《S級冒険者パーティから追放された幸運な僕、神と出會い最強になる 〜勇者である妹より先に魔王討伐を目指す〜》第17話 『大將の代償・後編』
「相談事があるんだ、し時間を取らせてもらってもいいかな?」
「……」
ジュリエットの部屋の前には、かの勇者候補のトレスが立っていた。
頭部には包帯、首にはギプス、いつ負ったのかも分からない頰に浮かぶ赤くて痛々しい手跡。
彼の視線からじる邪念。
完全にジュリエットのの谷間へと注がれているものだった。
とっさにジュリエットはを隠して後ずさりする。
「斷るわ」
「まあまあ、別に俺個人の話だけではなく……ジュリエット、君自のことについても話しをしたい」
「……私の話し? なによソレ、興味なんかないよ」
ぶっきらぼうに答えるジュリエットに半端呆れながら、廊下に立ち盡くす怪我人のトレスは顔に手を當てて小さくニヤッと笑った。
部屋の扉を閉めようとするジュリエットの行を妨げ、彼の耳元でトレスは囁いた。
「…………ネロ・ダンタのことについて、話もしたい」
「!?」
トレスの言葉にジュリエットは反応した。
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扉を閉めようとした手に力が抜けてしまい、軽々しくトレスに扉をこじ開けられる。
そのまま部屋に侵したトレスに、ベットにまでジュリエットは押し倒されてしまった。
「ふふふ……君は昔から変わらず人を魅了してしまう程の貌を持っている。羨ましくて仕方がないよ……」
首筋に當たる生溫かいトレスの吹く息が、ジュリエットの心を震撼させる。
涙が出そうになりながら、それでもジュリエットは堪えた。
この男が憎い、だからこそ負けは許されない。
ネロなら、そうしていたかもしれない。
だってネロはこの屑野郎の為であろうと、その重々しい命を投げ打つほどの覚悟を持っていたから。
なのにこの男は何も知ろうとせずネロを、邪魔な蟲のように追い出した。
それが許せない。
「さあ、存分に楽しもうじゃないか!」
「……きゃっ!   なにするのよ、離して!」
ジュリエットに睨みつけられたのにも関わらず、火がついてしまったトレスは喜びをみせる。
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同時に彼は催眠魔法を発させ、抵抗するジュリエットのきを制した。
そのまま、ジュリエットは嫌いな男であるトレスに思うがままーーー
※※※※※※
「いいクエストを見つけたぞ諸君!!」
王都の冒険者ギルドに訪れた『漆黒の翼』一行は、依頼掲示板にて高値の報酬が出る依頼を探していた。
その中で活発な聲を張り上げる男、トレスは一枚の依頼書を手にした。
急依頼コーナーの依頼書である。
「えー、なになに?」
「キューキュー!」
さっそく、依頼の容に興味津々に食いつくカレン。
続いてサクマのチビドラが可らしい鳴き聲を発した。
容は深追の森で行方不明の娘の行方を捜索、報酬額は15萬ゴルド。
珍しく高値だと、見つけた本人であるトレスは上機嫌にニヤニヤとする。
トレスの向ける視線には、腕を組みながら、不機嫌な様子のジュリエットに向けられていた。
宿を出るまでジュリエットは朝からずっとそんな様子だ。
「君もどうだい? このクエストなら治癒魔法を使用せずとも達できる!」
「ちょっトレス、どうして頭のおかしいそのの事を気にかけるのよ?  一度は私……じゃなく他の仲間のことも……」
「まあまあ、いいじゃねぇかカレン。減るもんじゃないしよ」
嫉妬深いカレンがトレスに怒鳴った。
それを宥めるサクマ。
この景を目に、ジュリエットは思いだす。
修羅場になる直前にネロが宥めていた、その後に自分も加わる。
普段ならカレンが納得して終わる流れだが、サクマだけでは分が悪くて言い爭いは中々終わってくれない。
(本當………くだらないわね)
やはりネロが居なければ、楽しい日々は訪れたりはしてくれない。
崩落していく一方だ。
※※※※※※
 
「ということで、4日前から行方不明になった娘を見つけてしいんじゃ……」
依頼のため、トレスらは王都からし離れた『獣人の村』に訪れたのだった。
村のそばには深くて暗い森が広がっている。
森の名『深追の森』、無限のように広がる木々に、ここから見上げられる高さで立ちはだかる高い山脈。
そばには広大な湖もあるらしい。
今回はそこで野営しようという、トレスの提案に皆は手を上げて賛した。
ジュリエットは例外だ。
まずは獣人の村の村長の家で、正座しながら依頼の主な詳細を説明されていた。
それをトレスは笑顔で聞いてたため、正直なところ不謹慎である。
一通りの説明を終えた村長に見送られながら、村を囲む塀から出たトレス達は湖へと迎った。
「今日は森の探索、明日には本格的な捜索を開始する。力の消耗を避けるため、なるべく戦闘は極力避けろ、わかったかい?」
「はーい」
錬金の本を手にカレンが力無い聲で返事をする。
「へーい」
チビドラをでながら、どうでもよさそうに返事をするサクマ。
「コクリ」
もともと無口なアリシアは頷くだけ。その手には高級そうな杖が握られていた。
「……」
治癒魔法のための準備を全く整えていないジュリエットも、同様に無言である。
トレスとの距離が離れた位置に立っていた。
それを目撃するカレン。
気に食わなかったのか、カレンはジュリエットへと迫って力強く襟を摑んだ。
「なによ?  なんなんだよ、アンタのその生意気な態度?」
「……カレンよせよ」
サクマがカレンを止めようと手をばすが、サクマの手は叩き落とされた。
襟を摑まれたジュリエットは、平然とした様子だ。
「うざいのよ……トレスばかりがアンタに気遣って、それなのにアンタは……っ!」
「……うっさいわね」
平然そうな表で対応するジュリエット。
遂に耐えきれず激怒したカレンは拳を握りしめて、ジュリエットにめがけて振り下ろす。
とっさに目を閉じて、構えるジュリエット。
「やめろと言っているだろうが!!!」
メンバーらを全員包み込むほどの強大な威圧が、森中に飛びい、周囲を震撼させた。
カレンの手が止まり、トレスへと視線を移させた。
ジュリエットも顔を青ざめる。
(……危うくも忘れるところだったわ) 
トレスは文字通りに腐っていても、勇者に近い人なのだ。
この場の主導権は全て、この男に委ねられているのだ。
「チッ」
カレンは悔しそうに舌打ちをしながら、ジュリエットの襟を離した。
そのままカレンは、怒りを現にするトレスの元へと近づく。
「ごめん……なさい」
「カレン、君はもっと自分を抑制できるようにするんだ。仲間に手を掛けるなど、本末転倒だ。ジュリエットも含めて俺らは仲間。
いや、家族當然なのだ!」
グッと拳を握りしめながら、演説を開始させるトレス。
ジュリエットは目を細めつつ、つまらなそうに溜息をこぼす。
湖までの道のり、トレスの演説は続いた。
ずっと、終わることなく、ずっとだ。
辿り著いた頃には、トレスの演説はちょうど終了する。
「よーし! ではテントを張る仕事を君らに任せた!  俺は焚き火の準備をしてこよう!」
「トレスが? そんなのアリシアの魔法でちょちょいのちょいじゃない?」
荷を下ろしながら、カレンは疑問を口にした。
するとトレスは彼に指を突き立てて、メトロノームのように左右に揺らす。
「チッチッチ。量の魔力でさえ消費が許されない前線に俺らはいるんだ、いざって時に魔法を発出來なくなったらどうする?」
「回復薬を飲めばいいじゃない?」
「うっ、ま、まぁ……そうだが! 気にせず君らはサクマとテントを張れ! 君らに手間を増やしては理不盡だろう!」
(理不盡な塊のクセに)
湖をちょうど見渡せる大きな丸太に腰掛け、つまらなさそうに湖を眺めながらジュリエットはそんな事を考えていた。
「では、俺はションベン……ごほん、お手洗いに迎う。先に頼んだぞ」
丁寧に言い変えるトレスはポケットからハンカチを取り出して、森へと消えていってしまった。
彼を心配そうに見屆けるカレン達だが、ジュリエットは相変わらずの無表である。
そもそもトレスの話なんて、聞いていない。
 
※※※※※※
「なんだなんだっ、この害蟲どもは?」
森を1人で移中、トレスは鬱陶しそうにくなった顔を掻いていた。
妙に蟲が集ってくる。
それも森にってすぐ、トレスのにを吸する蟲『蚊』が數十匹が吸い寄せられるように集まっていた。
しかも通常より2倍デカイのが。
「くっ! このっこのっ」
蚊を潰しながらションベンから大便をするトレス。
一通り排泄し終えた彼は、頰を掻きながら野営所へと苦しい顔で帰還を果たす。
「やぁ、ただいま」
弱々しい聲でカレンに聲をかける。
しかし、カレンの表が強張りギョッと驚いていた。
「きゃあああ!!」
な何故なら、トレスのイケメン面が噓のように変化してしまったからだ。
ニキビではない、蚊に刺された部分がが大きく腫れていた。
まさに怪化したぶつぶつのトレスに、カレンは攻撃を繰り出す。
バチーーン!!!
「ぐほっ!!」
カレンはトレスだと判斷できず、腫れたトレスの顔面に目掛けて強烈なビンタを炸裂させた。
流石はS級パーティメンバーのトレスか、勇者候補のトレスすら顔が歪んでしまう程の威力だ。
「おーい、そこ気をつけてくれ。チビのウ◯コを放置したままだから」
チビドラを手に乗せながら、忠告するサクマ。
だが時は既に遅かった。
強烈な痛みにトレスは顔を両手で覆ってしまい、草に足を取られてコケてしまう。
「うおおお!!?」
 
ベチャ!!
トレスの顔が落下した先には、チビドラのウ◯コがあった。
それを回避も出來ずに、トレスのぶつぶつな顔面がチビドラのウ◯コに直撃してしまう。
遠くでそれを目撃したジュリエットは、心の中でトレスを嘲笑う。
(ネロ君に比べればまだまだ安い代償よ)
※※※※※※
仕方なくジュリエットは嫌々ながら治癒魔法をトレスにかけて、顔面が元どおりに再生させた。
それでも陣は決してトレスに接近しようとしない。
トレスを避けるように離れて、作業をおこなっていた。
続出する不安な展開に腹を立てながら、トレスは集めた枝や焚き火に必要な素材で火起こしを孤獨で作業し始めた。
「うおおお!!??」
だが、此処でも彼の不運パワーが発。
起こした火が裝備していた超貴重な裝備『純白な』という明化できる魔法道に著火、ちりぢりと燃えていた。
「おおおおお!! なんてことだぁぁあ!!?」
すぐさま火の消火を試みるトレスだったが、火を地面にりつけようと砂をかけようと中々消えたりはしてくれなかった。
逆に火が大きく広がってしまい、トレスの皮を著々と焦がしていく。
熱そうに汗を垂らすトレスは、思いついた最終手段に突する。
湖に目掛けて疾走。
『ダイナミックダイビング』を繰り出す。
「うおおお!!! 熱い! 熱い! 熱いいい!!」
バクリ!!
飛び込んだ瞬間、トレスは湖に潛っていた巨大な魚に丸呑みされてしまった。
それをそばで眺めていたメンバー達は作業の手を止める。
ジュリエットでさえ口を半開きにして、丸呑みにした巨大な魚を唖然と凝視していた。
別に心配はしていない、むしろ退できる絶好のチャンスかもしれない。
だけど『漆黒の翼』のメンバー達は、丸呑みにされたトレスを救うべく、それぞれの武を手に取った。
「……はぁ」
ジュリエットは溜息を溢した。
視線の先には、巨大な魚に応戦するメンバー達。
「ーーーーネロ君、ごめん……私」
ジュリエットは、トレスとの昨夜の出來事を思いだした。
[完結しました!] 僕は、お父さんだから(書籍名:遺伝子コンプレックス)
遺伝子最適化が合法化され、日本人は美しく優秀であることが一般的になった。そんなご時世に、最適化されていない『未調整』の布津野忠人は、三十歳にして解雇され無職になってしまう。ハローワークからの帰り道、布津野は公園で完璧なまでに美しい二人の子どもに出會った。 「申し訳ありませんが、僕たちを助けてくれませんか?」 彼は何となく二人と一緒に逃げ回ることになり、次第に最適化された子どもの人身売買の現場へと巻き込まれていく……。 <本作の読みどころ> 現代日本でのおっさん主人公最強モノ。遺伝子操作された周りの仲間は優秀だけど、主人公はごく普通の人。だけど、とても善人だから、みんなが彼についてきて世界まで救ってしまう系のノリ。アクション要素あり。主人公が必死に頑張ってきた合気道で爽快に大活躍。そうやって心を開いていく子どもたちを養子にしちゃう話です。 ※プライムノベルス様より『遺伝子コンプレックス』として出版させて頂きました。
8 144【書籍版8/2発売】S級學園の自稱「普通」、可愛すぎる彼女たちにグイグイ來られてバレバレです。
【講談社ラノベ文庫より8/2刊行予定】 権力者の孫娘にして超人気聲優アイドル・瑠亜の下僕みたいな立場に甘んじていた俺。 「アタシと幼なじみなこと、光栄に思いなさい! ッシャッシャ!」 しかし、しかし……。 彼女がやった「あること」がきっかけで、俺はぶち切れた。 お前とはこれまでだ、さらばブタ女。 これまでずっと陰に徹して、ブタの引き立て役だった俺。 ようやく普通に生きられると思っていたが、「普通」はなかなか難しい。 天才が集うS級學園の特待生美少女たちに、何故か次々とモテてしまって――。 これは、隠れハイスペックの主人公がヒロインとの「絶縁」をきっかけにモテまくり、本人の意志と関係なく「さすがお前だ」「さすおま」されてしまう物語。 ※ジャンル別日間・週間・月間・四半期1位獲得 ※カクヨムにも投稿
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