《初心者がVRMMOをやります(仮)》続・見守る人々

「著いたー」

嬉しそうにはしゃぐカナリアを目に、セバスチャンは呆れながらさっさと中にるよう指示していく。

「お、いらっしゃい」

カウンターにいる二十代くらいのNPCがカナリアに向かって気に聲をかけてきた。

「……冒険者登録をしたいのですが……」

「お、了解。じゃあ、これに必要事項を書いてね。それから、ギルドではタブレットはしまったほうがいいよ」

「? どうしてですか」

「タブレットを出しっぱなしにしてるって事は、君の詳細報を他の冒険者が見れるって事だからね」

「え!? 他のタブレットから見れるんですか!?」

「いんや。……例えば君のAIを他の冒険者に見立てて説明するよ。

君が査定やらそのあとの必要事項のサインやらをしている時、後ろからタブレットの中が見れてしまうんだ。

特に、査定の時はだいぶ詳細な報を見れるページを開いていることが多いからね。レベルはいくつで、どんなクエストをやってきたのかとか、どれくらいの時間でクリアできたのかとか見れてしまうわけだ。

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レベルだけなら、近くにどんなやつがいるかってのを調べる機能がついているから、それで見ることはできるけど、そのほか収納しているアイテムとかは見れないからね」

「……開きっぱなしだと見られる可能があるってことですか?」

「そう。後ろから覗き込んだりできるから。……大抵そういったやつには運営からイエローカードが出される。だから問題ないとも言えるけど、用心に越したことはない」

詳しく教えてくれるものの、どうしてNPCと呼ばれる方がここまで詳しいのか分からなかった。

「ミ・レディ、ギルドのカウンター業務は運営會社の社員ですよ」

そして、今度はセバスチャンが、PCプレーヤーキャラ、NPC、AI、社員の見分け方を教えていた。

「……なるほど。そんなに違うもんなんですね」

「通常、NPCとPCの區別は……」

「初プレイです! 勉強するのでよろしくお願いします!」

そう言ってカナリアは社員に向けてお辭儀をした。

「……あぁ、うん。そういうことね。だと、今日は買取もなしか。とりあえず、登録。名前は……カナリアちゃん」

「はいっ!」

「初めてで、AIが即行ここに連れてくるって事は、こういったゲームもほとんどしたことが無いと見た。

だと、他の人たちはスルーしているチュートリアルのクエストを注した方がいい。タブレットとスマホ、それから攜帯の使い方が分かるし、薬草やアイテム採取の仕方も分かるから」

「ありがとうございますっ!」

社員の勧めもあり、カナリアはとりあえず「スマホを使いこなそう! 初級編」というものを注することにした。

「……ミ・レディ一言、私に相談がしいのですが」

どうやら、カナリアが注したクエストに申したいセバスチャンらしい。

「一応、スマホのクエストけながらでも、タブレットの使い方とかも分かるから、AIさんの腕の見せ所……」

「タブレット、もしくはスマホの地図検索機能すらまともに使いこなせない人にですか?」

その言葉に社員が固まっていた。

「……俺、もうししたら業務終了だから、そのあと付き合うよ」

「よろしいのですか?」

「構わない。俺はこのフィールドにログインして捜すだけだから。そんなにこのフィールドでやってる人ないでしょ」

個人報を持ち出さずにやる、そういわれてしまえばセバスチャンも黙っているしかないようだ。

そんな周囲の狀況など分からず、「初クエスト」に思いをはせるカナリアだった。

「あんた、甘すぎ」

ギルドカウンターではもう一人の社員が文句を垂れていた。

「いや、あの狀況を無視するのはちょっとなぁ……」

とりあえず、思いつく限りの「危険度」を挙げていく。

「……うん。あまり言いたくないけど、この地域にいるんだったら、私たちで見守るのも一つの方法よね。……これから主任が代で來るはずだから言っておくわ」

「いらっしゃいませ」

「買取」

唐突にギルドホールにってきた男に笑いかける、もう一人の社員。男は用件だけ言って査定してもらうと、さっさと出て行った。

「ここって、他のギルドホールが混み合っているから、査定をさっさと終わらせたい人の駆け込み寺」

「そうそう。そしてギルド登録だけして、他の初心者さんたちはさっさと次の街へ進めるしね」

「カナリアちゃんはしばらくここに滯在しそう」

「見守らなきゃ」

社員二人がカナリアを見守ると決めたところにもう一人の男が來た。

「あ、主任。お疲れ様です」

嬉しそうに笑う部下二人に、主任と呼ばれた男が首を傾げた。

「今日、可い子が來ました。しばらくこのギルドを使うでしょうから、主任も見守ってあげてください」

「?」

これだけで、會えば分かるような子である。

最初にカナリアと會話した社員は、他の申し送りをした後、ログアウトしていた。

「このフィールド、チュートリアル専用のフィールドではありませんので、ミ・レディでは倒せない敵も出ます。その時は逃げてここに來るしかありません。

ここはモンスターの現れない場所、休息場です」

初っ端から恐ろしいことをセバスチャンが口に出した。

「とりあえず、支給された傷薬では足りないでしょうから、薬草を採取しましょう。使わなかった分は買取してくれるはず。しばらくはチュートリアルのみでやることをお勧めします」

「そうします」

そこまで聞いていれば、それしか方法はない。

「それから、次からクエストを注する際は私の意見を聞いてからにしてください」

「……はい」

このあともここで延々とセバスチャンから説明をける羽目になっていた。

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