《S級冒険者パーティから追放された幸運な僕、神と出會い最強になる 〜勇者である妹より先に魔王討伐を目指す〜》第37話 『魔力の侵食』
頭が空白に支配されると同時に、瞬時に逃げろという反応がボクのを突きかしていた。
それでもは言うことを聞いてくれない。
に飛び散った返りの持ち主は、知り合いでも何でもないのに何故か喪失がの底から込み上がってきた。
「チッ!!   急に攻撃かよ、龍人の戦士長はよぉ!」
黒いをした長耳のダークエルフの男は、攻撃を放ったエルベインの方へと弓をむけた。
正確に標準を定めてから、ターゲットにおさめると男はつがえた殺傷能力のある矢を手から離した。
られた矢は丁度エルベインのにめがけて、直線に飛んでいく。
それを退けるエルベイン、槍でられた矢をパキッと折ってみせる。
「しゃらくせぇんだよぉ!!」
かなり興気味に聲を荒げながら、エルベインは槍を手にして投げる姿勢を作る。
瞬間、先ほど放たれて折られた矢から大気中を覆うような煙が発生する。
その場の視界を全て遮るほどまでに煙が充満すると、エルベインと同様の戦士である龍人らになすがなくなると同時に、その戦闘力が大幅に減。
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攻撃されまいと警戒しながら、龍人の戦士らは固まって防制を作っていた。
「臭いがしない……まさか」
鼻が非常に効くエルベインですらスンスンと空気の香りを吸い込んでみせたが、標的の臭いが全く捉えられない。
臭うのは、同種である龍人らの放つ臭だけだ。
充満する煙が原因でダークエルフの臭いが消えたのなら、龍人の仲間の臭いをも消滅するはず。
「まさか、逃げられちまったか?」
キョトンとしながら、エルベインは煙を掻き消そうとする作をやめて、一旦周囲に視線をむけた。
そこには、ダークエルフの1人も居ない。
ネロの姿も一緒に、この場から消えていた。
現狀を判斷したエルベインは、途端に管がはち切れそうな雄びを上げ、森の木々は彼の激怒した聲に応じるように大きく揺れだした。
「……非力な長耳どもがぁあああ!!!!」
※※※※※※
「ーーーー?」
風を切るような音が聞こえ、目を開けると乾燥した目にめがけて向かい風が當たり、一瞬目を閉じてしまう。
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けど、もう一度開いてみると景が変わった。
ボヤけた視界が徐々に鮮明になり、自分が森を駆け巡っているのが……いや、正確に言うと筋質のおっさんに運ばれながら森を走り抜けているのが見えた。
目に映る景が段々と流れていく。変な錯覚を起こしそうなので周りを見ない方がいいと、下へと視線を落とす。
すると、低い聲が耳元で聞こえ、頭を再び上げてみせる。
ボクを背中に乗せてくれたおっさんが、溫厚そうな表で笑いかけてきた。
「おお、若造よ。目を覚ましたか」
「ーーーーどう、も?」
が黒い、耳も尖っている。
おっさんだけではない、視野を広げてみると周囲にも続いて走っているダークエルフらがいた。
「……あ」
すると、その中のとある人に目が止まる。
先ほどボクに手を差しべようとして、負傷してしまったが仲間の1人に背負われていた。
槍に貫かれた部分からを流しながら、苦痛に表を歪めている。
「……かたじけない」
から、ポツリと仲間に謝する聲が聞こえた。
「私が不甲斐ないばかりに、手間をかけさせちゃったよ」
「にしては、まるで余裕のある口ぶりだな」
まるで揺していないのか、背負ってある仲間である若々しい年が彼に笑いかける。
まるで、なんだ、青春がありふれた雰囲気が2人に漂った。
いや、そうじゃなくて……うっかり忘れそうだった。
ボクを救出しようとして、負ってしまった傷だ。
しっかり謝らなければいけないんだ。
そう思った矢先、ボクを背負ったおっさんがボクの表を見ながら真剣な眼差しを作ってから口を開いた。
「謝ることはないぞ、若造」
「………え?  どうして」
想像よりも遙かに冷たいおっさんの言葉に、驚く他なかった。
この狀況、あのが槍をけてしまったのはボクに気を取られていたからだ。
もしあの場でそっこうに行を起こせば、誰も傷つかずに済んだかもしれない。
「あいつがヘマしただけで若造のせいではない。なんせ、あの場に突然見知らぬ集団が登場して、馴れ馴れしく話しかけてきたら、そりゃ揺する。脳が理解しようとがかなくなっちまう。若造も何がなんだか、今でも分かんないだろ?」
心境を全て読み取られている事に、何も言い出せなくなる。
おっさんの言う通り、急展開すぎて自慢の小さな脳みそが正確に機能してくれない。
まず、どうして魔王のシモベとなるダークエルフに背負われ連れていかれているのか、だ。
あの場で救われたのはまず間違いない、しかしその機が一切未だ語られていないせいか、混の迷宮に彷徨っているような覚だ。
「そうですか。……あの、貴方がたは一?」
ならば、質問してみることにした。
「そうだな、まだ名乗っていなかった。じゃがお前さんが覚えるほどの大層な役割をワシらはしておらん。まあ……仮に、エルギウスと呼んでおくれ。前々からカッコイイ名前で呼ばれたくてなぁ」
「は、はぁ」
まったく分からん。
というか、名前を伏せられるとますます不信のようなモノを抱いてしまう。
率直に答えてくれても、無知なボクから問題はないだろうに。
いや、そういえばもう1つ。
槍に貫かれる前にあの、ボクの名前を口にしていた。
まだシオンにしか名乗った覚えはないのに、どうして數百年前もの時代のダークエルフがボクをご存知なんだ。
しかも、とある盟友の依頼だとか。
謎が深まるばかりで、解ける気がまったくしてこない。
「まあ!  説明は後だ、もうじきワシらの領地だからな。盟友の友人であれば、ワシらの盟友も當然だ。あの気高い龍人どもの騒なオモテナシと違って、歓迎するぞ!」
ガハハっ!  と甲高い聲で笑うエルギウスに、思わず耳をおさえる。
かなりの大ボリュームな聲量だし、近い!
「この時代に、ボクに知り合いなんて居ませんよ!?   というか、その盟友って……誰なんですか!」
言葉がかき消されそうなエルギウスの聲量にむかって、耳を塞ぎながら大聲でんだ。
思わずこの時代と口に出してしまったが勿論、理解してくれたりはしない。
そう思っていた瞬間、エルギウスとその周囲のダークエルフらが深刻そうな面をみせる。
「知っているよ若造………いやネロ・ダンタ」
エルギウスのこの言葉で、周囲の空気がシリアスな雰囲気に変化していくのが分かった。
ボクもまた、自分自が無意識に驚いた表を作っているのに気づき、これは重要な場面だとすぐに脳みそが即座に理解してくれた。
エルギウスの言が脳みそをほぐしてくれたからだろう、ありがとうございます。
それでも、どうして彼がボクのフルネームを存知しているのかイマイチ察せない。
けど、これからエルギウスの発する言葉がボクを深く揺させるだなんて、未だ想像しても仕切れなかった。
※※※※※※
ダークエルフらの盟友だという人、ボクを探し出して救ってくれと依頼した本人の正が明かされた瞬間、それが聞き慣れた名前だという事は覚えている。
それよりも先だ、考えるより先にその人に會いたいという強い想いがボクのをつきかしていた。
長い耳を持つ集団に案され、急いでくれと頼みながら走る村の中。
ここは霊樹と最も近い場所と言われている、エルフ族の領である。
霊樹では2番目に大きな領土を持っている國と言われているが、他の亜人に比べれば戦力は低い。
代わりに、エルフらは森に生息するモンスターらを従せるのに特化しているという。
妖のようなしいと言われる容姿が、わんさかとそこら中にボクを出迎えていた。
それでも、その群衆を素通りしてすぐさま自を知る人の元へと急ぐ。
ーーーー!!
「もう、長くはないかもしれない。癥狀が発生する前に彼はこの大陸から出るべきだった。けどミア様と言葉をえた瞬間、彼は若造の存在に気づき大陸から出ることを頑なに拒否したのだ」
ーーーー!!!
エルギウスの発言を耳にしても、それをけれまいと汗を拭うフリを何度も行なった。
ーーーー!!!
そして辿り著いた建の前で、ゆっくりと足を止めた。
エルフの族長の家だとエルギウスは言っていたが、かなりの豪邸だ。
シオンの家にも招いてもらったが、族長のクセにこんな高価そうな外見はしていなかった。
「……………ハァ……ハァ」
ここまで長距離走ってきたせいか、呼吸するたびに苦しさが襲ってくる。
しかし、それも構わず余裕な表をみせるエルギウスに案されて建に近づく。
扉から白いを持ったエルフの老人が出てきた、どうしてこんなにも形な顔立ちなのだろうかと一瞬、不思議に思ってしまった。
この豪邸の所有者なのだろうか、第一印象は絵に描いたような族長であるのには間違いない。
老人と目が合った瞬間、彼は何も言わず中へと招きれてくれた。
石造りの階段を上っていき、長い廊下を歩いたその先には扉のない部屋が目に見えた。
「寢室だ、行くといい」
老人にそう言われ、遠慮なくズカズカと寢室へとむかって1人で近づいていく。
部屋に辿り著くと、「信じたくない」と言い聞かせていた先ほどの自分を打ちひしぐような、そんな景がそこに広がっていた。
ベットに橫たわっている人は非常に苦しそうな聲でボクの名前を何度も繰り返し呼びながら、左頬を覆う真っ黒いに手を當てていた。
見慣れた桃の髪、何度も向けられた赤い瞳、それを前にして彼を知らないと言った方がどうにかしていた。
涙を堪えながら、乾いた聲で彼の名前を口にする。
「ーーーージュリエットちゃん」
「…………」
返事がない、それもそうだろう。
今にでも意識が消えかかりそうな程の激痛に見舞われているのだからだ。
それなのに、ジュリエットは必死に自を侵食しようとする膨大な魔力に抵抗している。
ただそれを見ることしか出來ないボクは、再び彼の名前を呼んでみせた。
ーーー例えジュリエットに明日が訪れなくなったとしてもボクは、彼を呼び続けるだろう。
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