《FANTASY WAR ONLINE》第一話

サービス開始當日。晝の一時からサービス開始ということで、午前中は日課をこなしてサービス開始まで暇をつぶす。今は晝食をとっているところである。あと一時間まで迫ってきているのだ。

父さんは有休をとってきているために晝に家族全員がそろっているという狀況である。そもそも父さんはVRの開発でかなりのお金を稼いでいるため、今から遊んで暮らしても一生、生きていけるほどの蓄えはあるわけだが。

と、そんなこんなで、ようやく開始時間まであとわずかに迫ってきている。家族とは後で會おうと約束をわしてギアを裝著する。畫面からFWOを選択し、ログイン待機の畫面が表示される。殘り時間がカウントされている。あとは待つだけである。

カウントが十秒を切る。心の中で殘り時間を數えながら待つこと數秒、カウントが0を表示する。そして、俺の意識は落ちた。

○ ○ ○

俺が最初にじたことはその場所が暖かい場所であるということと、外であるということであった。草木の匂いがじられる。遠くで小鳥がさえずっている。俺はまぶたを開けると、目の前には青空が広がっていた。俺は森の中の開けた場所で寢転がっていたのである。俺は起き上がりあたりを見渡す。周りには木が生えているのみである。広間には臺座が置かれている。

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俺は木に近寄って回し蹴りをれてみると、ミシミシとをきしませる。

「すごいなあ」

俺が今までVRでやってきたことはただ白いだけに現実世界の時刻と仮想現実世界の時刻が表示されている場所で、祖父ちゃんたちと稽古をしていたぐらいである。

VRギアの時間加速技は最高十倍速まで行える。それを利用して、VRで十時間、現実世界で一時間、合計二時間の稽古を日課として行ってきた。

話を戻すが、俺たち家族は真っ白な無味乾燥とした世界を長い間見ていたために、このような自然を表現する空間というものに単純に驚いているのだ。しかも、木を蹴った時の衝撃は現実と変わらない。

俺はその場で暫く型を行いの違和を探してみるが、そういうものは一切ない。こっちでも問題はないことが証明された。で、先ほどから放置している臺座に近寄ってみると、臺座からディスプレイが浮き出てくる。

――タッチしてキャラクター設定を開始してください

なるほど、これで、アバターを作るわけか。

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……まあ、今はやらないでいいだろう。ここは、キャラクター作のためだけに作られた空間ということなのだろう。つまり、今探索しないと、これから先探索することが出來ないということである。おそらく、うちの家族は全員森の中へ足を踏みれる。いや、一般プレイヤーも同じように森の中へとっていくだろう。つまり、らない理由がないわけである。これで、謎の壁があったら諦めるが、謎の壁がないことを祈る。

と、広場から一歩森の中にる。

すると、広場からは一切しなかった獣の存在をじさせる強烈なにおいが俺の鼻を侵す。ふむ、し用心しておくべきだろう。なんせ今の俺は、俺の力で引き裂けるような布の服に足である。

そう、足である。

なんで足なのかは考えたが、おそらく、俺はログインするときに足だからなのではないかと予想している。そんなことなく全員足の可能もあるが。そうだったらそうだったで、森にらないで、さっさとアバターを作ってゲームを始めるのだろう。足が嫌なのなら。俺は別に気にしない。足は音を消してくれるから、隠時には大活躍である。後は、振じやすいので、どの格の生がどの程度の距離にいるのか把握しやすいというのもある。伊達に、森で熊と格闘しているわけではないのだ。

しばらく、森を適當にほっつき歩いていると、獣道を見つける。ふむ、ここを通るか。俺は獣道を通ることに決める。まあ、道の幅的に、そう大きなではないということはわかるので、問題はないだろう。オオカミまでなら、油斷しなければすぐに殺されることはないだろう。

と、かすかにの鼻息が聞こえる。その音の先にはイノシシ。ちょっと、戦ってみたいという思いもあるが我慢して、ゆっくりと気づかれないように通り過ぎる。そのついでに、手近にある石を俺の反対側へと放り投げてイノシシを導する。これで安心である。一息ついて前を向くと、熊と目が合った。

「グルルルルルルル……」

牙を見せて威嚇している。俺も同じように威嚇しているので人のことは言えない。お互いの殺気がまじりあい、この場には近寄りがたい雰囲気というものが形されているのだろう。近くにいたウサギやら小鳥やらが逃げていく様子がじ取れる。はそういうものに敏だからな。

熊の格的にはヒグマであることが予想される。別に炎を吹き出していたり、腕が四本あったりはしない。俺が知っていると同じだと思う。たぶん。いや、どうなのかね。

「ふきのとうでもお食べ」

なんと近くにふきのとうがあった。きっと俺がこいつを奪おうと思っているのだろう。そんなことはないと笑顔で語りかけながらふきのとうを差し出す。

「ガアッ!」

殘念、敵対してしまったようだ。悲しいことである。飛び掛かってくる熊の側へとり込ませて、みぞおちに掌底を一撃。

「ガヒュッ!」

呼気がれたので、苦しそうにもがき出す。皮で守られているとはいっても、の中まで通せば生きなのでこうなる。臓は理的に鍛えられないからなあ。熊は現在せき込んでいるので、待っててあげる。なお殺気。

熊はこちらへ顔を向け俺と目を合わせる。今のがまぐれか、何度もできるのか考えているのだろうか。俺は笑って答えるだけである。

今度は四本の足で地を蹴って俺に懐まで潛り込ませないようにしている。だが殘念、俺のほうが早い。間合いを素早く詰める。熊は一瞬戸って足を止める。それはいかんよ。熊の眉間に正拳突き。熊は目をちかちかさせて混しているような気がする。今ここで熊を殺しても、俺の今の気分としてはあんまり好ましくないので熊を放置して先に進む。追って來たら、相手してやればいい。

しばらく歩き、何頭かのオオカミの群れが襲ってきたので撃退しつつ森の中を進む。再び森が開けたところに出た。

「ここは、花畑か?」

遠くにとりどりの花が見えるので、安直ながらそう思う。そして、俺の視界の端にログハウスが一軒ある。

新築であるといったような生木の雰囲気はじることはないが、丁寧に使われていることがわかる。木に痛みというものが見えず、ただただゆっくりと時間の流れによってしずつ死んでいっているようなそのさまを見せつけられているような、退廃的な価値観とともに死んでいるが生きていると、生と死を同時に見せつけられているような錯覚に陥る建である。

俺はゆっくりとそれに近づき、れてみる。わずかながらに水気が存在している。雨が降ったから濡れているというわけではない。あたりに水たまりはない。雨がつい最近降ったというわけではないだろう。しかし、この木には水分が含まれており、それが朽ち、腐り、ダメになるという目的で使われるのではなく、ただ死ぬことへの抵抗に使われているということがわかる。みずみずしく、若々しくはない。ただ、日本に存在する神木よりも、神々しく長き月日を生き続けている。切り倒されていながらにして、この姿で生を謳歌しているのだ。

今まで生きている家というものは、的であり、怪として語られることだ。だが、ここまでに、靜かに、背景として見逃しそうな空間に鎮座していながら、その威は堂々と俺たちに生きているということを知らしめているというのだから、何ともしい建である。

外見はログハウスと言ってイメージしたログハウスの姿かたちをしているといえよう。窓がはめられている。中からカーテンが掛けられて、外から覗くことは出來ない。しかし、俺はこの家の主がどんな人なのかこの目で見てみたくなってしまった。いや、最初にこれを見つけた時には、ここに人がいるのかと思い、聲をかけるつもりだったが、より深く、會いたいと思っているのだ。

俺は、すぐさま玄関の前へと移し、ドアをノックする。

「もし、誰かいらっしゃいますか?」

家の中で誰かが歩いている。ゆっくりと、こちらへ近づいているのがじられる。鍵が外され、ドアがゆっくりと開いていく。

そこから顔をのぞかせたのは白銀の髪を持つ、しいだった。

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