《究極の捕食者 ~チート融合スキルで世界最強~》第18話 森で最強の魔
新都市アルカディア。イデアがアジトとしていた町の名前である。この町は、10年ほど前に異世界から召喚された20人ほどの若者達が築き上げた町なのだという。その10年前の異世界召喚された人々はガルム王子から與えられたこの土地に町を作ったのだ。
だが、王國からは奴隷都市などと呼ばれていたらしく、良くは思われていなかったらしい。クーデターを企てているなどという因縁をつけられて、滅ぼされ、殺されたらしい。
「恐らくお前等が褒として與えられる予定の土地だと思うぞ」
イデアは意地悪くニヤリとした。そんなことは意に介さず、俺は出発の準備を始める。
マスマテラ・マルケニスの屋敷まではここから一日。ずいぶんと敵と近い位置にアジトを構えていたものだと心する。もちろん、俺とイデアの移速度だからこその近さなのだが。
俺達は一食分の食料と水だけを持って、敵の本拠地を目指して出発した。ここ一ヶ月でめぼしい魔の排除、そして地形の把握は済ませていたようで、イデアはぐんぐんと進んでいく。
彼は紋章の力を発させているようだ。ローグランド王家を守護する五大霊。そのの一角である風の大霊と契約しているイデアは、風の加護をける事が出來るという。その力は加速。俺の化けとしての速さに、余裕でついてくる。
これならば半日も掛からないのではないか……そう思った時だった。
「雨か……」
イデアが腕を上げ、止まれという指示を出してきた。それに従い、俺は止まる。
「雨は力を奪われる。それはほぼ単騎で挑む私達にとっては好ましくない」
「それもそうだな。うっとうしいし」
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「この辺りにがあったはずだ。お、あれだな」
彼が指差した先は絶壁の壁があった。その壁に空いた橫。
「なるほど、ここで雨宿りか」
なにやらり口に葉やら枝やらが積み重なっているが、それをどけて中にる。だが、中にると、なにやら獣臭い。園がある。
「なんだか臭うな」
不満そうにイデアが口を開いた。俺じゃないぞ? 窟は元々獣臭かったんだぞ?
「ちょっと待って、何かいる」
奧からうめき聲が聞こえた。
「敵か!?」
「いや……」
ゆっくりと奧に進む。奧でうずくまっていたのは巨大なむくじゃらの獣。俺はすぐに《真紅眼》で敵を調べた。
ソーサリーコング 魔力數値3500
かなりの魔力を持ち、森の賢者と言われるゴリラ。人間よりも長い壽命を持ち、知識も富で人間と共存する固も存在する。
「大人しい種族みたいだな……」
見たところ普通のゴリラだ。大きさも、かつて園で見た時とあまり変わらないように見える。腰やケツの辺りが白いことから見て、オスだろうか?
「だ、誰じゃ……?」
「喋った!? まさかこの為りで魔人なのか?」
ソーサリーコングを見るのは初めてなのか、驚愕の聲を上げるイデア。いや、俺もびっくりだけど。仰向けの狀態で、首だけをコチラに向けてくるゴリラ。その顔つきは、喋り方も相まって、どこと無く老人を思わせる。し苦しそうな表をしているが、怪我でもしているのだろうか。
「人間……か。久々に見たわぃ」
「何があった? 怪我をしているのか?」
淡々と言うイデア。怪我人……いや、怪我ゴリラに対してその言い方はどうかと思ったが、逆にその様子に安心したように一端目を閉じるゴリラ。
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「どうやら追っ手ではないようじゃな」
「追っ手……ということは、追われていたのか?」
「ああ、話すと長くなるんじゃが」
本當に長くなったので、俺が要約する。
ここからそんなに遠くない位置に、ソーサリーゴリラ達の暮らす村というか、里のようなものがあったのだという。
そして、先日、天才的な頭脳と魔力を持った赤ん坊が生まれたらしい。それがこのお爺さんゴリラの孫だったとか。その噂をどこで聞きつけたか、マスマテラ・マルケニスの使いを名乗る魔達に襲撃されたらしい。
里の仲間達も全員で戦ったのだが、結果赤ちゃんを奪われ、お爺さん以外のゴリラは全滅したらしい。
「……スヤァ」
いつのまにか壁に持たれかかって眠っているイデアは放置して、俺は話に聞きっていた。人間ではなくなってしまったが……こういう話は苦手だ。
「無論、わしも戦おうとしたんじゃが……その軍勢に混じっていたキラーパンダが凄い強敵でな……けない話じゃが、怪我が癒えるまでこの窟にを潛めておったのじゃ」
「きらーぱんだ!?」
心當たりがあるのか、イデアが目を覚まして立ち上がった。
「キラーパンダは知っているぞ! この辺りでも最強クラスの魔だ」
「最強クラス……か」
「そうじゃ……ずっしりした巨と圧倒的な戦闘スキル。わしの衰えたじゃ、いや、全盛期でも厳しかったかのぅ」
気落ちした様子で目を伏せるゴリラのおじいちゃん。先ほどからわき腹をっているのが気になった。
「わき腹を怪我しているのか?」
「ああ……ここで自然治癒を待っている狀況じゃが……老で治癒力は低い。寧ろどんどん悪くなっておる。もう長くはないじゃろう」
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「そうか……」
殘念そうに呟いたイデア。そのまま腰を下ろし、胡坐をかく。
「すまんな、私は回復魔法が使えない」
「謝らんでも良い。自分よりも強い奴に殺される。これは自然の摂理じゃ」
「潔いのだな。ゴリラ……私は貴様を戦士として認めよう。貴様の最後は私とすぞらが見屆けてやる。安心しろ、私達もマスマテラ・マルケニスの屋敷に行くところだったのだ。お前の孫は、必ず助けよう」
「おお……そりゃあ、よかったわい」
まるで孫に會えて喜ぶジジイだなと思いながらも、俺は自分の祖父のことを思い出していた。
俺が小學校3年生くらいの時に祖父は死んだ。代々猿顔だと言われていた父方の祖父の家庭。俺が生まれて、ようやく人間の顔になったと言われたほどの猿顔。
確かに、田舎本家のご先祖様の寫真が並ぶ部屋を見て、なるほどまるで猿から人類になるまでの進化図のようだと子供心に思ったものだ。
何が言いたいのかと言うと、このゴリラは俺の祖父に似ている。思わずがいた。
「どこに行くんだすぞら……?」
窟から立ち去ろうとする俺を威嚇するように、イデアが強い口調で言った。し怯んだが、負けじと言い返す。
「悪いけど、ずっとそのお爺さんに付き合っているわけには行かないよ。獲を取ってくる。腹が減っては戦は出來ぬって言うだろう?」
こっちの世界ではどうかはわからないけれど。一食分しか持っていないのだ。ここでゴリラの死を見屆けるのならば、それなりの蓄えも必要だろう。
「だが、このゴリラはそう長くはない。見屆けてやってからでも、良いのではないか?」
「ごめん、おなかぺこぺこ」
そう腹をる仕草を見せて、しだけ気に言って窟を後にする。
「すぞら……お前意外に冷たいんだな」
しだけ落ち込んだようなイデアの聲が、背中にぶつかって消えた。
***
「グヒヒ、あのジジイの匂いがするぜ……」
から走って5分ほど。降りそうで結局あまり降らなかった弱い雨は既に上がり、土と草の香りが満ちる森の中。ドスの聞いた笑い聲と共に、そんなセリフが上から聞こえた。普通の人間の狀態で聞いたら震え上がってけなかっただろう。それだけの威圧がある聲だ。
「お前、あの猿の居場所を知っているな?」
雨の代わりに上空から降ってきたのは正しく話題のパンダだ。だがそのの大きさは2メートル半ほどもあり、しかも直立。顔の傷や皺で數々の戦いを制してきたことを思わせる。可くはない。
キラーパンダ 魔力數値18000
  敵を殺すことに特化して進化した魔。の部位を剣や槍等の武に変化させる《武生》の能力を持つ。
コイツが件のキラーパンダで間違いないようだ。猿というのは、ゴリラの爺さんのことだろう。にしても、狂暴な面構えだ。能力も、今までに見たことが無いほどに戦いに特化している。
「悪いけど、年老いた手負いのソーサリーコングなんて、見たことも聞いたことも、ましてや會った事もないな」
「グヒヒ。俺様を前にその態度。余程死にたいようだな?」
「いいの? 俺を殺したらゴリラの居場所がわからなくなるぜ?」
「構わない。どうせあの傷じゃそう遠くへは逃げられないからな。ゆっくりゆっくりと狩りを楽しむさ」
「そう……」
「けれど、生意気な貴様は殺す!」
すると、パンダの両腕が機関銃へと変化する。いきなり飛び出して來たその武に、驚いてしまう。
「ちょっと……何その武!?」
「驚いたか! これは異界に存在する強力な武だ! 異世界から來た人間を食って手にれた記憶に、報が混じっていたのさ」
自慢げに両腕の機関銃を見せ付けてくる。異世界から來た人間か……あの奴隷都市とやらに暮らしていた人間だろうか。機関銃があったということは、もしかしたら同郷か? これは、厄介になるな。
「死ねぇえええええええ」
まるで戦爭でも始まったかの様な不愉快な機音を鳴り響かせながら、敵の両腕が火を噴いた。俺はゲーム等に習って上空へとジャンプ。
當然敵は軌道を追ってくる。木を蹴り橫に呼び、森の中にを隠す。足に何発か弾を貰ってしまったようで、空いたからどす黒いが噴出している。
「本當に面倒な敵だな……一発一発に微弱だが魔力が込められてる」
足や腕がまだくことを確認しつつ、俺はそう吐き捨てた。ここいらで最強ってのは伊達じゃないらしい。まさに戦う為だけに生まれて來たモンスターだ。
しかし、元の世界の武を使えるなんて厄介だ。記憶を盜られたのが一般人だと仮定して、敵のスキルがどこまで武を再現できるのか。
「まさか、核を再現……なんてことは無いよな。使ったらあいつも死ぬし」
敵を倒す算段を自らの持ち札から考えていたとき、遠くから何かの発音が聞こえた。パシュってじの音、ゲームで聞いたことがあるような……。
「まさかっ!?」
と気が付いたときには遅かった。背にしていた木が発。その熱風によって吹き飛ばされてしまった。焼ける背中に顔を顰めながら、振り返る。遠くにいたキラーパンダと目が合った。
肩を見ると、ロケットランチャーらしきが生えている。そのロケットランチャーは一旦、敵のに潛るように引っ込むと、再びニョキニョキと生えてきた。
それで弾の裝填が完了したようだ、キラーパンダの顔が邪悪に歪む。そして、パシュっという音と共に二発目が発された。
俺のいる方向まで真っ直ぐに突っ込んでくるロケット弾。だが同じ手は二度は食わない。
「《冷卻保存(フリーズメモリー)》発!!」
フロストデビルから得たスキルを発させる。対象はロケット弾。どうやら狙いは功したようで、俺に著弾する1メートル手前辺りの空中で氷付けになりながら停止している。鹿を保存するために一度使用していたが、その経験が役に立ったようだ。一瞬で凍る訳ではないようで、もうし発が遅ければ冷凍が間に合わずにロケットランチャーが著弾するところだった。
魔力を込められて強化された現代兵の威力なんて考えたくも無い。
俺は冷卻されたロケット弾を摑み取り、何が起こったのかと目を白黒させているキラーパンダに向かって全力で投げ返す。
その際、氷の表面をさらに闇の魔法でコーティング。俺の闇魔法と空気抵抗に氷を削られながらロケット弾は唖然とするキラーパンダに激突。その衝撃で氷は完全に砕け散り、再びロケット弾の時がき出す。
「ばっ!? そんな」
恐らく俺を殺す為に大量の魔力を注したのだろう。割と離れた位置に居た俺でさえ吹き飛ばされそうになる程の衝撃と閃が森を包む。森中が火薬の臭いで満たされているのではないかと錯覚するくらいの鼻を突く刺激臭の中、俺はキラーパンダに近づいた。
「がひゃがあが……ぎざまあああ」
「上手に焼けましたーっと。おいおい、まだ生きてるなんて流石だよ」
最早チャームポイントの白黒のは全て焼け焦げ、赤と黒に焼けた皮が無殘にも出している。放っておいても死ぬだろうが。
「俺の勝ちだ。本當は爺さんに敵討ちさせてやりたいんだけど……俺がやっちゃっていいよな」
「や、やめてくれ……助けっ」
両手の爪に魔力を巡らせ、その強度を高めてゆく。なるべく原型を崩さないように気をつけながら……。
キラーパンダの命を絶った。
***
再び窟に戻る。戦いの余韻は、窟付近ではじなかった。戦闘していたので正確な時間がわからないが、1時間程度は経っているようだ。
 「戻ったか、すぞら! 食事は手にったか?」
興気味に俺に詰め寄るイデア。俺が出て行くのに否定的だったはずだが、空腹になって気が変わったのか、俺が帰ってくるのを心待ちにしていたようだ。もしイデアが犬だったら、尾をブンブン振れていただろう。
「ん? お前、し変わったか?」
「ああ、ちょっと戦闘になってね。一融合してきた」
「そうか。しかし、を焼いて持ってきてくれるとは気が利く。一緒に食べよう」
「え、焼ってこれのこと? これは違うんだよ」
そう言ってイデアをあしらいつつ、俺は奧のゴリラの方へと向かう。おや、凍らせて持ってきた鹿が無いぞ?
「し、仕方が無かったんだ。ゴリラにも最後の晩餐が必要だと思ったのだ。次の食事ならすぞらが持ってきてくれるから食べても良いかなと思って」
別に責めたつもりはなかったのだが、揺し、いい訳の言葉を羅列するイデア。その様子が可笑しくて噴出しそうになる。
「ワシはは好きじゃないから食べてよいぞ、とお嬢ちゃんに譲ったから、結局お嬢ちゃんが全部食べたぞい」
「マジか……2人分を」
「フッ、すまないが席を外させてくれ」
「逃げなくていいから。別に怒ってないから」
開き直りの速さに心する。ただ、後で食料を調達に行く必要は出來たな。俺は手に持っていたキラーパンダの頭部をゴリラの爺さんの見える位置に置く。一瞬それが何か理解出來ていない様子だったが、すぐに思い至った様子で目を見開き、キラーパンダの頭部と俺を見比べている。
「お主が倒したのか……あのキラーパンダを?」
「何? すぞらが?」
2人の驚きの聲をけて、俺は靜かに頷く。
「まさかのう……」
「かなりギリギリの勝負だったけどね。ゴメン。仲間の敵討ちは打たせてやれなくて」
「いいや、わしじゃどう頑張ってもこいつには勝てん。そうか、しかしあの狂暴なパンダを仕留めるとは。がすいた。これで思い殘すことなくあの世へ行けるわ」
「いや、まだ死んでもらっては困る。爺さん。アンタは自分で赤ん坊を取り戻すべきだ」
俺は真っ直ぐにゴリラの目を見つめた。ゴリラの目が驚愕と揺のに染まる。
「む、無理じゃよ……もう立ち上がることも出來ない、こんな手負いの老では」
「すぞら……お前まさか」
「手負いの老だから無理……なら、もしが元気だったら?」
「そ、そりゃ、今すぐにでも奴の屋敷に行って、マスマテラの顔に一発ぶち込みたいわい。じゃがそれは出來ん。もう、出來んのじゃよ」
「俺に賭けてみないか? 俺は融合というスキルを持っている。上手くいけば、爺さんの怪我を治せるばかりか、今よりも強いになれる。まぁ、ソーサリーコングという種族では無くなってしまうだろうけれど」
「融合じゃと?」
一瞬、融合というワードに反応したゴリラ。
「もちろん、お爺さんがお爺さんでいられる保障は無くなる。そして、融合するのは憎きキラーパンダの頭部」
だが、爺さんは考えることも無く、答えを出した。
「やってくれ、頼む!」
「いいのか?」
「もちろんじゃ……わしはあの子を取り戻すためだったら、悪魔にだって魂を売る。ふん、今までだって、しでも諦めてはおらんかった。他人であるお主らの前で格好つけておっただけじゃ。潔い老人を演じておった。本當はお主らに赤ん坊のことを任せるのだって、申し訳なく思っておった。もうしわしが若ければ……この手であの子を救いだせるのに……」
それは、長いことこの暗い窟で、孤獨と悔しさに涙を流してきた老ゴリラのの発。
「賭ける、お主に賭ける! どうなろうと構わん。今以下など有りはせん! どうかやってくれ! 例え敵の一部を取り込むことになったとしても、寧ろその力を利用するのが最大の復讐じゃろうて」
「決意が早くて助かる。なら早速行くぜ」
俺はキラーパンダの頭部とゴリラの爺さんにそれぞれ手をかざす。
「爺さんくらい賢い生きに本來融合は効かない。知が異とのじり合いを拒絶するからだ。だから、爺さんにはけれてしい。他者を。異を。異形を。変革を。進化を。退化を。混沌を。変化をけれてくれ」
黙って目を瞑り、頷くゴリラ。流石長い時を生きてきただけのことはある。頭部と老ゴリラのはの粒子となって混ざり合う。
功だ。なくても爺さんは、融合による合をけれた。
やがて収束した粒子はだんだんとその數を増し、巨大なシルエットを作り出していく。その大きさは窟の天井ギリギリの3メートル半。人型の様にも見えるし、やっぱりゴリラにも見える。
「うぉおおおおおおおおおお!! 漲る、漲るぞおおおおおおおお!!」
先ほどよりも多若く聞こえる聲が窟に木霊する。
の中から姿を現したのは白いと灰の皮を持つ巨大ゴリラ。そのゴリラは自のを確かめるように、ったりでたりを繰り返している。
そして、ある程度の確認が終わると、ニヤリと笑う。
「どうやら……功のようじゃのう。が若返っておるし、怪我も治っておる」
「みたいだな」
「謝する。これでわしは……再び戦うことが出來る」
ボディービルダーの様にポーズを決めるゴリラ。その巨が壁にぶつかりまくっているが、気にした様子はない。
グレートコング 魔力數値18900
  優れた叡智と戦いの果てにソーサリーコングが到達する境地。老獪な戦とヤングなで敵を躙する。
「凄いな……すぞらはコレを狙っていたのか?」
「まぁね。爺さんの知識は結構頼りになりそうだし。それにやっぱり戦力がしかったしね」
攫われている孫を助けたいなんて機を持っているし、すぐに協力関係になれると思ったのだ。
「フッ、優しいんだな」
わたしはわかっているぞ! といったじのドヤ顔のまま、うんうんと頷くイデア。
「ち、違うし。只戦力がしかっただけだし」
優しいのとは違う! だからその「いいからいいから」みたいな生暖かい顔を止めろイデア!
***
「ところで、素空」
ひとしきり新しいを試し終えたあと、そろそろ日も沈むので食料調達しようかと準備していたイデアと俺に、ゴリラが話し掛けて來た。
「どうした?」
「わしの名前を決めてくれんか? もう以前の名で呼ぶ仲間も居ない。ならば生まれ変わった今、新しい名がしいと思ったのじゃ」
「なるほど。新しいアニメが始まったから、ツイッターアカウントの名前を変更するみたいなじだね」
「よく解らんがそれは違うと思うのう」
しかし名前か。ゴリラって呼ぶのが一番いいと思うのだが。イデアがゴリラというワードを知っていたから、こっちの世界にも普通にのゴリラがいるってことだよな。
なら種族名で呼ぶのもあんまりだろう。
ゴリラ……ゴリラ……ゴリラ……強そうな名前。
「そうだ……じゃあコンボイにしよう」
「ほう……なかなか強そうな名じゃ! 気にった」
「フッ、よろしくなコンボイ」
「よろしくじゃ。この恩義、必ずや返させてもらう」
大分予定が狂ったが、敵の屋敷を襲撃するにあたって、心強い仲間が出來た。今日はこの窟で夜を明かし、明日早朝に襲撃をかける。決戦はもうすぐだ。
【書籍化】世界で唯一の魔法使いは、宮廷錬金術師として幸せになります ※本當の力は秘密です!
魔法がなくなったと思われている世界で、唯一、力を受け継いでいるスウィントン魔法伯家の令嬢・フィオナ。一年前、友人だったはずの男爵令嬢に嵌められて婚約破棄されたことをきっかけに引きこもっていたけれど、ひょんなことから王宮に勤めに出されることに。 そこでフィオナに興味を持ったのは王太子・レイナルドだった。「あれ、きみが使えるのって錬金術じゃなくて魔法…?」「い、いいいえ錬金術です!」「その聲、聞いたことがある気がするんだけど」「き、きききき気のせいです(聲も変えなきゃ……!)」 秘めた力を知られたくない令嬢と、彼女に興味津々な王太子殿下の、研究とお仕事と戀のお話。
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