《S級冒険者パーティから追放された幸運な僕、神と出會い最強になる 〜勇者である妹より先に魔王討伐を目指す〜》第47話 『黒竜討伐 ①』

霊大陸南部で、竜の姿をしたモンスターが出現したという報が、一気に霊大陸の全土にまで広がっていた。

無論、霊大陸で7つもある領土を治めているそれぞれの所有者らに報がすぐ伝達された。

『竜が出現した』と。

竜が出現した場所は、最も魔力が濃いとされている霊樹とエルフ領の間にある森だ。

偶然なのか必然なのか、その森にはエルフ騎士団らが拠點にしている建がある。

まるで、エルフ達の戦力低下を意図したような唐突の出現だ。

本當になんの前れもなく、音もなく突然の攻撃だ。

そのせいか、エルフの騎士団らは急発令をけるも、竜の圧倒的なまでいウロコに為すすべ無く撤退を強いられてしまう。

音もなく出現した竜は非常に兇暴だ。

漆黒、剝き出しになっている真っ赤な牙、石造りの建でさえ容易く砕いてしまう爪。

すべてに対して危険なこの竜は、エルフ領のあらゆる場所を行き來しては破壊を繰り返していた。

※※※※※※

「そういうことで、気高き我々エルフの戦士の出番という事か」

騎士や戦士、戦闘に特化したエルフの鋭達が拠點とする城『ゲルマン』で予期せぬ急會議が開かれていた。

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だが會議に出席している人數は、わずかに10人だけ。

ほとんどの関係者は席を外して、竜の討伐へとむかって行ってしまったらしい。

なので現在、ティーカップの並べられた長方形のテーブルを囲んでいるのは、エルフの上位に立つ者だけ。

その1人が、エルフの領土を所有し管理している老人『エルロンド・ヴォルン』。

この中でも、最も権限を有しているのは彼である。

故に、この危機的狀況を打開するには彼の判斷力が必要となる。

「そうじゃな。それがこの危機的狀況を、どうにかする為の一番の策じゃ」

そんなエルロンドは戦士長の『トレース・マクガフィン』と、エルフ騎士団長『ユリース・ノヴァ・ナイテッド』に強い視線を向ける。

『ユリース・ノヴァ・ナイテッド』は最年で団長に任命された凄腕の騎士であり、溫厚な格。

騎士団員や領民には強く慕われていて、どごぞの戦士長よりモテる。

父はダークエルフで、母がハイエルフなためかはやや褐

むろん形である。

「ふむ……しかし我々騎士団には他に優先すべき問題が沢山あります。現にエルフ領西南の端の海から頻繁に愚かな人族どもが侵を試みようとしている」

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いくら人族と魔族で和平條約を結んだところで、野蠻な輩は相変わらずと健在していた。

全員ではないけど、人族の中には稀に霊大陸に上陸しては魔族を奴隷にするために攫いを働く『蠻族』が存在している。

特にエルフが売れるらしく、海の広がる西南から上陸してくることが多い。

その方向には人族の住まう大陸があるからだ。

それにどういう事か、エルフの姫様を狙う蠻族までもが最近増えていっている。

姫様………これは後から話すとして、ユリースの率いている騎士らは手が離せないらしい。

「それに、エルロンド様の息である姫は我々が厳重に警護しています。彼の護衛をしでも減らしてしまえば、危うい結果を招いてしまうかもしれない……」

両手を組んで、そこに顎を乗っけながら苦い表でユーリスは言った。

領主エルロンドの娘の名は『アンナ・ヴォラン』。

次の當主となる存在の為、多の厳しさで彼の安全はエルフ騎士団に任されていた。

長耳族は至って溫和で気高い格なので自らの手を汚すような真似を行わないのだが、良からぬ事を考えている奴も勿論いるだろう。

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現當主であるエルロンドを殺し、次なる當主のアンナの首を狙い、見せしめにしてからエルフ領の所有権を強引に剝奪しようとする奴が。

なので過剰でもアンナを守る為、霊樹と最も近い位置であろう騎士団のもう一つの拠點、北部辺境の城にて彼は厳重に沢山の護衛や親衛隊によって保護されている。

いくら何でもやり過ぎなのでは?  

と訴える人々も居たが、かつてエルロンドには兄がいた。

本來なら長男という理由で現當主となる人だったが、薄い護衛を希した彼は即座に同族に暗殺。

次男のエルロンドは嫌々とエルフ領の所有権を握らされてしまったという。

なのでいくら過剰でも仕方ない事なのだと騎士らは全員、納得せざるを得なくアンナを護衛していた(姫様とお近づき出來る理由もある)。

だがその反面、それを反対する者も居た。

「こらこらユリース君。それはちょっと考えすぎなのではないか?   そんな理由で君主さんの命に従わないなんて、騎士は務まらないぞ?」

エルロンドとユーリスの真剣な話に割り込んできたのは知る人ぞ知るエルフの人気者、戦士長トレースだ。

こう見えてもこのギザ野郎は男友達が多い。

ユーリスもその1人だと彼は認識している。

だがユリースはと言うと、トレースにやや嫌悪じていた。

はっきりとまではいかないが、騎士の自よりも煽てられているのがどうにも気にいらないらしい。

現に話しに割り込んできた事で、ユリースは顔を濁していた。

「考え過ぎだと……?  ふん、貴様にはどうやら用心深い肝が備わっていないと見た、戦士長トレース。

戦士として暇を持て余す貴様には到底理解できないであろうが、我々騎士には果たさなければならない課題が多々ある。主となる者の命、名譽、栄……なんぴたりとも末にする事は許されない。それが我々エルフ騎士団だ」

「ふむふむ、そうか。それはそれは、とても偉いことじゃないかユリース団長!  てっきり自分達の利益だけを大切にし……騎士というレッテルを利用しながら領民を厄災から守らずに見捨てようとする、愚か者達かと思ったよ!」

唐突に騎士団に毒を吐くトレースにユリースは反応してしまう。

癇に障ったのか、ユリースは整った表を鬼の形相へと変貌させ、肩を震わせながらは歯をくいしばったまま呑気そうなトレースを睨みつけた。

「なんだと……!?  我々がそんな……」

「ん、どうかしたのかい?  俺は単にユリース達がそういった屑ではないのを確認したのだから褒めただけなのだが?  貶したワケじゃないのに……もしかして図星?」

「……くっ」

まるで、トレースの手のひらの上で踴らされているような覚にユーリスは苛つきながら肩を震わせていたが、側にいた部下の騎士達がそれを察してユーリスを宥める。

それを間近で微笑ましそうに見つめながら、トレースは笑みをこぼす。

「いい部下を持っているようだね、ユーリス。うちの脳筋な部下達と比べたら、とても羨ましいよ」

トレースはそう言いながら、腕を組んで大人しくしているエルロンドの方へと視線を移させた。

そして彼に対して申し訳なさそうにトレースは頭を下げて呟く。

「本題から線させてしまい、誠に申し訳ありません。會議後、懲罰でもなんでもおけしましょう」

「よい、トレース戦士長よ。ちょうど儂もユーリスにはハッキリ言わんとならないと思っていたところだ」

「くっ……」

エルロンドはトレースだけではなく、ユーリスをも信頼している。

ユーリスは団長という立場でありながら勝手なところが非常に多い。

だけどその分はよく働いてくれているので強くは咎めるつもりはエルロンドには無かった。

まだ納得しない様子のユーリスだが、口をへの字にしながら黙ってエルロンドの方に視線を移させる。

「だが、ユーリスお主の言うとおりアンナはお主達に預けている。じゃがな、儂の可い娘以上に最も大切なものがある……それがお主には分かるかいユーリス?」

ユーリスは驚いた顔を一瞬だけみせたが、すぐさまエルロンドの質問に真剣と答えを導きだす為に考えた。

數秒間、ユーリスが見出した答えを口にする。

「地位……でしょうか?  それとも寶殿の財産?」

「馬鹿者、違う」

信じられん、といった顔でエルロンドを呆れながら言った。

「この國の未來を繋げる為の民じゃよ」

ユーリスやその他に沈黙が訪れる。

咳払いしながらも、エルロンドは続けた。

「もしこの國で生きる人々が死ねば、繁栄した國は衰え、土地は枯れ果て、復興する事が出來なくなってしまう。儂らエルフだけに限らず、全ての一族も例外ではない。

今こうやって國がり立って、お主らが飯を食えているのは何故だじゃと思う?   民がいるからじゃよ」

「つまり、姫である娘よりも民が大切だと、そう仰りたいのですか?」

し困した口調でユーリスは問う。

一方のトレースは平然とエルロンドの話に耳を傾けていた。

いまエルロンドの言っている事は全て、彼にとって當然の事だろう。

この場でそれを理解していないのは、ユーリスたった一人である。

そのことを仕方なく思ったのか、エルロンドは質問に答える事なく容を変えた。

「分からぬと言うなら、もうよい。

だが儂は、自分の娘とこの國の為だけに民を犠牲にする気は頭ない。なので戦士長トレース、騎士団長ユーリスには全戦力をもってあの竜を討伐させてもらう」

キッパリとそう言い放つエルロンドに、周囲が騒ついた。

一方、まるで待っていたと言わんばかりの顔でトレースは腕を組む。

「異論があるのなら聞こうじゃないか?」

特に誰も異論は無いらしく、エルロンドの問いに沈黙が流れる。

それを確認した後、エルロンドはとある人の方へと視線を向けた。

異様な雰囲気を放つ、高長の黒ずくめの

エルフなのにも関わらず、形など皆無と言える程の顔、痩せ細った

包帯を全に巻いて、その上には黒くボロボロなローブ一枚だけを羽織っている。

まるで死神、なのにその手には大事そうに人形がしっかりと握られていた。

「前線の指揮は『神魔道士レヴィア・ターナ』お主に任せるぞ。いいな?」

「…………コクリ」

『神魔道士』

勇者をも超えた者に與えられる稱號であるが、この世界には勇者などいない。

この世界にとって『神』という稱號は計り知れない強者に與えるものであって、勇者を超えた者ではない。

人形を小さくでながら、無言で彼は頷いた。

その作を目にした周囲は息を飲みこみ、顔を青ざめた。言うまでもなくこのは、非常に不気味である。

に視線を向けられるエルロンドも、同様にそう思っていた。

數時間もの話合いで、やっとのことで急會議が終了した。

竜討伐戦の作戦が決まり、全ての戦士や騎士と兵士に召集をかけようとしたその直後、エルロンドの従者の一人であるアルバンが慌てた様子で、會議室に室してきた。

何事だと周囲が汗だくになったアルバンに注目すると、彼はゆっくりとに手を當てて敬禮をする。

アルバンのその目は、何かあった時の目だ。

もしかして良からぬ事が起きたのか?  とエルロンドは不安になりながら、荒い息のアルバンに恐る恐ると聞いた。

「どうかしたのか?」

「エルロンド様………聞いて驚かないでください。多分、今ここで報告しても信じてくれないのが大半ですが……っゴホゴホ」

「慌てるんじゃない。ほら、水を飲め」

エルロンドは會議室に置かれた瓶の蓋をあけて中にっている水をグラスへと移すと、苦しそうに呼吸するアルバンにソレを差し出した。

アルバンは一旦報告を止めてからグラスにった水を一気に飲み干す。

「……ありがとうございます。それでは報告致しますね」

「うむ」

「単刀直に言います……竜は……今さっき討伐されました。それも、たった一人の手によって……!」

「「!!!?」」」 

「なんだと!?」

アルバンの信じられない報告を聞いた途端、再び周囲はざわめき始める。

特にユーリスが敏に反応して、席から立ち上がっていた。

それを目にエルロンドは戸いで目を見開きながら、冷靜を保とうとするアルバンに問う。

「誰じゃ……?  一、誰が竜を?」

とてもじゃないが信じられない話だ。

數十人もの騎士団や戦士を一瞬にして葬ったあの竜を、たった一人の者が討伐されただなんて。

だけど、自分と同じようにを震えさせているアルバンが、とても噓をついているようには思えない。

落ち著くためアルバンは、大きく深呼吸してから報告を続けた。

「エルロンド様もここに居る皆様も存知ている、ミア様が予言したと言われる幸運な力をめる人族の青年『ネロ・ダンタ』です……!」

もうアレから1ヶ月。

ネロがこの世界に訪れて1ヶ月が経過する。

その短期間に彼は、常人以上の力をにつけたのだ。

この場に居る者たちを、遙かに凌ぐ程の力を。

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