《最強家族のまったりライフ》36話 個的な神々
なるほど………なるほど。つまり?
「自分では料理ができないから、そちらの神様に頼んで作ってもらって、それをあたかも自分が作ったかのように俺達に振る舞ったと」
「………おっしゃる通りで」
俺がイリス様を尋問して聞き出したことをまとめて確認すると、イリス様は俯いて絞り出すような聲で肯定した。
……やっぱり駄神は駄神か。
「ちょっ!」
「………(じー)」
「うっ………」 
駄神も今回は自分に非があると認めているのか、俺が責めるような目で見るとすぐに抗議をやめて俯いた。
 「俺が煽ったのが原因なのかもしれませんが、神様が噓ついちゃダメですよ」
「……わかってるわよ」
「一応神様なんだから気をつけてくださいよ」
「…………一応じゃないもん、事実だもん」
まあ、俺も母さん達に転生者であることを隠しているから強く言えないんだけどね。
「話は終わったネ?」
俺とイリス様が一區切りついたのを見計らって、お皿を回収しに來た……ええと。
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「そういえば自己紹介してなかったネ。私はリョウセン、武神をやってるネ」
「初めましてリョウセン様。クルスと申します」
リョウセン様はイリス様よりも頭一つ背の高い細な神様だった。20歳くらいの大人びた形な顔立ちで、腰までスリットのった白のチャイナドレスのようなものをに纏い、腰まである茶髪を三つ編みで纏めている。快活そうな茶の瞳は俺のことを興味津々な様子で見つめていた。
「よろしくネ、クルス。それで、なんでハイエルフと霊が神界ここにいるネ?」
「それは……」
「私が呼んだのよ」
「イリスが?主神が直々に呼ぶなんてお前実は凄い奴ネ?」
この世界の主神であるイリス様が呼んだと聞いて、リョウセン様はさらに俺に興味を持って見つめてくる。
……いや、ゲーム仲間として呼ばれただけなんだけど。
「ん?ゲーム仲間ネ?」
「あっ!」
リョウセン様も神様だから心読めるんだった。イリス様がこっちを睨んでくる。ヤバい、隠してた方が良かったのかな?
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「イーリースー?」
リョウセン様が先ほどの興味津々な瞳とは一転して、幽鬼のような面持ちでイリス様に詰め寄り、肩をガシッと摑んだ。イリス様の頬には一筋の汗が流れた。
「最近やけに私に仕事押し付けてくると思ったらゲームなんかしてたのネーーー!」
「ひぃぃぃぃぃぃっ!」
「「『ええぇ……』」」
 
それからイリス様は正座をさせられ、リョウセン様に小一時間お説教をされた。俺達はその景を見て、ただ呆れるしかなかった。
「うん、今回はこの辺にしといてやるネ」
「あ、足が……」
パタン
リョウセン様の説教が終わった途端、余程正座が辛かったのか糸の切れた人形のようにその場に倒れ伏した。
ツンツン
かない。ただののようだ。次は足をつつく。
ツンツン
「ギャーーーーッ」
お、いた。どうやら本當に足が痺れているようだ。
ツンツン
「ギャーーーーーッ」
「なんか面白そうネ。私もやるネ」
「やっ、やめ────」
ツンツン
「ギャーーーーーーッ」
「アッハッハッハ!これいいネ!」
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俺の悪戯にリョウセン様も興味を示し、一緒になってイリス様の足をつついた。リョウセン様はイリス様の反応を見てお腹を抱えて笑っている。
「…………あなた達、こんなことしてただじゃおかないわよ!」
俺達の悪戯にイリス様は怒り心頭といった様子でこちらを見てきた。だが足が痺れてけないようで顔だけこちらに向けてくる。
「よし!クルス、逃げるネ!」
「了解です!ノイント、走るよ!」
「え~!待って下さい~!」
このままイリス様の足の痺れが治るまで待ってたら何をされるかわからないので、駆け出したリョウセン様に便乗して一緒に逃げる。遠くから「こらぁーー!待てーーー!」という聲が聞こえてくるが無視して逃げる。
「そういえばご主人様~!どこまで逃げるつもりなんですか~?」
「……考えてなかった」
しばらく走っていると並走しているノイントが聞いてくるが、神界は先が見通せないほどの白い空間がずっと続いていて逃げるにしても終わりがなく、隠れるにしても周りに何もないので、どこにも隠れる場所がないことに今さらながら気がついた。 
「それならいい場所があるネ。一緒に來るネ?」
どうしようか考えていると、前を走るリョウセン様からそんな提案をされた。
「はい!是非!」
「お願いします~!」
俺達はリョウセン様の提案に1も2もなく頷いた。
「それじゃあ私に摑まるネ」
「はい」
俺とノイントはリョウセン様の手をそれぞれ摑んだ。その瞬間、周りの景が一変した。白い空間が続いているのは変わらないが、突然俺達の目の前に家が現れたのだ。それほど大きくはないが、こじんまりとした落ち著きのある家だった。
「ここまで來れば大丈夫ネ」
「何をしたんですか?」
「ん?ちょっと他の神の空間に転移したのネ。こうすればイリスはしらみ潰しにんな神の空間を探さなきゃいけないから、そうそう見つかることはないネ」
「一瞬でそんな凄いことしてたんですね」
「そうネ?上級神以上ならこのくらいどうってことないネ」
今さらっと上級神って言わなかった?
「ということはリョウセン様、上級神なんですか?」
「私は上級神じゃないネ。武神はその2つ上ネ」
……もっと凄い神様だった。自己紹介のときに武神って言ってたっけ。武神っていう名前自が階級になってたんだ……。そういえば神様の階級ってどのくらいあるんだろう?
『神の階級は主神を除くと下から順に下級神、中級神、上級神、樞神、そして武神などの各分類を統べる神々、律神の6段階あります。ちなみに各分類を統べる神々と律神はそれぞれ1柱だけがなれる階級です。下級神の下にも亜神や天使などがいますが神としての役割を果たすのは下級神からになるので省きました』
リョウセン様って実はとっても偉い神様?
「そんなことないネ。私と同じ階級の神は結構沢山いるネ。そんなことより、ここで突っ立ってないで早く家にるネ」
リョウセン様は話を切り上げると玄関の扉を開けて俺達を家にるよう促した。
「ラセアー!お邪魔するネー!」
「はーい。あら、リョウセン?いらっしゃい。それと、その子達は?」
リョウセンが扉を開けて呼び掛けると、中から一人のが出てきた。リョウセン様と同じくらいの長に黒髪灰瞳の人なだった。ラセアと呼ばれたはリョウセン様を歓迎したあと、見慣れない俺達を訝しげな表で見つめてきた。
「イリスが直接呼んだ子達ネ。今ちょっとイリスから逃げてるネ」
「へえ、イリスが?珍しいこともあるものね。というか、なんでイリスから逃げることになってるのよ」
リョウセン様が俺達のことを説明すると訝しげな表とは一転、驚いたような表を向けられた。
「イリスで遊んだらキレたのネ。だからちょっとの間匿ってしいのネ」
「遊んだって……はあ、まあいいわ。上がって。あ、私はラセア、魔法神よ。よろしくね」
「クルスです」
「ノイントです~」
「えっと、クルス君……うん?…ちゃん?にノイントちゃんね」
魔法神ってことはリョウセン様と同じ階級の神様か。なんでラセア様は俺を呼ぶのに疑問系なんだろう?どう見たって男でしょ。それより、ラセアって名前……どこかで聞いた気が。
「ラセア様~。この度は加護をいただきありがとうございました~」
思い出そうと必死に考えていたが、ノイントがラセア様にお禮を言ったことでその疑問が一気に氷解した。
あ、そうか!ノイントのステータスに加護があったから覚えがあったのか。
「ええっと…………ああ!もしかしてノイントちゃんって魔力から生まれたっていう霊の!?」
ラセア様は數秒ほど思い出すように思考を巡らせ、思い出した途端、興気味にノイントに詰め寄った。
「あ~確かにご主人様の魔力から生まれましたね~」
「やっぱりそうよね!ちょっとそのことで聞きたいことがあったの!クルス…ちゃん?しばらくノイントちゃん借りるわね。あ、家にあるものは勝手に使っていいから二人ともゆっくりしていってねー!」
「え、ええ~!?ちょっ、ラセア様~!?離して下さい~!」
ラセア様はノイントが目當ての人だとわかると、いきなりノイントを脇に抱え俺達にそう言い殘してすごい勢いで家を出ていってしまった。ノイントは突然のことでけず、そのままラセア様に掻っ攫われていった。
「ええ……」
「ラセアは研究気質があるから一度気になりだすと満足するまで全力で食らいついてくるネ」
「こ、個的な神様ですね……」
「さっ、中にるネ」
リョウセン様はそう言うと我が家のように遠慮なく中へとっていった。俺も後に続いて中へっていき突き當たりの部屋にるとそこにはリビングがあった。リビングにって右側に置かれたテーブルや椅子は木製でどこか溫かみのある雰囲気だ。左側にはベージュで統一された絨毯やソファなどの家が置いてある。その奧には外に出るためのガラス張りの窓があり、そこから見える景は神界の白い空間ではなく木れ日の心地よい、草が生い茂る森の中だった。
どうやってるんだろう?
「ああ、あれネ?簡単ネ。ただその森の空間を窓と繋げてるだけネ。他の神の家でもよくやっていることネ」
空間魔法ってそんな簡単じゃなかった気が………神様なら簡単なのか。
「適當にそこの椅子に座っているネ」
キッチンの方へ行ったリョウセン様に言われて、座ってしばらく待っているとリョウセン様がカップを2つもって戻ってきた。
「ほい、果ジュースネ。何の果か知らないけど」
「……ありがとうございます」
大丈夫なやつだよね?
リョウセン様が付け加えた言葉に不安を覚えながら恐る恐る飲んでみたが、普通に味しい葡萄ジュースだった。
「毒ってるかもネ」
「ブフッ!」
「冗談ネ」
「ちょっと!」
「アッハッハ!反応が面白くてついやっちゃったネ」
「……むぅ」
この神様は……。
「そういえば、リョウセン様って料理が上手なんですね。あの中華料理とっても味しかったです」
「お、嬉しいこと言ってくれるネ。作った甲斐があるってもんネ」
俺がリョウセン様が作った料理の想を伝えると、リョウセン様は嬉しそうに笑った。
「この世界にも中華料理ってあったんですね。驚きました」
「いや、この世界に中華料理はないネ。それよりその反応、クルス、お前転生者ネ?」
神様相手だし隠すこともないか。
「はい。地球で死んでイリス様に転生させてもらいました」
「なるほど、どうりでイリスが呼ぶわけネ」
俺が頷くとリョウセン様は納得がいったような顔をした。
「さっき、この世界には中華料理はないって言ってましたけど、ならなんでリョウセン様は中華料理を作れるんですか?」
「そうだったネ。ほら、私って武神だから武に関することには興味があるのネ。それで一時期、地球の人間の武に興味を持って地球を見てたのネ。地球の武って凄いのネ。スキルもステータスもない非力そうな人間が猛獣を圧倒したり、固いものを簡単に破壊したりしてたのネ。その中でチュウゴク?って國の武を見てたときに中華料理と出會ったのネ。地球の神に頼んで中華料理全種送ってもらったけど、あの味は忘れられないのネ。それから地球に行って本場で師匠に付いて80年くらい修行をしてようやく作れるようになったのネ」
80年も!?す、凄い………。人間だったらもう極めている領域だよ。というか普通に言ってるけど異世界転移してるじゃん!
「今でもちょくちょく地球に行っては學んできているのネ」
「頑張っているんですね」
神様が人間の下に付いて教わるなんて、普通なら絶対にしないだろう。
「ん?そんなことないネ。プライドの高い神はそうだけど、他の神もたまに下界に降りたり、異世界行ったりして々學んでいるのネ」
「そうなんですか」
神様って意外になんだ。
「そうネ、クルスに聞きたいことがあったのネ」
「何ですか?」
俺が神様への認識を改めていると、突然神妙な顔をしてリョウセン様が聞いてきたので、俺も顔を引き締めて応じる。
「……お前って、別どっちネ?」
ガタッ
ズッコケた。
ティオにもラセア様にも言われたけど何で!?見ればわかるでしょ!
「男ですよ!」
「え!?そうだったのネ!?」
「何で驚いてるんですか!?」
「だと思ってたけど間にちょっと違和があってもしやと思って聞いてみたけど、本當に男だったのネ……」
「こ、間っ!?」
「安心するネ。神の力でなんとなくわかるだけネ。見てはないネ。その年でその大きさなら普通ネ」
「見てるじゃないですか!」
「普通だから問題はないのネ」
俺は間を押さえながら顔を真っ赤にしてぶ。リョウセン様は悪びれた様子もなく、よくわからないフォローをしてくるので余計に恥ずかしくなる。
「ああもうっ!それはわかりましたから!それより何で俺がだと思ったんですか?」
このままだと俺が恥ずかしいだけなのでもう一つ気になっていたことを聞く。
「クルス、自分の顔見たことないネ?」
「え?家に鏡はありましたけど特に意識して見ようとは思いませんでした」
「…………一回、鏡で自分の顔をしっかり見るといいネ」
リョウセン様はそう言って、俺の手を引いて部屋にあった姿鏡の前まで俺を連れていった。
「ほら、見てみるネ」
そこに映っていたのは、肩までばしたプラチナブロンドの髪に澄みきった水の瞳を持つしいの子だった。
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