《FANTASY WAR ONLINE》第三話
「さて、これからの予定も立てたし、さっそくアバターを作りましょうか」
メルは立ち上がりこぶしを固めている。やる気十分のようだ。
「でも、ここに臺座はないぞ」
「外に出ましょ。そうすればわかるわ」
メルは俺の手を握って歩き出す。俺もそれにつられる。しかし、しっかりと指を絡ませて手を握っているのだが、メルの手はやわらかくて溫かくて、気持ちがいい。
「ほらね」
外に出てメルが指さすほうを見ると、臺座が置かれている。なんとまあ、用意がいい。
「さっそく、設定していきましょ。わたしにも見せてね」
「じゃあ、一緒にしようか」
俺たち二人は臺座の前に立つ。俺は臺座の上に出ているディスプレイにると、目の前に、俺の分とも呼べるそっくりなが現れた。
「お、すげえ」
「昴流にそっくりね。わたしの隣にいる昴流の方がかっこいいけど」
俺はメルの髪をなでる。メルは嬉しそうに目を細める。
――種族を選択してください
さて、種族を選ぶとするか。
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畫面に出ている種族は【ヒューマン】【蟲人・蜘蛛】【ドワーフ】【リザードマン】【獣人・狼】【獣人・狐】だった。……多くない?
「なあ、メル。なんか多くないか?」
「たぶん、昴流のの誰かが選んだ種族が表示されているのだと思うわ。親族でバラバラの種族というのは変に思ったかららしいわ」
あー、ギアの登録時にマイナンバーを力したのはこういうのに使うわけか。よくできてんな。
えーっと……ヒューマンは飛ばして、蜘蛛の蟲人からだな。
【蟲人・蜘蛛】
二本の足に六本の腕を持つ蟲人。糸を生し、それを使い敵のきを封じたり、牙にある毒を使用して敵に噛みつき、毒狀態にする。
【ドワーフ】
小さな軀と筋質なが特徴。手先が非常に起用で、力も強い。酒に異常に強く、水の代わりに飲むことが出來る。
【リザードマン】
二本足で歩くトカゲ。い鱗によりを傷つけることは難しい。変溫であるため周囲の環境に左右されてしまう。
【獣人・狼】
優れた鼻を持つ獣人。流れるようなフットワークと集団でく狩りの仕方から、一度目をつけられてしまうと逃げることは困難。
【獣人・狐】
魔道の力に目覚めた獣人。尾の數の多さで生の格を表し、萬の時を生きた狐はまさに萬の尾を持つとされている。
……説明みじか。これだけで種族決定させるの? いや、逆にわかりやすいかもしれない。なんとなくどんな種族かわかるからな。
「下二つの種族がが選んだ種族だと思うわ。どうするの?」
「……獣人だな」
「どうして?」
「獣は強いだろ? だからだよ」
「ふふ、面白い理由ね」
俺は、さっそく種族を狼獣人に決定する。すると、目の前のアバターから、耳と尾が生えてきた。
――アバターの外見を設定してください
「なあ、この顔をいじりたくないんだけど」
「じゃあ、髪を変えたりとかは?」
「これ、耳や尾のにも左右しているだろ? それに、あんまり黒髪を変えたくないんだよなあ」
「でも、現実で被害にあったりするらしいわよ」
「そうなんだよなあ。わざわざ面倒ごとをしょい込む必要はないしなあ。……メル」
「なに?」
「メルの好きに俺の顔いじっていいぞ」
「いいの?」
「メルを信頼しているからな」
「昴流……やっぱり大好き」
メルは俺のに顔をうずめるようにして抱きつく。俺もメルのをやさしく抱きしめる。
「じゃあ、やるね」
しばらく、メルが俺の顔をいじっていたが、顔はほとんど変わらず、というか俺の現実の顔と同じだった。メルもいじるのをやめたらしい。で、髪は暗い銀髪になっている。遠くから見ると、黒にも見えなくはないような暗さではあるが、近くで見ると確かに銀髪だと認識できる。
「これで髪は、わたしとおそろいね」
可すぎるだろ。
まあ、それは置いといて、俺も別に異存はないため決定を押して、次に進む。次はステータスの決定のようだ。ここで、名前も決めるらしい。
「名前は……スバルでいいか。これは大丈夫だろ?」
「ええ。フルネームじゃなければ問題ないわ。でも、名前を変えたりしなくていいの?」
「だってメルに俺の名前を呼んだもらいたいし、な」
メルはすっと近寄り、腕を絡ませてくる。片腕が使えなくなるが、そんなことは気にしない。これからしばらく會えるのだから、いっぱい今のうちに甘えさせてあげなくてはならないのだ。
「で、ステータスなんだけど……これは、自由に10ポイント振ればいいのか?」
「そうよ」
「……なあ、メル。【信】って、どんなスキルだ? 使用制限とかあるのか?」
「MPがなくなったら、信は切れるわ」
公衆電話みたいだな。それじゃあ……。
ネーム スバル
種族 獣人・狼
LV1
HP 100/100
MP 200/200
STR 11
VIT 10
INT  9
MND 20
AGI 11
DEX  9
LUK 10
まあこんなじで。
「ねえ、獣人って魔法が苦手な種族なのよ」
「そうだな。種族説明に書いてあった」
「じゃあなんで、魔法防が上がるところに極振りしたの?」
メルはそう咎めるような口調で言ってはいるが、目は期待している。自分が予想していることを俺が言ってくれると。俺は、メルの頭をやさしくなでる。
「メルと話す時間を増やすために決まっているだろ」
「スバル……」
メルの頬の筋は緩みまくっている。こんな顔は俺以外には見せられないだろう。俺は、そんな顔をいとおしく思ってしまうので無問題である。
「でも、本當に大丈夫? わたしは嬉しいけど、そのせいでスバルに迷かけたくない」
「大丈夫、安心して。俺はこう見えてもめちゃくちゃ強いからさ」
「うん、わかった。信じる」
と、しばらくメルが抱きしめてくれと言わんばかりに甘えてくるのでしばらくメルのご希にこたえる。
――お別れの挨拶は済みましたか?
なんか、ディスプレイが空気読んでいるんですけど。
ちなみに、スキルや職業は選べない。というか、職業が存在するのはヒューマンだけであり、魔族は種族が職業の代わりである。その代わり、人間には種族スキルがない。そうやってバランスをとっているのだろう。
「やっぱり離れたくない」
「向こうに行ったらすぐに連絡するよ」
「ほんと? 絶対? 絶対よ」
「ああ、絶対。約束するよ」
「すぐに會いに行くわ」
「待ってる」
しばらくメルのぬくもりをじられないと思うとここにずっといたいと思ってしまうが、それだと今度は薫と會えなくなってしまうのでの涙を流しながらメルとの別れのハグを心に刻み付けている。
メルもようやく決心がついたのか俺からゆっくりとを離す。それがトリガーとなったのか、ゆっくりと俺のがとなって消えていく。
「すぐにそっちに行くから! してるわ、スバル!」
「ああ、俺もしてるよメル!」
俺はとなってメルの前から消えた。
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