《S級冒険者パーティから追放された幸運な僕、神と出會い最強になる 〜勇者である妹より先に魔王討伐を目指す〜》第23話 勇者候補の卑劣な手段

「決闘を承諾する」

トレスからの(ジュリエットを賭けた)決闘の申し出をボクはけて立つことにした。

元上司を相手に、勇者候補であるトレスと闘う。

複雑なしか湧いてこないけど、ジュリエットがこちら側に來てくれるチャンスがあるのならば闘うしかない。

正直、勝てるかは明確ではないけど、やれるだけやってみよう。

※※※※※※

王都を囲む高い壁外を通過して徒歩で街道のし先を向かったところ、永遠に続きそうな茶の混じった緑の平原がそこに広がっていた。

ここは王都の南方にあるユメール街道、魔の大陸と反対側にある方向なので魔の出現はない。

「……あれ?」

目的の場所に到著したところ、決闘の主催者であるはずの男がそこには居なかった。

そこに居たのは見慣れた元パーティの面々。カレンとサクマ、アリシアの3人だけだ。

ジュリエットはこちら側に立っている。

その他、現在のボクのパーティメンバーのリンカとフィオラ、プラス1匹のミミも含まれている。

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向こうのパーティもこちらのパーティも険しい面構えで、それぞれの陣地から睨み合いを始めた。

その中、カレンの目線だけは何故かジュリエットの方に向けられていた。しかも、かなり恨んでいるかのような睨みつけようである。

パーティにいた頃、親友に見えた2人だったけど何があったのだろうか、互いにギクシャクしているような雰囲気だ。

「來てやったわよ、エリート方々さん達」

リンカがこの靜寂を掻き消すよう、不意にカレン達にめがけて聲を張り上げた。

「………」

彼らは盜賊の幹部であるリンカを一目見ても、驚きを見せたりはしなかった。

ただ、眉間にシワを寄せていてかなり警戒した様子で武に手をあてて待機していた。

(おかしいな? 確か、トレスはこの場で待っているとリンカ言っていたはずなんだけど……)

し戸いながら周囲を伺っているリンカの行を見る限り、噓を付いているようには見えない。

「……モグモグ。病み上がりなのにネロ様、は大丈夫なの?  こんな決闘、ほっとけば良かったのさ」

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この場で最も存在のないフィオラは、バナナを片手にして呑気に睨み合いを遠目で観戦していた。

「うん、大丈夫だよ。不思議にね、お腹が空いたりしないし弱ったような覚が全くしないんだ。多分……」

ボクは服の中を確認してみる。

そこにはビリーの黒い魔力のせいで半分も侵食され、黒く変してしまった皮が浮かび上がっていた。

「コレのおかげかもしれない」

「良い方向でそれがネロ様を活発している訳ではないし、悪い方向でも活発化させていないから問題ないと思うんだけど、ちょっと心配だね」

フィオラは食べ終えたバナナの皮を適當にそこら辺の平原へと捨てた。

「あっ」

流石にポイ捨てはいけないので、決闘を終えた頃に拾って持ち帰ろう。

「それで、トレスさんは?」

瞬間、右側の草むらから鋭い風切り音が聞こえた。

「ここだよぉ! 泥棒犬がぁ!!」

「!」

振り向くとそこには、この世でも最も貴重とされている鉱石で錬された剣が躊躇いなくボクの首にめがけて振るわれていた。

トレスだと気づい瞬間には、もう遅かった。

これは避けられない!  そう判斷したボクは覚悟を決めて目をを閉ざしてしまう。

「死ねぇぇぇえええ!!」

こんなゲスい顔を最後に死ぬだなんて、不幸にもほどがあるだろう……!  嫌だなぁ、もっと生きたかったなぁ。

そう思った瞬間、トレスが踏ん込んだ先には見慣れたあの《黃》の姿があった。

見覚えのある覚に困したけど遅かった。

トレスは黃を踏んでツルッとってしまったのだ。バナナの皮に、そう……勇者候補は再びバナナの皮というものを踏んでしまったのだ。

そのまま派手に転倒。

トレスの後頭部は地面に容赦なくゴンッ!! と打ちつけてしまったのだ。

その拍子に離してしまったトレスの自慢の剣が宙を舞う。

ストッと落下した剣がトレスのズボンのベルトを真っ二つにぶった切ってしまった。

「な、な、何故なのだ!!?!?」

涙目で頭を両手で抑えながらトレスは弱々しく、周囲で呆れた表を浮かべているメンツに聞いた。

答えはそう、知らんの一択だ。

突然の襲撃を仕掛けた天罰だろう。

倒れたトレスの足元には先ほどフィオラが捨てたバナナが落ちていた。まさかコレに救われるだなんて……思いもしなかった。

いや、それよりもだ。この勇者候補、セコくないか?

戦士ならば戦士らしく真っ正面で正々堂々と闘いを挑んてくるのが作法だろう、なのにこの男ときたら。

「なにやっているのよトレス! 危うくネロくんを殺してたじゃない!?」

トレスに手を差しべようとして一歩踏み込もうとしたけど、困した表を浮かべるジュリエットがボクより先に前へと出てしまう。

「そんなことはどうでもよいのだよ! それよりもだ、ネロ・ダンタ!」

カレンらもトレスに手をかそうとしたけど、トレスは自ら一人で立ち上がって苛ついたような表を浮かべた。

指を差す先にはボクがいる、まさかこれは愚かな逆ギレというヤツか?

「俺がバナナを踏む前にお前は既にボクの攻撃に気がついて構えていた、気配を消したボクにだぞ!」

「えっと……大きな聲を出していたから、かな?」

「ぐっ! こ、聲など、出しておらんぞ!」

ありえないと言わんばかりの顔のトレスにそう答えるけど、反論を口にしながら彼は地面に突き刺さってしまった自の聖剣を引き抜いた。

切っ先がボクの方に向けられ、同時にトレスから強い殺気が放たれる。

「生意気なぁ……ヒヨコの癖に大口を叩きやがって。まさかジュリエットがそこ居るからか? 彼が居るからお前は強気でいられるのか? ああ!?」

何故そこでジュリエットが出てくるのだ? と思いながら陣達の方へと振り返る。

そこには恥ずかしそうに顔を覆ったジュリエットの姿を見てがあった。

そんなジュリエットをリンカ達は気を遣い背中に隠す。彼らの顔に浮かぶのは「生理的に無理だわぁ……アイツ」といった表であふ。

「うわぁ……不意打ち行為という卑劣な真似に手を染めたのにバナナの皮を踏んで失敗して、それでもあんな堂々とイキれるだなんて……無理だわ」

ミミも貓目を細めながらリンカの言葉に共して、納得したかのように頷いた。

しかし、ポジティブ神が取り柄のトレスはある一言を放ったのだ。

「ジュリエットォォォォォォオ!!!」

「ひっ……!」

トレスに大聲で名前を呼ばれたジュリエットは真っ赤にしていた顔を青ざめた。

それを可哀想に思い、陣らはジュリエットを背後へと回す。その中、フィオラがいようが明なのですり抜けてしまうだけだろう。

「俺は知っているぞ! キミが俺のことが昔から、いや……この世界が生まれたその時から、ずっと好きだったってことを!!」

「うぇ……!?」

全員がその場に凍りついたように固まってしまう。

トレスの仲間であるカレンとアリシアとサクマも同様に、口を半開きにさせて驚愕していた。

フィオラが首を傾げて「何言ってんだこのギザ野郎モドキ」はと言わんばかりの表を浮かべていた。

トレスに恐怖を覚えたのか、ミミは自尾を大事そうに隠した。獣人族の習慣なのだろうか?

一方ジュリエットの瞳は真っ白な灰のように……言わずとも分かるリアクションを取っていた。

「ああジュリエットよ、キミは不本意にこの男の幸運によって毒されて洗脳されてしまったのだろう?

 何故突然、ボクらの前から離れたのか、どのような呪縛をかけられたのかは知らない。だけど辛い思いをしてまで好きでもない男の側に居てやっても、本當のキミは幸運というものには恵まれたりはしないのさ!!  さあ、この手を取って俺と行くんだ。

そうすればキミは解放される! もしそうでなくても、キミに取り巻く闇を俺が祓ってやる、キミを死んでも守ってみせようぞ!!」

おお、名言だ。

関心と同時に嫉妬、恥辱、憎しみがボクの心から湧いてきた。そのせいかボクも短剣を握りしめている。

いや、それよりもトレスサイドにいる錬金師のカレンさんから特に凄い黒い何かが飛びっているんだけど。

しかも彼の鋭利な眼が、リーダーのトレスに向けられているんだけど……恐ろしいとしか想が出てこない。

(あのアマめ……トレスを垂らしこみやがって)

「………」

トレスが名言を向けた相手、ジュリエットは口に手を當てて震えていた。

の鳥を立たせながら、必死に何かを口にしようとしているけど中々出てこない。

「うむ? 恥ずかしがることは無いんだぞ」

いや、ズボンがげてパンツ一丁になっている勇者候補のお前が一番恥ずかしいんだけど。逆に勇者と言うべきだろう。

尊敬はできかねないけど。

リンカはこの景をまだ若いミミに見せてはいけないと判斷したのか、ミミの後ろ回りこみ両目を隠す。

「おい、何故俺を見ないのだ!! 勇者のありがたきお言葉に水を差すな! それと見てみろこの聖剣を! 最高の鍛治師『エインズ』によって加工された武だぞ!」

主張する本的な話題はそれじゃないし、ズボンをさっさと履け、ボクからはそれだけだ。

だがまだきづいていないのか、トレスは腰に手を當てながら陣らの行を不思議に思った。

だけど腰の素に気がついたトレスは、目線を下の方向へと移させる。

そうしてやっとのことで陣らの行を理解したトレスは目を見開いてしまう。

「ん!!!? う、うぉお! ズ、ズ、ズボンがげているだと!? さ、サクマ! ベルトを貸したまえ!!」

哀れみな視線をトレスに向けながら、サクマはチビドラに頼んで荷からベルトを取り出させた。

それをトレスに投げて寄越したけど、反神経とは関係なくベルトの金屬部分がトレスの眼球に命中してしまった。

「ぐおおおおおおお!!!!?」

トレスは痛みに目を押さえながら倒れ、パンツ一丁の狀態でジタバタと地面を転がり回る。

その哀れとなった姿を仲間や他人に披してしまう勇者候補、なんだか逆に可哀想にも見えるような景だ。

「………」

上司であるトレスの幸運値が非常に低かったことをボクは知っている。

それをカレンたちに黙ってやっていたことを思い返す、まあ薄々周りも気づいていあようだったけどね。黙らなくてもいつか気づかれていた事だろう。

「ネ、ネロくん!」

苦笑いで立ち直るトレスを見つめていると、急に陣らの方からボクの名が呼ばれる。

振り向くとそこには、俯きながら恥ずかしそうにモジモジとしている上目遣いのジュリエットがいた。

「どうかしたの?」

そう尋ねてみるとジュリエットは潤んだ瞳でボクをまっすぐ見つめて、恥ずかしそうに震えた聲で言う。

「私っ!   別に私はトレスのことなんか好きじゃないから。だからねっ……ネロくん」

ズボンを履きながら、ジュリエットの言葉にショックをけているトレスを背後からじとれた。

それはとりあえず無視して、ボクはただひたすら何か言いたげのジュリエットの瞳を見つめた。

必死に訴いかけようとしているのが分かる。

いつしか周の雑音が掻き消され、ジュリエットとの二人だけの空間に移り変わる。

「必ず勝ってね……そうしたら私を、どこまでも連れて行って」

ジュリエットは溢れてしまった涙を服の袖で拭いながら、ボクを見てニッコリと笑いかけた。

「………あ」

言葉を詰まらせてしまったけど、自分の目元が溫かくなっていくのをじとれた。

この戦いに勝ってジュリエットを連れて旅に出る、考えるだけで楽しそうだ。

好きなの子と一緒にいられる、それだけでボクの世界が変わる気がした。

ワガママと言われて、罵られるのならばそれでいい。

だって昔からボクはジュリエットが大好きだったから、それだけは譲ったりは出來ない。

だからこそ勝つための理由がボクあるんだ、それをトレスなんかに奪われてたまるか。

ーーこの決闘はボクが勝つんだ、勝たなければならないんだ!!

短剣を握りしめる手に、変な違和の力が微かにっていた。

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