《最強家族のまったりライフ》33話 お酒の材料集め
「母さん。それ、お酒の材料じゃなかったの?」
「あっ!」
俺が上半が消失した魔、神金羊オリハルコンシープを指差しながら言うと、母さんはしまったというような顔をした。
「え、ええとたしか材料になる"神金羊(オリハルコンシープ)の玉"の場所は…………。」
母さんは慌ててお酒のレシピが書かれた手帳を取り出し読み進めていき、ホッとをで下ろした。
「良かったわあ。玉の場所は尾のっているところみたいだから大丈夫そうね。」
神金羊オリハルコンシープの尾の先端を見てみると、本が死んでもなおり続けていた。
「あれが玉なの?」
「そうみたいね。ちょっと取ってみましょうか。」
母さんは神金羊オリハルコンシープに近づくと無造作に玉の部分を摑み、思い切り引っ張った。
ブチッ!
雑っ!というか大丈夫なの!?ブチッていったよ!
「これが玉ね。なんだかガラス玉みたいね。」
俺の心配を知ってか知らずか母さんは俺のところまで戻ってきて、俺に玉を見せてくれた。大きさは20センチくらいだろうか。かなり大きい。これが本當にお酒の材料になるのか?
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「そうだクルス。さっき聞きそびれちゃったけど、その"黒盾球"?ってどんなことができるの?」
母さんが玉をマジックバックにれながら聞いてきた。
「名前のとおり形を変えて盾の役割をしてくれるよ」
「この小さな球がねぇ………」
母さんがそう言いながら今も俺の周りをクルクルと回っている"黒盾球"にろうとすると、"黒盾球"は攻撃だと思ったのか主である俺を守るように長方形になって俺と母さんの間に壁をつくった。
「驚いたわ………。こんなことができるのね!」
母さんは"黒盾球"の変化を見て驚いているようだ。
「ちょっとどのくらいの固さか試してみるわね!」
「えっ、ちょっ!」
そう言うや否や母さんは俺の靜止も聞かずに腕を振りかぶり、目にも止まらない速さで黒盾球を毆った。
パリーン!
黒盾球はその威力に耐えきれず、ガラスのように呆気なく割れ、土へと戻ってしまった。
「………うーん、発想自は悪くはないわね。でもこの魔法は式が繊細過ぎるわ。範囲が広い攻撃とかなら十分だと思うけど、一點集中型の攻撃だとすぐに破られちゃうわね。守る範囲を全部じゃなくて、攻撃の範囲だけに絞れればその分強度も上がって破られにくくなると思うわよ。」
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母さんは黒盾球が土に還ったのを見てし考えた後、黒盾球について細かくアドバイスをしてくれた。黒盾球は俺を覆うように変形するのでその分全の防力が下がってしまっていたようだ。気づかなかった。
「ありがとう母さん、試してみるね。………でも、やる前に一言言ってほしかったな。」
正直言ってすごい怖かった。だって化けみたいな強さの人が盾越しとはいえいきなり毆ってくるんだよ。心臓バックバクだよ!
「ご、ごめんなさいね。見たことない魔法だったからつい試してみたくなっちゃったの」
「うん。次から気をつけてね」
次が來ないでしいけど………。
ガサガサッ
「ギギャギャッ!」
「あら?」
母さんと話してると後ろから茂みを掻き分ける音と鳴き聲が聞こえたので振り返ってみると、そこには緑のに大きく灣曲した鷲鼻の醜悪な顔をした小人が神金羊オリハルコンシープを見つけて十數匹の仲間と騒いでいた。
「ゴブリン?」
「知ってるのね。そうよ、他種族のメスを拐って繁する、謂わばの敵よ」
俺が母さんに確認をとると母さんは鷹揚に頷いて簡単な説明をしてくれた。どこの世界でもゴブリンはゴブリンなようだ。
ティオ、ゴブリンのランクってどのくらいなの?
『ゴブリンのランクは最低ランクのFです。農民でも勝てます。』
「クルス、戦ってみる?」
ゴブリンが最弱なんだから外の世界の強さの基準を知るためにもいいかもしれない。
「うん、やってみる」
「ご主人様~ボクも~」
ノイントも戦ってみたいようだ。 
「じゃあ一緒に戦おうか」
「はいっ!」
「カリスはどうする?」
『私は遠慮する。ゴブリンのなど不味いだけだ』
「ああそう………。」
カリスはゴブリンが相手ということで乗り気ではなかった。
あれ?従魔って主人を守るものじゃないの?の味で決めるものなの?
「ギギャ?ギギャーッ!」
そうこうしているうちにゴブリンの方も俺達に気がついたようだ。ゴブリンは俺達をに満ちた瞳で舐め回すようにして観察している。
ん?俺達?母さんやノイントはともかくなんで俺まで?
「ご主人様は可いですから~。の子って言っても誰でも信じると思いますよ~」
ノイントが俺が思ったことに答えてくれた。
あり得ないでしょ。俺のどこがなのさ。
『マスター、後で鏡で自分の顔を見てみてください』
ティオまで!?………まあそれは後で見るとしよう。それより今は目の前のゴブリンだ。
これ以上母さんやノイントを下衆な視線に曬させるわけにはいかない。
「まあいいや。ノイント、やるよ!」
「はい~!」
自分に強化と加速、上位スキルの超越化と瞬速、そして魔力作での強化をかけてから俺とノイントは勢いよくゴブリンの群れに突っ込んでいった。俺は武を持っていないので、猿の魔の首を切り落とした時のように両腕に魔力を纏わせ魔力作で刃のように鋭くする。レベルが上がったからなのか魔法を習ったからなのかわからないが以前より魔力の扱いが向上し、目で見える程の度で魔力の刃を形することができた。
「はっ!」
そのままゴブリンのうちの一匹に薄して魔力を纏わせた右腕を袈裟懸けに振るう。魔力の刃はほとんど抵抗もなくゴブリンの肩口へと吸い込まれ、右腕を振り切ると目の前のゴブリンの上半がし間を置いて斜めにずり落ちた。
袈裟懸けに切ったのでゴブリンの臓やら何やらが丸見えである。ホラー映畫も真っ青なグロさだ。普通の人なら悲鳴をあげて吐き気を催すところなのだが、俺は何もじなかった。 
………稱號の"魔王の息子"の効果もあるけどそれ以外にも赤ちゃんの頃から黒ずくめさん達の悲慘な末路を間近で見てきたからだよな~。ある時は木っ端微塵にされ、またある時は生きながら臓をかき回される拷問をされ、またまたある時は姉さん達に吸という名のおやつにされ………そんなことをされてるのに未だにめげずに黒ずくめさん達は家に來るんだよなあ。本當にどこの誰なんだろう?
そんな取りとめのない考えをしている間、ゴブリン達は仲間がいきなりやられた衝撃から立ち直っていなかったようで考え事をしていて隙だらけな俺に攻撃をしてくることはなかった。逆にゴブリン達が衝撃から立ち直っていない隙をついてノイントが突っ込んでいった。
「球ライト~改造エディト~」
そんな気の抜けた掛け聲と共にノイントの掌に球が現れた。だがノイントが付け足した単語によって一つしかなかった球は次々に數を増やしていき、數えきれなくなった頃には辺り一面眩いに覆われていた。
「……ノイント?」
何をするつもりか聞こうとすると、辺りに広がっていた數えきれない程の球がいきなりノイントの掌に集まりだした。全ての球が集まるとそこにはその分だけ輝きを増した球が一つだけあった。
「よ~し、発~!」
ノイントが合図をするとその球は一條の線となり、凄い勢いでゴブリンの群れを突き抜けた。
「……お~すごいですね~」
「ノイント、何あれ?」
線が突き抜けるとそこにはの大部分が灰になったゴブリン達がいた。當然ゴブリン達が生き殘れるはずもなく、地に伏してかなくなっていた。
ノイントは自分がやったことなのに他人事のように驚いている。
「え~と~スキル改造で球を増やして一點に集中させるようにしたらこうなりました~」
………蟲眼鏡みたいなじかな?を集中させると熱を持つから、それを魔法でやったのかな?
「蟲眼鏡?というのはわかりませんがイメージはあってますよ~」
「クルスもノイントちゃんもすごいじゃない!」
ノイントに先ほどの魔法について聞いていると母さんが駆け寄ってきて開口一番にそう言った。
「え?俺も?」
俺よりノイント方がすごいと思うんだけど。
「當たり前じゃない。魔力でゴブリンを切り裂くなんてできないわよ!」
あの魔力刃はどうやら普通じゃできないらしい。
まあ魔力作のスキルでできるようなものだから當たり前か。
「ノイントちゃんも!あれ魔法よね?魔法って攻撃魔法がほとんどないはずだけど?」
母さんは魔法で攻撃する、しかも強力な魔法を使ったことに驚いているようだ。このことについてノイントがスキル改造のことを教えながら話すと驚いたものの納得していた。
「あなた達といると驚くことばっかりね」
「そうかな?それより次の材料は?」
「え、ええそうね。次は━━」
「…………ねえ、本當にあれ?間違いじゃない?間違いだよね?」
「………いいえ、間違いないわ。大きさも書いてあるとおりだし絵も完全に一致してるわ」
今俺達の目の前にはお酒の材料になる植があった。その植は、樹齢百年は越えてそうな大樹にへばりつくように生えており、鮮やかな黃緑の表面にを連想させるどす黒い赤の管のようなものが何本も走り、それがときどき脈打っているという、見れば見るほど植とはかけ離れている形をした植があった。
「これが寄生梅パラサイトプラムなんですね~………」
そう、これこそがお酒の材料になるという寄生梅パラサイトプラムなのだ。正直近寄りたくない。
『なんだ、寄生梅パラサイトプラムではないか』
「カリスは知ってるの?」
『ああ、見た目はあれだが味は保証するぞ』
「………そうなんだ」
あれかな?ゲテモノ料理的なじなのかな?
「ま、まあとにかく見つかったんだしよしとしましょう」
母さんは早くこの場を離れたいのか、足早に寄生梅パラサイトプラムに近づき強引に大樹から引き剝がした。
ブチュブチュブチュッ!
「うえ~嫌な音ですね~」
ノイントは寄生梅パラサイトプラムを引き剝がしたときの音に顔をしかめた。たしかにあれは聞いてて気持ちの良い音ではない。それは間近で聞いていた母さんも同じだったようで盛大に顔をしかめながら寄生梅パラサイトプラムをマジックバッグに仕舞っていた。
「もうここに用はないわね。はぁーなんかどっと疲れたわ。早く次に行きましょ」
余程寄生梅パラサイトプラムの形が神的に堪えたのかとても疲れた顔をしていた。
そこからの材料集めは特に問題もなく順調に進んでいった。問題といえば影竜シャドウドラゴンを見つけた瞬間に母さんがその心臓だけを持ってかえってくる荒業をみせたり、躙檎トランプルアップルが刃がびっしりとついたそのでゴブリン達をその名のとおりに躙したりしていたことくらいだ。
「ふう、これで全部揃ったわね」
「疲れた~」
「ふふ、お疲れ様」
空を見上げて太を見てみるともう日が落ちかけていた。
「もうこんな時間ね。早く帰りましょうか」
「うん」 
あーここから家まで歩くのかー。レベルも上がって能力もあがっているから辛いわけじゃないんだけど、面倒くさいなー。
『む?ならば私に乗るか?』
え?いいの?
『ああ、別に構わんぞ』
そう言うとカリスは俺の肩から地面に降りて俺からし離れたところで立ち止まると、カリスのがいきなりに包まれた。が収まるとそこには5メートルほどの大きさになったカリスがこちらを見下ろしていた。
『ほらクルス、乗れ』
「う、うん」
カリスのの変化に驚いてまじまじと見つめていると、俺が乗りやすいようにを屈めてくれた。
「クルス、何してるの?」
念話で話していたため、狀況が理解できない母さんが俺に聞いてきた。
「家までカリスが乗せていってくれるんだって。母さんも乗る?」
「あらそうなの。そうね、たまには空の散歩もいいわね」
「ご主人様~ボクも乗っていいんですか~?」
「カリス、母さんとノイントも乗るけど大丈夫?」
『ああ、問題ないぞ』
「じゃあ乗るよ、カリス」
おっほーフワフワだー。そして溫かい。ヤバい、これ寢そう。
「うわっ、すごいフカフカですね~」
「ああ~癒されるわ~」
ノイントも母さんもカリスの羽のり心地に大満足のようだ。
『それじゃあ、飛ぶぞ』
カリスは全員が乗ったのを確認すると翼を広げて空へと飛び立った。驚いたのは飛び立つときにほとんど音がしなかったことだ。フクロウみたいな羽の構造なのかな?
「うわあ」
周りを見渡してみると絶景が広がっていた。右を向くと、どこまでも続いていそうな森を赤く染める夕日が俺達を照らしており、俺は思わず目を奪われた。辺りを吹く風も心地良く、俺はこの景をずっと見ていたくなった。
「綺麗ですね~」
「本當ね~」
ノイントも母さんも同じことを思ったみたいだ。
「ねえカリス」
『なんだ?』
「またこうやって乗せてもらってもいいかな?」
『そんな遠慮しなくてもいつでも乗せてやるぞ。私も誰かを乗せるのなんて初めてで楽しいからな』
「ありがとう!」
俺達は家に著くまでその絶景を心ゆくまで堪能した。
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