《最強家族のまったりライフ》44話 不穏な気配はどこへやら

近付いてくるグループは6人の若い男だけで構されていた。こちらを見ながら近付いてくるので十中八九、目的は俺達だろう。

「なんですかね~あの人達~。気持ち悪いです~」

ノイントの言う通り、その男達はニヤニヤと下卑た笑みを浮かべながらこちらに向かってくるのでとても気が悪い。

「坊っちゃま、私の後ろに」

アマリエも警戒した様子で俺を守るように立ち上がった。6人組の連中は依然としてニヤニヤとした笑みを浮かべたまま俺達の目の前まで近付いてきて━━━

バゴンッ!

━━突如視界から消えた。

…………………え?ちょっ、え?えぇぇぇ………?

「「「えぇ………」」」

俺達は突然現れた連中のあまりに呆気ない退場の仕方に理解が追い付かず、揃って呆れたような聲を出した。

「え?アマリエも知らないの!?」

アマリエを見ると俺達と同じように口を開けて呆然としていた。連中が吹き飛んだのはアマリエが何かしたからだと思っていたのだが、どうやら違ったようだ。

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じゃあ、一何が………。

「!?………え?あ、そうだったんですね。はい、はい、畏まりました。え?坊っちゃまに聞かれるから聲に出すな?こっ、これは失禮しました!━━━」

そう思っていると、いきなりアマリエが誰かと喋り始め、一人納得したあと慌てて誰かに向けて謝り、口をつぐんだ。

「ええと、アマリエ?」

「はっ!坊っちゃま!ななな、何でもないですよっ!」

俺がアマリエのおかしな行に驚いて話しかけると、アマリエは俺の存在にたった今気づいたのか俺を見て驚くと、凄く揺しながら何かを隠そうと一生懸命はぐらかしていた。

「今の出來事について何か知ってるの?」

「な、何だったんでしょうね?私にもよくワカリマセン………」

これ、絶対知ってるやつだ………。

「ち、晝食が途中でしたねっ!いただきましょうか!」

その後もアマリエを疑いの目で見続けていると、アマリエはわざとらしい程の話のすり替えを敢行した。

もうし粘ればポロッと言いそうなじはするけど、それを言ったことでアマリエが何か罰をけることになりでもしたら困るから、これ以上は止めといた方がいいかな。

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俺はそう思ってアマリエのあからさまな話題転換に乗って再度晝食をとることにした。

………時はし遡る。

クルス達の歩く街道から外れた森の中に気配の一切を消し、クルス達を監視する複數の影があった。

「ここで晝食を召し上がるようですね」

「そのようだな」

「むー!私もクルスと一緒にお晝ご飯食べたーい!」

「いけませんお嬢様。今回の任務は坊っちゃま達に気づかれないように護衛をすることなのですよ」

「わかっているけど………」

「レレナ、今は我慢よ。クルス君の初めての偵察なんだから邪魔したら駄目よ。」

「むう………」

今回の偵察の別隊であった。熾烈な爭いくじ引きを潛り抜けて別隊への切符を手にしたレレナ達4人は、クルスが困っているところを颯爽と助けたいという、だいぶ邪な思いを持ってこの任務に臨んでいた。尚、熾烈な爭いくじ引きの際に當主権限を振りかざして八百長をしようとしたカレイドは、自ら・・別隊の選定からを引いたのでこの場にはいない。………理由はお察しの通りだ。

「おや、何者かが坊っちゃま達に近付いてきますね」

隊の4人がクルス達の監視を続けているとクルス達に6人組の男達が近付いてきた。

「あいつら凄いニヤニヤしてる!絶対クルスを見て変なことを考えてるんだわ!あんな奴ら潰しましょ!」

「坊っちゃまは顔を隠しているのでおそらくアマリエが目的かと………」

「だとしても不愉快だわ………。レレナの言うとおり潰しましょうよ」

アマリエを見ていやらしい笑みを浮かべて近付いてくる男達にレレナ達は一様に不快を顕にした。

「ですが、本當に無害な可能も捨てきれません………。それに、坊っちゃま達の目の前でそんなことをすれば、坊っちゃまに気づかれてしまいますよ」

下卑た笑みを浮かべる男達に憤るレレナとレスティアにメイドは渋面を浮かべながら諌めた。

「うっ、それもそうね………」

レスティアとレレナはメイドの言葉にやりきれない気持ちをじながらも踏みとどまり、近付く男達の監視を続けた。

「あ……」

男達がクルス達の目の前まで近付いてきてしまっているのに、くにけず監視をすることしかできない自分達の狀況を歯噛みする中、執事が何かに気がついたように聲をらした。

「どうしたの?」

「いえ、鑑定で連中のステータスを見たのですが、稱號の欄に"強魔"と"強盜"がありまし━━━」

「待っててねクルス!今助けるからーー!」

「こらっレレナ!クルス君は私がっ!」

「いえ私ですっ!」

執事がその報を告げるや否やレレナ達は我先にと男達に向かって音速をも越える速さで突っ込んでいき━━━

バゴンッ!

遙か彼方へと吹き飛ばした。レレナ達は男達を吹き飛ばすと、そのまま吹き飛ばした彼らを追いかけて走り去っていった。一連の出來事はコンマ一秒にも到底満たない本當に剎那の時間で起こったことなので、視力が化けではないクルスから見れば、男達が視界から消えたように見えたことだろう。

「………しまった、出遅れた」

一人取り殘された執事は、颯爽と助けにる場面を逃したことを悔しがっていた。

「一応、アマリエには上手く誤魔化してもらうために事を伝えておくか………」

いきなりの出來事にクルス達と同じように呆然としているアマリエを見て、事の説明が必要と判斷した執事はアマリエに念話を飛ばした。

『アマリエ、私だ』

「!?」

執事がアマリエに念話を送ると、アマリエはビクッと肩を跳ねさせて辺りを見回した。

『落ち著け、これは念話だ。私達は別隊として坊っちゃまの護衛をしている。先ほどの事はあの男達が坊っちゃま達に悪事を働こうとしたことが確認できたので行に移したまでだ。そしてアマリエ、坊っちゃまが余計な混を招かないように先ほどのことを上手く誤魔化してくれ』

「え?あ、そうだったんですね。はい、畏まりました」

『………おいアマリエ。これは念話だ。聲に出さずとも話はできる。坊っちゃまに気づかれないように念話を使ったが、お前が聲を出しては意味がないではないか………』

「こっ、これは失禮しました!」

アマリエは今になって聲が出ていたことに気づいたのか、慌てて口をつぐんだ。

『はあ………。ともかく、そういうことだから坊っちゃまには私達のことを勘づかれないように上手く誤魔化しておくのだぞ』

アマリエにそう伝えると念話を切り、一人クルス達の監視に戻った。

「とりあえず、お嬢様達の回収に向かわねば………」

執事はクルス相手に上手く誤魔化せず、話を有耶無耶にしようとしているアマリエを見ながら、任務を放棄して吹き飛ばした男達を追いかけていってしまったレレナ達を回収する算段を考え始めた。

「ダンコーツまであとどれくらいかかるの?」

晝食を食べ終わり、また歩き始めてから2時間が経過した。別に1時間やそこらで著くとは思ってはいないが、一向に國の姿も見えないとやはり気になってくるものである。

「そうですね、このままの速さで行けばだいたい2週間はかかりますね」

「2週間………遠いね」

「まあ、これも旅の醍醐味ですから。気長にいきましょう」

「カリスに乗せてもらえばもっと早く著けるんだろうけど………」

「カレイド様からの命令ですからね」

俺達が転移を使ったり、カリスに乗ったりしてショートカットせずに徒歩でダンコーツへ向かっているのは家を出る前に父さんにそれらを止されたからだ。なんでも初めての遠出には多の苦労があった方が楽しいからだそうだ。

「あと1時間程歩けば町が見えてきますので今日はそこで宿をとりましょう」

「うん」

あと一時間か………。

ステータスのおかげで全く疲れはないが、神的にし疲れてきた。白いローブにを包み、顔を隠している俺を不思議がって、人とすれ違う度にじろじろと見られたからだろう。"隠"を使ってもいいのだが、それを使ってアマリエと話すとアマリエが一人で見えない誰かに語りかけているイタイ人だと思われてしまうので使いづらいのだ。

そういえばティオ、さっきからよく見かけるけど馬車に乗ってる人って結構多いんだね。もっとないかと思ってた。

『この世界では馬車が一般的な移手段です。ですが、マスターが見た馬車の多くは乗り合い馬車という、マスターの世界でいうところのバスのようなものです。一般家庭は乗り合い馬車のほうが経済的なので、馬車を個人で持っている家庭は大が商人や冒険者の家庭です。高級なものだと座る部分にクッションが付いていたり、衝撃吸収の魔法が付いていたりします。他にも、引かせるを馬から調教テイムした魔に変えている馬車もありますね』

んな工夫がされてるんだね。でも、衝撃吸収の魔法か………。これがあれば地球の車みたいにサスペンションとかつける必要がないよね。魔法って凄い。

『ですが、裏を返せば魔法に頼ってしまったからこそマスターの世界のような発想が浮かばないのだと思います』

そうとも言えるのか………。まあ、地球は地球、この世界はこの世界だよ。魔法があるから地球じゃ実現できなかったことができるわけだし。どちらが優れているとかないと思うよ。

『なるほど』

『む?クルス、前から気になっていたのだが、クルスのいた世界には魔法はなかったのか?』

うん、そんなの奇跡か何かと同じようなものだと思われていたからね。

『魔法がない世界とは、想像ができんな』

地球の人から見たらこの世界だって想像もつかないと思うよ。

『そういうものか』

「坊っちゃま、町が見えてまいりましたよ」

そんな話をティオ達としていると1時間も歩いていたようで、正面に行列ができている町の門が見えてきた。

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