな?

「ではまず坊っちゃまのの魔力作の練度を見させていただきますね。私が言った通りにの魔力をかしてもらえますか?」

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魔法を教える上で必要なのかな。

「わかった」

俺が頷くと早速指示が出たのでシェーラの指示通りに魔力の循環を早くしたり、指先、足、目、耳などのの一部に魔力を集中させたりした。

途中で指示がなくなったのでシェーラの方を見てみると顎に手を當てて何やら考え込んでいた。

「魔力が淀みなく制できています……。魔力作を持っているとは聞いていましたがまさかこれほどとは……」

「ちょ、ちょっとクルス。あなたなんでそんなに魔力の制が上手いのよ?」

考え込んでいるシェーラに話しかけようか迷っていると母さん達が慌てたように駆け寄ってきた。

「え?魔力作のスキルがあるからだよ」

「「「「魔力作!?」」」」

やはり魔力作は貴重なようで皆一様に驚いていた。あのクールそうなギムルイケメンまで驚いているのはし面白かった。

「ここ百年は持つ人がいなかったっていうあの魔力作をクルス君がっ!というかセーラ!なんでシェーラが魔力作のこと知ってるのに親のあなたが知らないのよ!!」

「っ!!そういえばそうよね。クルス、なんで私には教えてくれなかったの?」

魔力作のことをシェーラ達に言ったのは昨日のことだし、母さんにも言った方がいいかと思ってたけど昨日は母さんとは會わなかったんだよね。

「母さんと會えなかったからだよ」

長々と説明するのも悪いので俺は簡潔に答えた。

『あ、マスターその言い方では──』

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なんで──わっ!母さんなんで抱きついて…って泣いてるっ!?何事!?

「ごめんなさいクルスーーーっ!寂しかったでしょう?仕事が終わったらすぐに趣味のお酒探しの旅に行っちゃっててクルスのこと何も考えてあげられなかったわ!!」

『マスター……。先ほどの言い方では育児放棄された哀れな子供のようですよ』

……そういうことね。いやでも子供よりお酒探しを優先しているんだから特に間違っていないような……。

『……』

あれティオさん!?

それより今のこの狀況を何とかしないと。母さんのらかいものが當たっているのだ。自分の顔が赤くなるのをなんとか抑えているがそう長くは持たない。

「これからは毎日クルスの部屋に行って一緒に寢るわね!」

え……あの、ちょっと……。

母さんの突然の行に俺が狼狽えて困していると、母さんには俺が不満そうに見えたのかさらに続けてきた。

「いいえ!それだけじゃ嫌よね?一緒にご飯も食べて一緒にお風呂もって……あら?それいいわね!」

か、母さんが暴走してる。そこまで気にしなくていいのに。

「だ、大丈夫だよ母さん。そこまで気にしてないから。それにシェーラや姉さん達や兄さんがいつも來てくれるから寂しくもないよ」

俺はいつもの景を思い出しながら一杯母さんをフォローした。

『だからマスター……その言い方は……』

またなの!?

「っ!寂しくないって……もう私なんか必要ないってこと!?私なんかがいなくても大丈夫ってことなのね!うっ、うわああああああああああん!!!」

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母さんはまるで浮気の現場を見た彼のようなことを口走り、大聲で泣き出してしまった。

なに!?なんで!?ちゃんとフォローしたのに!

『先ほどの言い方ですと”お前なんかが今更戻ってきたところで遅いんだよ!ぺっ!”という風にとられてもおかしくありませんよ……』

お、おお……。というかティオさん。なんでそんなに柄悪いの?

母さんは未だに泣き続けている。母さんの腕の中でこの狀況の打開策を考えていると、いきなり母さんの腕から力が抜け、糸の切れた人形のように橫に倒れた。

ちょっ、母さん!?

「ごめんねクルス君。この子一度泣くと全部悪い方向に考えちゃうのよ。セーラの誤解は私が解いておくからクルス君は魔法の練習していてね」

いきなり倒れた母さんに驚いたが、母さんの後ろから聞こえた聲に振り向けば右手に濃な魔力を纏ったレスティアお母さんが立っていた。狀況から察するにレスティアお母さんがやったのだろう。

「あ、ありがとうレスティアお母さん」

レスティア母さんはこちらにウインクで返すと母さんを擔いで俺が視認できない速度でどこかに消えていった……。

「……さ、さあ坊っちゃま。魔法の練習を再開しましょうか」

「う、うん」

ギムルとケリルはこちらに一禮した後何か話しながら戻っていった。姉さん達はここに來て早々にどこかへ行ってしまったのでここにはいない。

「先ほどの魔力作の練度でしたらすぐに魔法も覚えられますよ。ではまず風魔法から始めましょう。魔法はイメージが肝心です。吹き荒れる風をイメージしながら魔力を放出してください。適がない場合はイメージが霧散してしまうのでそのときは次の魔法に移りましょう」

ふむふむ。吹き荒れる風か……。

は試しとよろめく程の強い風をイメージすると頭の中に自然と詠唱の文と魔法の名前が浮かび上がってきた。

これを言えばいいのかな。一応手を前に向けておこう。

「風をここに求む、"疾風ゲイル"」

ビュゴオオオオオオオ!!

詠唱をしながら手に魔力を集めて放ってみると凄まじい勢いの風が生まれた。風は地面を抉りながら突き進み、20メートル程進んだ辺りで勢いが衰え始め霧散していった。

※ピローン 風魔法Lv .1を取得しました。

これが魔法か……。

「ぼ、坊っちゃま、あの魔法は初級魔法の疾風ゲイル……ですよね?」

「初級魔法なのは知らなかったけど疾風ゲイルだよ」

「本來疾風ゲイルは相手を風圧で怯ませるだけの魔法です。なのになんですかあの地面を抉る威力は!魔力を多く込めると威力が上がりますが、あの威力は異常ですよ!」

そんなこと言われても……。

『おそらくノイントの影響ですね』

《え!?ボク~?なんかした~?》

霊と契約をすると魔法の威力が上がります。それを加味せずに魔力を込めたのと魔力作のスキルでスムーズに魔力を送れたからでしょう』

契約にそんな効果があったなんて……。

霊のノイントと契約しているからこの威力になったみたいだよ」

「あっ、そういえばそうでした。"疾風ゲイル"」

シェーラにティオから聞いたことを説明すると、思い出したとばかりに手を叩き、おもむろに誰もいない方向に手を向けて、俺と同じ魔法を魔法名だけで放った。

ドパンッ!ズゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!

放たれた疾風ゲイルは俺の放ったものよりも凄まじい勢いで地面を削り取り、3メートルはある窪地を作りながら突き進み200メートル程進んだところで漸く勢いが衰え、徐々に霧散していった。

……俺は改めてこの家の力を見せつけられることになった。

「私も霊と契約していますが、屋敷の近くだと魔法を撃ちづらくて長いこと使ってなかったのですっかり忘れていました」

霊と契約しただけで出る威力じゃないっ!

だが顔には出さない。

「シェーラ、霊と契約してたの?お泊まりの時いなかったよね?」

「はい、風の霊と契約しています。私の霊はずっと呼んでなかったのもあって私ので眠り続けていたみたいですね」

「そうだったんだ」

霊ってれるんだね。ノイントもできるの?

《やった事がないのでわかりませんができると思いますよ~》

そうなんだ。あ、気になったんだけど、契約した霊って契約者と一緒にいるなら契約者が新しく違う屬の魔法を使えるようになったらノイントみたいに霊も使えるようになるの?

『いえ、霊は誕生した場所の屬に適応したらそれ以降変質することはありません』

でもそれだと複數の屬の魔法を持ってるシェーラが契約できないんじゃないの?

『マスター、霊の誕生した場所も、なにも一つの屬だけしかないわけではないのです。霊は同じ屬の魔力が周りにあれば生きていけます。上位の霊は自ら同じ屬の魔力を生して環境を作ることも可能です。ですので契約者が違う屬の魔力を持っていたとしても問題ないのです』

そういうことだったんだ。

「シェーラ、その霊は今見れる?」

他の霊もノイントみたいなのか確認してみたいからね。

「ええと……すみません。また寢てしまったみたいです。一度寢てしまうと中々起きないのでお見せすることはできなさそうですね」

「そっか。じゃあしょうがないね」

無理に見せてもらわなくても良いことだしまた今度お願いしてみよう。

「初級魔法が使えるようになれば練習していくことで上位の魔法も使えるようになっていきますよ。ですが、一朝一夕で使えるようになるわけではないのでこれからも練習していきましょうね」

「うん!ありがとうシェーラ!」

「はうっ!坊っちゃまにお禮を……これほど親になったのです。私が坊っちゃまの母親になる日も近そうですね……」

これからもよろしくという意味も込めて言ったのだがシェーラには違う意味に聞こえたらしい。このままだとシェーラが戻ってこなくなるので話を変えよう。

「ところで、次の魔法はなに?」

「……いや、あの計畫を実行すればすぐにでも━━━はい!次の魔法ですね。無魔法は特殊なので先に魔法を覚えましょう」

なんか危ないことを……いや、気にしない。

魔法には攻撃系のものはあまりありません。回復や攪などが主な魔法です。ではまずはる球をイメージして手のひらに出現させてください」

手のひらに魔力を集めて、る球をイメージ………お、詠唱と魔法名が浮かんできた。

「闇を照らせ"球ライト"」

すると魔力を集中させていた右の手のひらに野球ボールくらいの白る球が出現した。

ピローン 魔法Lv. 1を取得しました。

今回は霊と契約した効果も考えて発させたのでさっきみたいにはならない………はずだ。

「標準より大きい気がしますが、おめでとうございます!まさか一発で功させてしまうとは……」

「魔法の修得って大変なの?」

「はい。普通は魔法の修得には最低でも一ヶ月は必要です。やはり魔力作が原因なのでしょうか」

そういえばイリス様も魔力作があればすぐに覚えられるって言ってた。これはイリス様に謝だね。

『ふっふっふ。もっと謝してもいいのよ』

うわっ!何!?敵!?

『敵じゃないわよ!私よ!わ・た・し!』

誰だ………私しか言わない。新手のオレオレ詐欺?

『イリスよ!この世界の主神イリス様!神託であなたに話しかけてるの!』

ああ、イリス様か。どうしたんですか?何かあったんですか?

『え?いや、別に何もないけど………ひ、暇だっt━━━━』

あ、用がないんですね。俺今魔法の練習中なんで。それじゃ。

『ちょ、ちょっと待ちなさ━━』

ブツッ!

おお、神託スキルを意識すれば切れるんだ。知らなかった。いきなりイリス様から神託が來たと思ったら暇つぶしか……というかこの世界の主神が暇だからって神託下しちゃダメでしょ。

『マスター………今の、イリス様でしたよね』

ティオは先程のやり取りにどこか呆れた聲で俺に確認した。

うん、そうだね。

《切っちゃってよかったんですか~?》

…………まあ、イリス様だし大丈夫でしょ。

────この行が後から自分の首を絞めることになるとはこの時の俺は知る由もなかった。

「坊っちゃま?大丈夫ですか?」

「え?うん。大丈夫だよ」

「では最後に無魔法をお教えしますね。無魔法はその名の示す通り、屬がない・・・・・魔法です。つまりどういうことかというと、屬が付く前の純粋な魔力を魔法として使うことができるのです。また、無魔法は他の屬魔法と違い、明確なイメージや詠唱が必要ありません。これだけ聞くと"他の屬よりも簡単なのでは?"と思うかもしれませんがそうではありません。無魔法は詠唱とイメージがいらない代わりに高度なの魔力作の技を必要とされます。ですので一般にはあまり人気のない屬ですね」

なるほど、だからシェーラがさっき無魔法は特殊だと言ったのか。

「ですが、高度な技を必要とする代わりにとても強力な魔法や便利な魔法を使えたり、知識があれば既存の無魔法を改良して新しい魔法を作れたりできるので覚えることができるなら覚えたほうが良い魔法ですよ」

「無魔法ってすごいんだね」

「はい。坊っちゃまは魔力作のスキルがあるので意外と簡単に覚えられそうですね。しかも最大レベルまであげていてその上、上位スキルまで。むむ……これでは無魔法もあっという間に習得してしまいそうですね……。そしたらギムル達と代になってしまう……なんとか長引かせねば!」

 ああ…………またシェーラが暴走してる。魔法を教える側が長引かせてどうするの……。

「うーん……あっ!では坊っちゃま、早速無魔法をお教えしますね」

俺のそんな心の聲はシェーラには屆かず、しばらく考えたあとパッと何か閃くと何事もなかったかのように俺に無魔法を教えるために説明を始めた。

「無魔法に必要なのはイメージではなくの魔力作の技です。そうですね…………最初は"魔力弾"からやってみましょうか。やり方としては一點に魔力を集中させ打ち出すだけです。ですが、純粋な魔力は度の薄いと外に出た途端にだんだんと霧散していきます。そのため魔力を圧しなくてはなりません。例えば10の魔力を小石と同じ大きさとして1000の魔力を大巖と同じ大きさだとすると、1000の魔力で放つ"魔力弾"は10の魔力と同じくらいの大きさに圧しなければなりません。最初は上手くいかないかもしれませんが諦めずに頑張ってください」

「うん、わかった。」

じゃあ早速、右手に魔力を集中させ…………あれ?

《ご主人様?どうしました~?》

いや、上手く魔力を集められないんだよ。おかしいな……ティオ、何か分かる?

々お待ちください…………おや?マスターの魔力の流れを何者かが外部から妨害しているようですね。出所は……申し訳ございません。高度な隠蔽がされていて特定できませんでした』

え!?妨害?誰がそんなこと……だって周りには俺とシェーラとギムルとケリルしかいないはずじゃないの?

『はい、この島でこれだけ高度な隠蔽の技を持つ者は私達しかおりませんよ』

!!じゃあシェーラ達の中に犯人がいるのか。一誰が…………。

そう思い周りを見回し、果たしてその怪しい人は見つかった。

………………シェーラだ。

シェーラは俺が視線に気がつかないようで一人でぶつぶつと嬉しそうに呟いていた。

「……ふふふふ。我ながら良い案です。何故気がつかなかったのでしょう。私が魔法で坊っちゃまの魔力を妨害すれば私との魔法の練習時間も増え、さらに魔法が上手く発しない坊っちゃまに助言をして差し上げながらしずつ妨害を解いていけば魔法が上手く発したときに私のおかげでできたと思わせることができるのですから。これで坊っちゃまの私に対する好度は急上昇間違いなしです!」

どうやら自分の策が上手くいった嬉しさから心の聲が口に出てしまっているようだ。

なに魔法の練習の邪魔してるの!

『…………マスター。この妨害、かなり複雑に組み込まれたようで今のマスターでは取り払うことが不可能です』

ぐっ、無駄なところで化けっぷりを発揮して……!どうすれば……。

「ふふふ。坊っちゃま、どうですか?やはり難しいですよね?ですがご安心下さい。私が手取り足取りお教え致しますからね♪」 

白々しい……。とても良い笑顔で手をわきわきさせながら近づいてくるシェーラを恨みがましくジト目で見つめていると、シェーラの橫に黒い執事服の男が現れた。

……ギムルだ。彼はゆったりとした作で片腕を振り上げると手を手刀の形にし、未だに気づいていないシェーラの頭に殘像が殘るスピードで振り下ろした。

ゴパッ!!!!

目の前からシェーラが消え、凄まじい音が響いた。舞い上がった土煙が晴れるとそこにはうつ伏せで地面にめり込んだシェーラがいた。 シェーラを打倒したイケメンことギムルは地面にめり込んだままかないシェーラに呆れた眼差しを向けていた。

「全く……。魔法の練習だというのに妨害をしてどうするのですか。申し訳ございません、坊っちゃま。この者には後でしっかりと言い聞かせますので」

         

ギムルは俺に頭を下げるとシェーラの背中にれ、俺達を転送した時のように足下に魔方陣を出現させながら消えていった。おそらくシェーラを屋敷に連れて行ったのだろう。

俺のピンチ(?)に颯爽と現れ、華麗に悪(シェーラ)を敗するギムル。

やだ、イケメン…………。

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