《究極の捕食者 ~チート融合スキルで世界最強~》第8話 リアンデシア攻防戦開幕

破壊された西の大門から城までまっすぐにびる直徑15Kmほどの大通り、通稱栄の道。先ほどまで大勢居た避難する人々も、今では大分疎らになった。その中間の地點にある西の大広場には數多くのテントが建っていて、作戦本部となる予定だ。俺達も、この広場に集まっていた。

「狀況の説明をお願いします」

「は! 現在、門の外には魔の軍勢あり。闇に紛れており、正確な數は把握不可能。最初の攻撃をけた時點で城壁に備え付けられた守護結界が発したため、その結界の効力が切れるまでのあと1時間は安全です」

「1時間。それは全然安心ではないわね」

こめかみを押さえながら姫川が言う。伝令に來てくれた兵士はし怯えたようになりながらも、敬禮のポーズを崩さない。

「ちなみにお城の戦力ってどのくらいなのかなー? まさか私達だけで防衛しろ……なんて訳じゃないでしょう?」

仙崎さんが伝令に尋ねた。いつも飄々としている仙崎さんだが、言葉の所々が震えている。流石に張しているようだ。伝令は困った様に告げる。

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「げ、現在ガルム第一王子と星の騎士団が東の森に遠征中。現在王都にいるガイウス第三王子ですが、數名の私兵しか連れておらず……。ベルリアル王子は兵の派遣を拒否……」

「ちょっとちょっと、本當にどこの部隊も出れないってこと? 貴方達の街でしょう?」

どの王子の部隊も出てこないこの事態に怒りが頂點に達したのか、姫川が怒鳴る。普段の凜とした態度からは想像もできない。いや、余裕が無いのだろう。そしてそれは、しょうがないことだ。

「おっと、誰も出ないってことは無いぜぇ!」

その大きな聲に皆振り返った。分厚い甲冑を纏った大男が兵隊を引き連れ、城の方から歩いてくる。確か、第二王子のエッシャー様だったか。分厚いとゴリゴリのマッチョ型、その姿はまさに闇落ちしたキン○ンといったじだ。

「今よりこの大広場を作戦本部とする。勇者チーム諸君は私の指揮下にってもらう」

「貴方の……? 我々はガルム王子の直屬という扱いになっているはずですが」

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不満そうな聲と態度で姫が答えた。だが、そんな反応は読んでいたとばかりに、エッシャー王子が切り返す。

「しょうがねぇじゃねぇか。今現在、兄様は王都にはいねぇんだからよ」

その王子らしからぬ豪快な言いは俺的には好印象だったが、逆に姫的には悪印象だったらしい。顔に不愉快ですと書いてあるようだ。

「街の防衛は俺の軍マッドネス隊が行う。そして城の防衛にはルキスの部隊が著いた。お前達勇者チームは壁の外で敵を迎撃してもらう」

「壁の外で……!?」

おいおい、マジか。敵の數も何もわからない狀態で俺達素人だけで防衛かよ。まだ狀況だってよくわかっていないのに。皆もそう思ったようで、クラスの連中全にざわめきが起きている。

「おいおい、ビビるなよ。散々タダ飯食ってきたんだ。有事の時は命を掛けて働いて貰わなくてはなぁ」

「わかりました……やりましょう」

「ちょ、ちょっと璃緒!?」

「本気か……私達にはちょっと荷が重くねーか?」

姫川の橫にいた仙崎さんと篝夜も流石に驚く。

「けれど……逃げる訳にはいかないわ。私達がここに來たのは、今この瞬間の為なんだから」

そして、皆の方を振り返り剣を掲げる。

「みんな……今こそ私達の力を見せる時よ。安心して、私の力があれば、みんなが傷ついたりすることもないわ」

今のでしだけみんなに力が戻ったようだった。姫川に続き、西門の方へと向かって歩き始めた。

「大丈夫だよね」

「だ、大丈夫だって」

皆がそんなことを呟き、自分をい立たせているのが印象的だった。

「よろしく頼むぜ、勇者様よぉ」

最後に聞こえたエッシャーの言いは、とても王子とは思えないほど下品で、そして、他人事の様であった。

***

「ここに私達の拠點を作りましょう。壱外さん、お願い」

「ええ。スキル発――拠點作!」

敵の攻撃によって開けた土地となった、門の側。俺たちはそこを拠點とする事にした。20メートル四方の地面に魔法陣が輝く。壱外さんの、拠點作のスキルが起した証だ。このスキルによって拠點化した場所では、味方の回復魔法やバフ系魔法の効力が上昇する。

拠點を作し終えた壱外さんは額の汗を拭う。糸目にショートカットで優しい顔をした、可らしい子だ。気持ち悪いことを言わせてもらうと、このクラスの中で誰か一人と付き合えるとしたら、斷然壱外さんだ。優しそうだしね。

「ご苦労さま壱外さん。回復スキル持ちの子達はここで回復作業を。攻撃スキル持ちは集まって。部隊編制を行います」

そういって、手際良く部隊を振り分けていく姫川。攻撃スキルも回復スキルも持っていない俺はみんなから離れ、當ても無く何もなく拠點となる開けてしまった場所を歩いていた。

門があったであろう場所の、その向こう側を見ると、白いヴェールの様な結界が広がっており、その先の闇の中から、赤いが無數に広がっている。

結界が無くなるまで、長くてあと2、3分くらいか。ずいぶんと、移に時間が掛かってしまった。回復班の子達が、運んできたテーブルや回復ポーション、そして簡易的な食料を急いで並べている。

「そろそろ結界が切れます。第1班、構えて……地屬魔法班、前に出て、作戦通りに」

地屬魔法を使いこなすと言う久住強太(くずみきょうた)、大田瞳(おおたひとみ)、加賀大志(かがたいし)の三人が前に出る。

それぞれが地に手をつき、タイミングを見計らっている。異様なが漂っていた。

やがて、白いヴェールが消える。その途端、結界の前でずっと待機していたブラックファング達が、獣の聲を発しながら突っ込んでくる。

「今っ!」

「「「大地を抉れ!! アースクエイク!!」」」

途端、橫一線、地面に亀裂がる。その亀裂はまるで地割れの様に深く深く沈み、15メートル程の堀となった。幅は10メートル。ジャンプで飛び越えられる距離じゃない。

かのブラックファングは空中で足をバタつかせながらその深いの中に落ちていく。再び行く手を阻まれた対岸のブラックファング達は苛立つようにうねり聲を上げた。

「かはぁ! 上手く行ったなぁ!」

「ザマァ見ろ犬共!」

「けど、もう今ので魔力切れたぞ……」

堀を作した三人は既にヘロヘロだ。

「はーい、んじゃあ三人は拠點に戻って回復してきて。それまでは他の攻撃班が攻撃するから」

仙崎に促され、小走りで拠點へと戻っていく3人。続けて堀の淵に立ち、対岸へと剣の切っ先を向ける魔法攻撃班。

「――逆巻く炎で敵を焼き盡くせ!!」

「――ウォーターバースト!!」

「――ファイヤー!!」

皆思い思いの必殺技名をびながら、敵に攻撃魔法を放つ。魔法とはイメージなので、自分で想像しやすい名前をぶのが良いらしい。対岸で様子を伺っていたブラックファングは火で焼かれ、水に流され、次々と命を落としていった。

だが、ダメージをけて苦しむブラックファングを押しのけ、一際巨大な狼型のモンスターが姿を現す。白銀の並みをした優雅さすらじるモンスターだ。

俺はスマホを取り出し、魔力を流し込んで起する。そしてカメラをそのモンスターの方向に向けた。

「シルバーファング、魔法に耐を持った強力なモンスター」

読み上げた報を聞き、歯噛みするクラスメイト達。

「ここは私の番ね。皆は今のうちに回復を……」

そういって前に立つ姫川。

そして飛び上がるシルバーファング。その巨と跳躍から見て、10メートルの幅を難なく超えてくるだろう。

だが、空中では無防備だった。淵に立った姫川はキリッとシルバーファングを睨むと、そのが真っ二つに切斷される。例の魔力だけを飛ばすという奴の応用だろうか。ノーモーションで発とは、ますます強さが化けじみている。

「すっげー姫!」

「姫川さん流石!」

と、仲間達のテンションも上がっている。エースパイロットがいると軍全の士気が上がるというが、あれはどうやら本當のことらしい。

達も一人異常な戦闘力を持つ姫を恐れてか、攻めの手が緩んでいる。すかさず回復した土魔法軍が、今度は巖石を製し対岸へと飛ばしたり、別の魔法攻撃班が魔法を飛ばしたりした。いける。誰もがそう思っていた。

だが、その時。

「お……おいアレ」

「わ、忘れてた……」

皆が天を見上げる。赤く染まった巖石が頭上に迫っている。隕石の様であるが、俺は先ほど空高く上っていったモンスターの存在を思い出す。

「メテオドラゴン……」

「打ち落とすわ――レインボーオーバードライブ最大出力!!」

すかさず聖剣を天に向け、最強の攻撃を放つ姫川。虹の輝きは天から降り注ぐ竜を直撃する。だが、止まることなく巖石にしか見えないそれは落ちて來る。

考えてみたら、落下してくるのが問題なのだから、殺しただけじゃ駄目なんだよな。完全に消滅させなくちゃ。だが、敵の防力は姫の攻撃以上ってことか。

「駄目だ……効かない」

そんな誰かの臺詞が聞こえて來た。姫川は悔しそうにを噛み締め、再び魔力を練り始める。だが、もう間に合わないだろう。

「皆避難を!」

だが、だれもかない。目前に迫ってきた脅威を前にけないでいる。

「ハハッ。ようやく俺の出番だな」

俺は堀の淵に立ち、降ってくる絶に向けて左手を向ける。そして、地の底に右手を掲げる。

「七瀬君!?」

「馬鹿か七瀬! 早く逃げる準備をするんだ」

「まぁ、見てろって」

ようやく俺の能力が役に立ちそうなんだからさ。

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