《最強家族のまったりライフ》30話 朝食
「そういえばイリス様」
「んー?何よ?」
イリス様からの制裁をけたあと、イリス様の機嫌も直ったので、今は二人でイリス様が出したお茶菓子を食べながらまったりしていた。今回は俺一人だけが呼び出されたので、ティオたちは來ていない。
「………俺って本當にチート能力貰ったんですか?」
「何言ってるのよ。當たり前じゃない。魔力作は言わずもがな、スキルクリエイトなんて普通ならあり得ないスキルよ」
「そう…………ですよね」
「どうしてそんなことを…………ああ、そういうことね」
どうやら察してくれたようだ。
「まあ気持ちはわからなくもないけど、それはレグサンド家がおかしいだけよ。それに、その気持ちは大切にした方がいいわよ」
「えっ?」
「以前バカな人族の國が戦爭の道にするために勇者召喚をしてね。勇者って知ってると思うけど普通の人間より遙かに素質が高いのよ。だからレベルが上がるとすぐに強くなるの」
勇者は他より潛在能力が高いのか。
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「それで、勇者がバカだったのもあるけど周りが持て囃すものだから、調子に乗っちゃってね。自分は強い、だから何をしてもいい、とか思ったんでしょうね。勇者は自分の気にらないことがあれば力を振りかざして、しいものがあれば奪い取るような橫暴を働くようになっていったわ」
どこの暴君だよ。
「日に日に尊大になってく勇者を國はしきれないと思ったのか、ある日勇者に呪を使って命令だけを聞くり人形にしてしまったの。まあ、り人形になろうがなるまいが戦爭の道として使われてたのは間違いないんだけど、力に溺れた者がどうなるか理解してもらえたかしら?」
じゃあ俺も、もしレグサンド家じゃなくて別の家に生まれていたら、この勇者みたいに強い力に溺れて調子に乗ってた可能もあったのか…………。一度でいいからいつか街に行った時に俺強えええみたいなことをやってみたかったんだけど、それで力に溺れたら元も子もないんだからやめておこうかな。
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「ええ。それが懸命だわ」
「それにしても、本當にうちの人間はみんな化けみたいに強いですよね」
「神の立場からしても絶対に敵にはなりたくないわね………」
主神にそこまで言わせるとは………。
「他の魔王のところも家と同じくらいの力を持っているんですか?」
「さすがにあそこまでじゃないわ。でもそれに近い力を持つところはいくつかあるわ」
「危なくないんですか?」
「ある程度力がある魔王はみんな溫厚よ。攻撃されなければ襲うことはほとんどないわ」
「ある程度力がある魔王はってことは………」
「ええ。あなたの思っているとおり、若い魔王や弱い魔王は自分の強さを誇示するために街を襲うことがあるわ」
傍迷な話だ。そのせいで魔王イコール悪みたいに思われてる節もあるんだから。
「まあ、それもあるけど魔王の財寶しさに敵対している國もあるわよ」
そういえばそんなことを前に父さんに聞いたな。たしか聖國とか今のフォルスティン王國とかだったような?なんで國ごと敵対してまでしてお寶がしいんだろう?たかが一個人の財寶なのに。國の方がもっと持っているはずでしょ。
「弱い魔王でもだいたい國の3分の1に匹敵するくらいの資産があるらしいわよ。今度あなたのお父さんにでも頼んで寶庫を見せてもらったら?」
最低でも國家資産の3分の1って、凄いな魔王。それだけの蓄えがあれば一生安泰だよ。俺、將來魔王になろうかな?
「ところで、あなたこれから何かしたいことってあるの?」
「え?別にないですよ。ただ家で家族とのんびり暮らしていきたいです」
「あら、意外ね。転生する前は異世界転生と聞いてあんなにはしゃいでたから、てっきり冒険したいとか思っているのだとばかり………」
「俺も転生する前はそう思ってましたよ。でも毎日これ以上ないくらい味しい料理を食べることができて、かな自然に囲まれて、セキュリティも化けみたいな強さの使用人のおかげで安心という生活を手放せますか?」
「…………それもそうね」
「それに、旅に出ることで姉さん達や母さん達に會えなくなるのは寂しいですしね」
「あら、家族のことを大事に思っているのね」
「ええ。…………前世では家族なんて呼べる人はいませんでしたから。転生して初めて家族と呼べる人達に會えた気がします」
俺の前世の親はストレスが溜まると、俺に言いがかりをつけて當たり散らしてくるような親だった。そしてストレスが解消されると途端に優しくなり自の言を省みてすぐに謝ってくるのだが、またストレスが溜まると同じ事を繰り返すのだ。また、俺の親は子供に夢でも見ているのか俺のやりたいことを盡く否定し、自分自ができなかったことを俺にやらせてよく自己満足に浸っていた。…………そんな親だったので俺にはとてもあれを家族とは思うことはできなかった。
「そんなことが………ごめんなさい。嫌なこと思い出させちゃったわね」
前世の親のことを思い出していたらイリス様は心を読んで俺の親の記憶を見たのか申し訳なさそうな表になってしまった。
「イリス様が謝ることじゃないですよ。俺はイリス様には謝してるんです。イリス様がレグサンド家に転生させてくれたおかげで俺は今とても楽しいんです」
周りは化けみたいに強いからよく自分と比べて凹むし、シェーラはなんか獲を狙ってるかのように俺を見てきてなんか怖いし、姉さん達とをかして遊ぶときは死を覚悟するし、ノイントは霊だしティオはスキルだし…………
「え?楽しい要素は?それに最後の二つはただの事実じゃない!」
「あれ?本當だ」
イリス様はまたしても俺の心を読んでツッコミをれてきた。おかしいな。楽しい要素よりも大変な要素しか思い付かない…………。
「と、とにかく楽しいんです!」
「………思い付かないからって誤魔化したわね」
バレてる………。
「ピュ~ピュピュ~(口笛)」
「くっ、無駄に上手いじゃない!」
「前世で沢山練習しましたから」
「………はあ。まあ楽しくやってるならそれでいいわ」
「イリス様、もしかして心配してくれてたんですか?」
「ばっ、そんなわけないじゃない!ちょっと気になっただけなんだからね!ほ、ほらもう結構時間が経っちゃってるわ!早く帰りなさい!」
俺がそう聞くとイリス様は顔を赤らめながら慌てて否定した。
「え?でもまだここに來て一時間くらいしか経ってませんよ?ここなら一時間も一分くらいだったと思うのですが────」
「いいから帰りなさい!じゃあね!」
イリス様のその言葉を最後に俺の視界は真っ白に包まれた───
「んん………」
《あ、ご主人様~おはようございま~す》
『マスター、おはようございます』
ノイント、ティオ、おはよう。てことは戻ってきたのか。
あれ?カリスは?辺りを見回してみるがどこにもカリスの姿はない。ん?なんかお腹の辺りがふわふわして気持ちいいような………。
『おい、いつまで私を抱いている』
お腹に視線を向けるとカリスが俺に抱かれた狀態でいた。ふわふわで抱き心地がよかったから気がつかなかった。いつの間に抱いてたんだろう。
抱いていた手をどけてあげると俺の足の方へと移していった。
さて、俺も起きるか。
そう思い起き上がってびをしていると、不意にドアが開きシェーラがってきた。
「坊っちゃまー、朝ですよー。っとあれ?坊っちゃま起きていたのですか。おはようございます」
「おはようシェーラ。昨日は大変そうだったね………」
「そうなんですよー………。毎回仕事をサボってる罰だとか言われて屋敷全を1人で掃除させられたんですよ!しかも魔法無しの箒一本で!」
毎回サボってるって………それシェーラの自業自得だと思うけど。それにしてもこの家全を一人で、それも箒だけで掃除するのは無理があるんじゃない?なんせこの家、下手な地球のデパートより大きいんだよ。
「凄いね………。それで、結局終わったの?」
「はい!徹夜でやって先ほど終わりました!」
いや普通徹夜でやっても終わらないだろ。 
「が、頑張ったんだね」
「はい!坊っちゃまのことを思いながら掃除していたらいつの間にか終わっていました」
俺にそんな効果はないと思うんだけど、まあいいか。
「でもシェーラ徹夜でしょ?疲れてないの?」
「はうっ、坊っちゃまに心配していただけるとはっ!いえ、大丈夫です。多分10徹までなら問題ないと思います」
10徹で問題ないのか。やっぱり化けだ。
「………そうなんだ。そういえばシェーラはどうしてここに來たの?」
「それは勿論坊っちゃまの寢顔を盜み見ようと………じゃなくて朝食の準備が整いましたのでこちらでとるか食堂でとるか聞きに來たのですよ」
今なんか言わなかった?
「うーん、じゃあ食堂で」
「かしこまりました。では後ほど」
そう言ってシェーラは名殘惜しそうに俺の部屋から出ていった。と思ったら10秒くらい経つとまたドアが開きシェーラがってきた。
「え?シェーラ?」
「坊っちゃま、伝えてまいりましたので食堂までご案します」
そこまでしなくていいのに。でも、あの時間でどう伝えたんだろう、気になる。
《ご主人様~そんなことより早く行きましょ~よ~》
うん、そうだね。
「ありがとう。行こっか」
「ではこちらです」
俺が立ち上がるとカリスが俺の肩まで飛んできた。どうやら俺の肩が定位置らしい。
シェーラと一緒に歩きながら食堂まで向かっている間、終始シェーラはなぜかご機嫌な様子だった。
しばらく歩いて食堂についたのだが、ドアを開けてみると俺以外まだ誰も來ていなかった。
これなら自分の部屋で食べた方が良かったかな?
そう思いながら五分程待っていると朝食が來てしまった。未だに食堂には俺一人だ。
「誰も來ないね」
部屋で一人で食べるのはいいけど、こういう広いところで一人で食べるのは寂しいものがあるな。まあ、ノイントとカリスもいるから一人ではないんだけど。
「本當ですね。どうしますか?今からでもお部屋にお運びしましょうか?」
寂しそうにしている俺を見てシェーラが気を利かせてそう尋ねてきた。
「せっかく運んでもらったのにそれは悪いよ………あっ!じゃあシェーラ達も一緒に食べようよ!」
これなら俺も寂しくないしね。
「はい!是非━━━」
「坊っちゃま、それはいけません。メイドが坊っちゃまと同じ食卓で食事をとるなどあってはなりません」
俺の提案を聞いてシェーラが顔を輝かせて頷きかけたが、控えていた他のメイドが即座に俺の提案を拒んだ。
「うっ…………はあ、やっぱりそうだよね」
「分かっていただけましたか?」
「………そうだよね。俺みたいな子供と一緒に食事なんかしたくないよね」
「え?いやそのようなことは━━━」
「こんな子供と一緒に食事しても會話も弾まないし楽しくないよね………。それに食事は自分のペースで食べたいよね。俺なんかに合わせるなんてめんどくさいだけだもんね。ごめんなさい、自分勝手なこと言っちゃって。シェーラの部屋に泊まりに行ったとき、一緒に食べてくれたから、一緒に食べてもいいんだと思っちゃって、うぅ、ぐすっ、ううっ……」
あれ?自分で言っててなんか悲しくなってきた。涙も出てきちゃった……。
《お~いご主人様~。ダメだよ、完全にネガティブモードっちゃってるよ~》
『よくもまあ、自分の勘違いでここまで落ち込めるな』
「アウルが坊っちゃまを泣かせたわ………」
「ああ、可哀想に………」
「え?え?私のせいですか!?」
「というかシェーラ!泊まりってどういうこと!?羨ましすぎるんだけど!」
「仕事サボってクルス坊っちゃまと二人でお泊まりしてたなんてずるいです!」
「あ、いやあ、あはは………」
アウルと呼ばれたメイドとシェーラがなにやら慌てている。
ああ、そっか。俺がいきなり泣き始めたから困っているのか。
「ぐすっ、いきなり泣いたりして困らせちゃったね。……ごめん、もう大丈夫。あんなわがまま言ったりしないから。それに、俺にはノイントとカリスもいるから寂しくないよ」
いつまでも泣いていてはアウル達を困らせるだけなので、ぐしぐしと涙を拭いてできるだけ笑顔を作ってみせた。だがそれを見たメイド達はなぜか目に涙を浮かべてしまった。
「ああ坊っちゃま、なんて健気なのかしら………」
「いえ!一緒に食べましょう!ね、坊っちゃま!」
アウルが気を遣って一緒に食べようとしてくれている。
「いや、気を遣わなくても大丈夫だよ。ごめんね、困らせちゃって」
「……ああもう!坊っちゃま!正直言いますと私も坊っちゃまと一緒にお食事したいのです!」
俺がアウルの申し出を遠慮すると、いきなりアウルが吹っ切れたように今までの言を覆すようなことを言った。
「………そうなの?」
「はい!ですが私はメイドです。仕える方と一緒に食事をすることは本來遠慮しなければならないことなのです。ですが坊っちゃまからわれている以上そんなことは関係ありません!ですから一緒に食べましょう、坊っちゃま」
「ううっ、ありがとうアウルぅ……」
そんなこと思ってくれてたんだ。あれ?じゃあさっきのは全部俺の勘違い?
『やっと気付きましたか、マスター』
ごめんなさい………。
「坊っちゃま、私もご一緒してもよろしいですか?いいですよね!」
「う、うん。もちろんだよシェーラ。あと近い近い」
「あの~私達もご一緒してもよろしいでしょうか?」
他に控えていたメイド達もおずおずと申し出てきた。
「うん!みんなで食べよう!」
「「「「「「はい!」」」」」」
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