《S級冒険者パーティから追放された幸運な僕、神と出會い最強になる 〜勇者である妹より先に魔王討伐を目指す〜》第20話 愚者、幻影なる者の上げる決著の狼煙

目の前の敵は『第六使徒ビリー・ゼバブ・ベロフィーク』。

魔王直屬の部下にして、魔王軍の最強の鋭『七大使徒』と恐れられている一人である。

使徒の中では実力が最も劣っていると言われているが油斷はだ。

強大な敵を前にしながらもジュリエットは冷靜に相手を分析する。

ネロの『分析眼』に比べたら劣る報収集能力だけど得意分野だ。

「おやおや、何なんだいキミは?」

使徒のビリーは不思議そうにジュリエットを見つめる。

対するジュリエットは警戒した様子で杖を構えて、杖先に魔力を込めた。

「私はジュリエット・シルヴァ。ネロ君の仲間よ」

「ほう仲間ですか。なんともおしい貌を……彼にジェラシーが芽生えそうです。

だが、この場にいる以上は私の敵當然であり抹殺せねばなりません」

「知っているわよ、そのくらい。最前線で戦い抜いてきたから解るわ、あんたが只者じゃないって事ぐらい……」

ジュリエットの鋭い態度にビリーはニヤリと笑顔をみせ、黒い舌を口からつきだして自を舐めた。

「だったら何故でしょうか?  見てみれば、キミはただの僧ではありませんか? 戦闘に不慣れで弱、味方を回復する程度のことしか出來ない単細な職業の。そんなキミは何故この場にしたのでしょうか? キミが來たところでこの狀況が逆転する筈もないし打破することもない……不思議です、非常に悩ましい」

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ビリーは顎に手を當てながら、まるでこれから全ての展開が自の手の平の上にあるかのような、侮辱にも近い余裕っぷりをみせた。

非常にムカつく作だ。

魔力を込めたジュリエットは杖を空へと掲げ、赤い塊を放った。

赤い閃が空間を切り開いて、大きく発する。

「何? もしかして私に攻撃魔法が使えないとでも思ったのかしら?」

「攻撃魔法にしては何とも可らしい花火でしょうか! プクク、フハハ。愉快ですよキミは!」

腹を抱えながらビリーは面白そうに笑う。

ーー剎那、奴から強力な衝撃波がジュリエットとネロにめがけて放たれる。

ノーモーションでの攻撃でも、魔法でもない。

単に眼では捉えきれないほどの素早さで、指を弾いて発生させた衝撃波だ。

「《プロテクトベール》ーー!!」

近い距離での攻撃を回避しきれないと判斷したジュリエットはすぐさま、握った杖から魔力を放出させて縦3メートル橫3メートルもの明な正方形の壁を出現させた。

衝撃波がジュリエットの張った魔力の壁に衝突した瞬間、衝撃波をけ止めると同時に、一瞬で鏡のように砕け散ってしまった。

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「甘いよ!!」

ジュリエットに余裕を與えないように、ビリーの立つ位置から衝撃波が再び2つ放たれる。

しかも、先ほどの衝撃波より強力で速い。

「《プロテクトベール》ーー!!」

ジュリエットも負けずじまいと魔力を放出させ、二枚重ねの明な壁を前方に出現してみせた。

パリーン!! パリーン!!

一瞬でジュリエットの壁が易々と割られてしまった。

それてまもなお一つだけ、衝撃波の勢いは死ななかった。

すぐにそれに気がついたジュリエットは、再度魔力を込めようとしたが視界が揺れる。

ジュリエットはよろけながら、側の木に手をかけた。

「っ!?」

迂闊だった。魔力が足りない。

衝撃波の音が耳に鳴り響き、次第にソレはジュリエットの弱りきってしまったに目掛けて距離を詰めていた。

(うっ……! まさか指ではなく拳での攻撃だなんて、こんな威力ありえないわ……!?)

回避する作すら行わないジュリエット。

なぜなら自分の足元に大切な人、ネロがいるからだ。

もしここで1人避ければ、ネロに攻撃が命中してしまう。

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しかも魔法クールタイム中なので、衝撃波が自分たちに辿り著く前に壁は張れない。

クールタイムは、20秒もあるのだ。

(!)

的な狀況に陥ろうとしたその瞬間ーー

「ーーーーネロ!!」

ジュリエットの聲ではない、すぐ近くからのような聲が聞こえた。

ジュリエットは疲労により揺れる視界を聲の方へと向ける。

そこには出の多めの鎧、長い白銀の髪をゴムで纏めているがいた。

ジュリエットは彼を見て誰なのかがすぐに分かった。

ネロとパーティを組んでいた時代に、一度會ったことがある、それも最悪な形でだ。

最近、王都周辺をうろつく無駄に勢力のある盜賊団の幹部『薄氷のリンカ』

記憶力に優れていたジュリエットはすぐさま彼を見て、ネロを庇うように手を広げた。

前方から衝撃波、右から盜賊の攻撃、絶絶命のピンチにジュリエットは目を閉じて覚悟を決めたがーーー

「『スキル盜っ人》LV7!!!」

リンカはジュリエットにれて魔力を奪いとる。

魔力だけではない、何らかの霊魂のような形をしたモノもから抜き取られしまいリンカはそれを我がのようにへと取り組んでしまった。

そのままリンカは衝撃波に目掛けて手をかざし、魔法を素早く放ってみせた。

「《プロテクトベール》ーーー!!!!!」

ジュリエットが出現させた壁より遙かに巨大な壁が張られ、ビリーの衝撃波を軽々しく掻き消すようにけ止めてしまった。

「攻撃魔もろくに使えないのに、でしゃばんないでよね」

「リンカっ! どうしてここに!?」

ネロを背負って逃げようと手をばしたが、すでに彼が目を覚ましていることにジュリエットは気がついた。

※※※※※※

意識を取り戻すと、そこにはかつて『漆黒の翼』の仲間だったしき僧のジュリエットが、ボクに背を向けてリンカと言い爭っていた。

リンカが現在、ボクのパーティのメンバーだなんて知らないからだろう。

最初ボクもそういう反応で、荷を取られまいと警戒して後ずさりしたものだ。

結局、あれから盜まれてしまったけど。

ジュリエットのばす白い手を優しく摑み止めた。

「ね、ネロ! 目を覚ましたの!?」

久々に會って分かったけど、なんかジュリエット背が低くなったようなぁ……いや、ボクがびたのだろうか?

「!!」

「良かったよ! 本當に良かったぁ……!」

急にガバッと力強くジュリエットに抱きしめられてしまう。

さすがはジュリエットか花の香りがして良い匂い、顔に當たる溫かいも相変わらず大きくて……! と下心ゼロで考えていると、すぐそばから腕組むリンカの鋭い視線がボクのを貫いた。

「ばかっ!」

そして急に、バコッと頭に杖を叩きつけられてしまう。相変わらずの筋力のなさが、彼の子らしいところだ。

「ご、ごめん。なにがなんだか分からなけど、本當にごめんなさい」

「もうばかっ! ばかばかばかっ! だーから私がいなきゃ、ネロ君はいつまで経っても大ばかだから!」

ポカポカと優しく叩かれながら腕で彼の攻撃を防する。正直、さっき負ったダメージでまだ回復しきれていない部分に響いてくるから痛い。

いや……それよりもビリーの方はどうなったのだろうか?

「もうっ、話は後にしましょう! それよりもまず」

ジュリエットの攻撃が止むと、彼は前方の荒廃しきった村の中で腕を組み待機してくれているビリーの方に杖を向けた。

ビリーの表は相変わらず嫌らしいものだ。自分の攻撃が塞がれたのにも関わらず、ちっとも揺をみせたりしない。

そんな奴を睨みつけている自分がいた。

「………」

僕はジュリエットとリンカの肩に手を置いて「後ろへと下がってて」と言い引っ張った。

「ジュリエットちゃんここまで來てくれてありがとう。けど、すぐに逃げて」

ジュリエットは息を飲んで、失したかのような表をみせた。まるで期待していた言葉ではない事を告げられてしまった、そんな表だ。

「は?   どうしてなの?  どうしてなのよ?ネロ君。 せっかくここまで駆けつけたのに……せっかく逢えたのに、貴方を置いて逃げることなんて出來るはずないじゃない!!」

ビリーの元へ行こうとするボクを止めるため、ジュリエットはギュッとボクの手を握りしめてきた。

しかし、それを冷たくも払いのける自分がいた。

「……いいから逃げてよ」

出來るだけ彼にこの重荷を背負わせたくない。

だけではない、リンカもフィオラとミミにもだ。

そう思っていると、またジュリエットに手がギュッと握られた。

「いやだっ!」

むすっとした涙目のジュリエットに引き止められる。

「いいから逃げて」

出來るだけ強めにジュリエットの手を払った。

「ヤダッ!」

「逃げて、お願いだからさ」

「いやだって言ったら金際ヤダッ!」

ピキッと何かキレたような音が自分の頭の中から聞こえた。

「いいから逃げろって言っているだろうが!! しつこいんだよ!!」

ついに堪忍袋の緒が切れてしまい、自分でも信じられないぐらいの怒鳴り聲を張り上げてしまった。

ボクの豹変にジュリエットは驚き、手を離してくれた。

ジュリエットはお節介焼きだ。けど昔から相変わらずとも言っていいぐらいに鬱陶しいところが多い。

年齢は変わらないが、特にボクだけ何故か非常に気にかけてくれるしつこくて鬱陶しい姉のような存在だ。

毎日それで助かってきたが、今回らそんな生易しい狀況ではない。

今まで雑魚當然に這いずりまわっていた弱小の自分が言うのもなんだけど、これは生死に関わる非常事態だ。

がいなくとも、回復魔法に特化したフィオラがいるし死ぬことはまずないだろう。

「あらま〜生きていたのですね愚者よ! かんしん関心。 私の指を折った代償はでかいでしょうから、あの程度のデコピンでは足りませんよね!」

それに、あのムカつく七大使徒をぶん毆って吠え面を聞かせてやりたいものだ。

ひとまずジュリエットにはミミを任せて、リンカとともに二人を防衛。

フィオラの姿を認識していないであろうビリーに不意打ちが通るかもしれない。

が先ほどの攻撃て折れてしまったが『クリエイター』のリンカに新たな武を生してもらえばいい。

勝てる賞賛は未だみつからないけど、奴に最後の攻撃を仕掛けるのはボクだ。

勝てなくても良い、誰も失わないようにただひたすら守りぬくだけでいい。

決意をにボクはリンカに手を差し出した。

は武のないボクに気がつき、手を合わせて剣をクリエイトする。

それを投げ渡される。

「無理しないでよね。私、いちいちあんたの面倒は見ていられないから」

ではないだろう言葉をかけてくれたリンカに目を向けると、彼の震える手が目に映る。

「初めてよ、こんなにも変な臭いを放つ怪がいただなんて」

「……うん、ボクもだよ」

「私もね」

気がついたらボクの橫にジュリエットが立って、杖を握りしめていた。

完全に戦闘姿勢である。

「ジュリエットちゃん!? いいから逃げてって言ったじゃないか……!」

「嫌々だけど私はまだ漆黒の翼のメンバーよ、貴方は私のリーダーではないから言う事は聞けないわ」

「だけど、相手が誰なのかキミも分かるはずだろ!」

どうしてもジュリエットをこの場から離させたいボクの肩に、リンカが手を添える。

その表からは不安が晴れるように消えていた。

ジュリエットも同じだ、笑って敵に視線を定めていた。

「うん、『七大使徒』第6使徒のビリーなんとちゃらかんちゃら……でしょ」

「だったらどうして!?  どうして逃げないんだよ!」

「あのーおたく達。納得したかのように話を進めず相手の名前は明確に覚えて下さいませ。私はなんちゃこーちゃらではなく『ビリー・ゼバブ・ベロフィーク』という立派な名前でございますよ!」

敵のツッコミにいちいち気にかけるほど余裕がないので、ビリーの言葉はなるべく無視する。

頰を微かに赤らめているジュリエットが、上目遣いでボクを見ながら震える聲で言った。

「恥ずかしいけれどね………貴方と一緒いると、どんなことだって乗り越えられるような気がするの。仕方ないじゃん」

「!」

ーーーそうか、そうだったね。

ボクだけに力や能力なんて必要なかったんだ。

だってここまで支えてきてくれた幸運があったじゃないか。

背中を預け、肩を並べてくれる『仲間』というものが。

「しゃー!  私も逃げにゃいよ!  だって、いま丁度お兄ちゃんのおかげで耳が発現しちゃったのにゃ。にゃので私は強いのにゃ、だから戦うにゃよ!」

ミミの頭上には、メラメラと強大に燃えるような獣人の耳がまた生えていた。

暗黒に染められたこの空間をも照らすような希、かつて死んだ父さんが毎回話してくれた語。

明な獣族の英雄譚』

ミミのことだった……なんて無理もあるけど、なんだか似ていた。

不意に笑ってしまう。

「フィオラも諦めが悪いんだと、神界では有名だったですよ! いくらでも命令して使ってよねネロ様!」

ずっと存在が消えていたフィオラが突然出現して驚いてしまう皆。

ボクとリンカだけだけど、無論ミミとジュリエットにはフィオラが見えていないようだ。

とういか何処に行っていたのだろう?

いや、それよりも敵だ。

ビリーを捩じ伏せることを大優先に考え、後のことは仲間に任せよう。

「やっと準備が整いましたか愚者の集団よ。

しは退屈凌ぎに楽しめそうですが、いくら増えようが愚かな輩だとは変わりはない。

私に時間を取らせ! 無視してくれた罰を今ーーー!!」

ほぼノーモーションのきにより再びビリーから攻撃が繰り出されたが、ジュリエットとリンカが颯爽と前へと出た。

そして息を合わせながら、2人で同時に魔法を発させる。

「「《プロテクトベール》」!!!」

2人の守護魔法によりビリーの攻撃が消し去られる。

流石のビリーも口笛を吹きながら、驚いていた。

衝撃で舞った砂埃に紛れながらフィオラに合図を出して、ビリーへとめがけてボクとミミは地面を同時に蹴ってみせる。

「あいあいさっー!!」

膨大な風魔法をフィオラは、ボクとミミにめがけて出させられた。

舞った砂埃とともにボクとミミは前方に佇むビリーにめがけフ、ィオラの風魔法に吹き飛ばされる。

加速した速さでビリーとの距離をあっという間に詰めてみせた。

砂埃のおかげか、彼はボクらが接近していることに気がついていないようだ。

ミミは魔力を込めた爪と牙を剝きだし、ボクはリンカに渡された剣の切っ先をビリーにむけて突き立てた。

「お前こそ、ボクらの村を崩壊させた大罪人だっ! その罰を今ここで味わわせてやる!! 第六使徒!」

「いいでしょう! いいでしょう! 存分に私を楽しませてから、死んでくださいましっ!! フハハハハハハハハハハハハハ!!」

ビリーのヒステリックな笑い聲をも妨げる勢いで、ボクらは今度こそ決著の狼煙を上げるのだった。

「あら…………? おかしいわね、コレ」

殘されたリンカは鼻をスンスンと働かせながら、驚愕していた。

微かにビリーからボクの香りがする。

そんなリンカは、自の優秀な鼻を疑ったのだった。

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