《S級冒険者パーティから追放された幸運な僕、神と出會い最強になる 〜勇者である妹より先に魔王討伐を目指す〜》第12話 『幸運なボクの神が溫泉を作ってみた』

「うぎゃー! ネロさ、ネロ様〜お助けぇえ!」

深い森を進んでいると背後からついてくるフィオラの聲が聞こえてきた。

心配になって振り向くと彼は號泣していた。顔に白いなんらかのベトベトとした糸が、大量に付著している。

「だ、大丈夫? これなんなの?」

自分では取れないらしく仕方なく手を貸してやるが、中々取れない粘著力である。

引っ張ろうとすればフィオラの可らしい頰がびていって「ネロ様ーやめてぇ! 痛いからぁ!」と痛がってしまう。

どうしようもないので短剣を腰の鞘から抜くとフィオラが逃げていってしまった。

「ひぃ!? ネロ様のひとでなしぃ! 役に立たなくなったら斬り捨てちゃう人だったの!?」

いや、引っ張っても剝がれないので糸を切りとってやろうとしただけなんだけど。

よそ見していると前方で急に立ち止まったリンカと衝突してしまった。

「ご、ごめん!」

「しっ」

リンカはボクより數センチだけ長が高い、鼻を背中にぶつけてしまった。

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涙目で鼻を押さえながら謝ろうとすると、リンカは真剣な表で口元に指を當ててを低くさせた。

ちょうど前の方が茂みになっている。

「どうかしたの?」

「フィオラの顔に絡まった糸よ。あの粘著力はきっと『フォレスパイダー』のものよ。自分たちのテリトリー、つまり縄張りにってきた侵者を知するための糸を広範囲に森中に張り巡らすの。糸にれた侵者に反応して大軍で襲ってくるわ」

「にぃぃっ? じゃじゃ! 早く隠れなきゃいけないじゃないの!?」

蜘蛛の糸だとわかった瞬間のフィオラの顔が青ざめていた。

ボクの方へと飛びつこうとフィオラが助走をつけた瞬間、慌てながら彼を回避。

フィオラは頭から地面に落下した。

「隠れても無駄よ。侵者のに付著した糸は発信機の役割を擔うの。だから奴らからを潛めようとしても、糸を剝がさない限り追われ続けられるわ。だからネロ」

リンカはニヤニヤと恐ろしい顔で銀の剣を抜いて、ボクとフィオラを互と見てから提案した。

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「危険を避けるためにも、この馬鹿チビをいまここで片付ける……それとも囮にするかを決めましょう?」

「ダメに決まっいるでしょう!」

「ネロじゃまぁーー!!」

すぐさま拒否ったら地面に顔を押し付けていたフィオラがひょこっと顔を上げて、嬉しそうにボクの方へとまた飛びつき抱きつかれてしまう。

「ああ!」

糸がボクの服にも付著してしまった。あとおまけにフィオラの鼻水も。

リンカの殺気がじる。

「あーあ仕方ないわね。2人も増えて手間が掛かるわ……」

ニヤニヤと銀の剣をチャキっと構えるリンカ。

に恐怖を覚えながらもボクは説得を試みた。

「パーティリーダーの命令! 今すぐ剣をしまいなさい!」

「そ、そうだそうだ!」

どさぐさに同調してくるフィオラ。服から彼の鼻まで明な鼻水がびていた。

素直にリンカは剣をしまい、を低くさせた。そしてニヤけるように笑う。

「フフ……冗談よ。ネロはね」

「私は斬る気だったのかーーい! ネロ様ぁぁ!」

華麗なツッコミをれてからフィオラが顔を服にくっつけてきた、だんだんと付著する蜘蛛の糸がボクの方にも増えてきたので、フィオラをから引っこ抜いた。

「リンカさん……!」

「だ・か・ら呼び捨てでいいって言ってるでしょ? 私も気安くするから」

「ごめん、つい癖で。じゃなくてっ、そのフォレスパイダーってかなり厄介なの? ボクたちじゃ手がおえない相手だったら、一旦村に戻って……」

「いいえ、私の知っているジャイアントスパイダーより小柄でひ弱よ。主に戦闘を専門にしないを餌にして襲っているわ。それ以外のモンスターは避けるけど、弱いモンスターには大軍で容赦しないわ。あんたのステータスと私のステータスに掛かれば余裕よ」

「……じゃ、どうして?」

リンカは目だけをチラッとこっちの方に向けて、小聲で言った。

「厄介ではないけど、面倒なのよ奴ら。ある程度の筋力があれば、死に狂いでフィオラの顔とあんたの服に付著した糸をなんとか剝がせたりするわ。數時間も待っていれば溶けて剝がれる……けど」

「なになに……? 勿ぶらずに早く言って!」

「さっきも言った通り獲には大軍で襲ってくるわ。1匹に糸を吐かれて捕まるのならいいものの、數十匹が一斉に糸を吐いてきたら……私たちはどうなるか?」

自分でも恐ろしそうにリンカは汗を額からたらして、フィオラはゴクリと唾を飲んだ。

ボクも嫌な想像が脳みそに浮かんだ、そこには手足も出せず奴らの糸まみれになって苦しんで死んでいく自分。

最終的に弱ったところ食われていく自分の抜け殻……考えただけで恐ろしい。

「とりあえず先を急ぎましょう……」

リンカに続き、フィオラに足を摑まれながらボクらは森の奧に向かって小さな足取りで進んだ。

※※※※※※

なんやかんやと問題を抱えたまま夜になってしまった。

周囲を警戒しながら森を進んでいくと、木々で囲まれた広い湖に辿りついた。

「そろそろ休むか……?」

「そうね、一日中歩きっぱなしだっからクタクタだわ」

「お腹すいたぁ……」

メンバー全員が疲れをみせている、特にフィオラのお腹が大きく鳴り響いていた。

今夜ここで野営をするしかないと決めた。

大きな荷からテントと寢袋、なにに使用するかわからない紐を取り出した。

そして役割分擔。今夜の食料確保はリンカに任せて、ボクは得意にテントを張る役と用に焚き火役に赴いた。

一方のフィオラはというと、魔法でを掘って……というより強力な発で地面に大きなを開けた。

そこに浮かした湖の水を注ぎ込んでから、炎魔法で巖を溫めて水で溜まったへと放り込んだ。

じゅうう! と高溫で熱々の巖を放ったことによって聞こえる水の蒸発音。

フィオラは一個だけではなく2つ、水に投してから水に手をれて溫度を確認する。

初めて目にするが、どうやらフィオラは昔から獨自の方法で水浴びするための溫泉を作っていたらしい。

いつもリンカにバカと罵られている彼だが結構な知りで、野営の作業中のボクに々とダメ出しと指摘をしてきた。

ちっこくってロリのくせに、指示するその姿からはカリスマが溢れている。

「今夜の食料を捕ってきたわよ、喜びなさい」

まみれになった兎っぽいを2匹、首が既に切斷された鳥を5匹手にリンカが森から抜けて帰ってきた。

返りを頰に浴びて、生き生きとした表で死んだを運んでくる彼の姿が恐ろしい。

森のうす暗さによっていい味の恐怖が引き出されているリンカに恐怖を覚えていると、リンカはフィオラの作業により作られた溫泉を目にした。

「あら、なにこれ?……きゃっ」

好奇心で水に手をれて、水の溫っかさに驚くリンカ。

慌てるような表をみせる彼の顔が、次第に和んでいく。

「これってもしかして、溫泉かしら?」

「そうよ!」

えっへんとを誇らしく張るフィオラ、頭にはちっこい蜘蛛が歩いていた。気のせいだろう。

しかしリンカは彼に見向きせずボクの方へと近づいて、とっても嬉しそうな表でボクの肩に手を置いてニコリと笑った。

「やるじゃないネロ。さすがはリーダーと言うべきかしらねぇ」

「「へ?」」

揃って口を開くボクとフィオラ。

どうやらリンカはフィオラではなくボクが溫泉を用意したと勘違いしている。

「いや、それボクじゃなくて……」

「あんたには悪いけど私が1番乗りにるから。覗いたりしたら承知しないわよ?  チビガキはどーせなにもやっていないから、最後よ」

上から目線で我がのように溫泉を見て言うリンカ、手を合わせながらはしゃいで支度しにテントへと潛っていってしまった。

ボクの隣でフィオラがショックをけて、まったくこうとしない。

しかし待っていると、フィオラの表が変化した。

怒りや憎悪ではないことにすぐ気がついた。

両端のが上がって、手を當てている頰を赤く染めながらニヤニヤと笑っていた。

「ふふふ……ふふふ!  へへへ……ね、ね、ネロ様のったお水に……私が……。想像するだけで……キャッ、恥ずかしいぃ!」

ニヤけながらチラッとボクを見てくるフィオラ。

しかも味いものを発見したかのようにヨダレを口から垂して正直、拭ってほしい。

いや、こっちはこっちで嬉しい報告。

「まて、の使用した水を……! ボクが」

変な想像をしていると、さっきまで支度しにいっていた筈のリンカにドロップキックを突然食らっていた。

吹っ飛んだボクは湖にダイレクト水。

ブハッと咳をしながら水面から顔を出してリンカの方へと目を向けると、鼻がツーって鼻から流れ始めた。

鼻をつまむ。

何故ならリンカは……っていうよりタオル一枚なのだからだ。

出の多い裝備をにつけているよりも、とても表現しきれないえっちぃな雰囲気がリンカからはムンムンと漂ってきた。

白銀のロングヘアーにさらけ出された彼の綺麗な白い

タオルから微かに浮かぶ大きな

溫泉から漂う湯気がリンカを覆い、さらなるいかがわしさが引き出されていく。

タオルからひっこり顔を出す谷間に目がいってしまい、とてもじゃないがボクは揺を隠しきれない。

「なんでまだここに居るのよ! 変態!」

急に罵ってくるリンカに我を取り戻し、今ある狀況をすぐ把握したのだった。

覗きという犯罪的な行為をする気などボクには頭ない。

「ご、誤解だよ……それに、まさか本當に全部ぐなんて思ってもみなかったし」

ボクがここに居るのにも関わらず下著の一枚も履いていないという。

特はするが痛い目をみる。

「もう言い訳はいいから、とっとと退散! あんたの番になるまで森に散歩でも行ってきなさい、それかそこで潛って溺れて死ねっ」

「えぇ……」

こんな寒い夜に、冷たい湖に潛っているなんて出來ない。

すぐさま湖からびしょ濡れになって出てから、リンカを見ないように目を塞いで森の方へと急いだのだった。

リンカを通り過ぎる際、手に何かが引っかかってしまったが気に留めず急ぐ。

「ひゃっ、ま、待ちなさい!!」

リンカが怒鳴る。

キョトンとしたボクは足を止めて、おそるおそる振り向いた。

すると……そこには。

エンジェル。

純白な素をさらけだした天使が降臨していた。

潤んだ瞳でブルブル小さく震えていて。なんとも贅沢なまでの大きさを誇るおっ……を必死に片手で隠していていた。

もう片方の手を広げて、見せまいとばかりに汗まみれになったを必死に隠しそうとしていた。

「あっ……」

ピューと滝のように流れてくる鼻

自分の手の方に目をあてると、そこには白いタオルが握られていた。

そしてり行きを……なんとか理解してから、赤くなった顔を青ざめて後ずさり始めた。

「ーーー ねぇ。

それをどこに持っていく気なの?  ネロ君? もしかして、あんた……私のを見たいばかりに……………」

「え?  え?  いや、違う!  違うんです!!」

「……きゅううう!   この!  むっつり変態!!」

激しい恥心に駆られてしまったリンカの怒り混じりのび聲がボクの鼓を振させ、彼は握った拳とともに布1つ巻くことなくを揺らしながら、凄い速さでボクめがけて走ってきた。

鈍い音に、激しい激痛によりボクの意識が完全に途切れてしまった。

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