《FANTASY WAR ONLINE》第十六話
今の狀況は? 最高だ。恐怖のあまり目を開けたくなってしまうほどに。だがね、それだと面白くないのだ。それに、右目つぶれているんだよね。間合いを読み間違えて抜き手がった。痛いが、アドレナリンがそれ以上に噴出している。
それでも今現在戦えている。やはり敵の存在と大のきを知することが出來るというのが大きい。だが、今目の前にいる父さんと思われるものはどっちを向いているのかね? 背中か腹かわからないのだ。そこまで詳しくわからない。腕の曲がり方で判斷するしかないのだ。より素早い処理速度が必要になる。
しかも、祖父ちゃんたちも鼻をより高度に使い始めている。背後からの攻撃を読まれることが今まで以上に多くなった。今までならば、直観と足さばきにより服のこすれる音などを総合的に判斷して奇襲の有無を見分けていた。だが、それに匂いを加えてさらなる知覚を得ているわけだ。
匂いでどうやって攻撃の有無を嗅ぎ分けているか? それは匂いの強さである。臭の強さで彼我の距離を把握して、攻撃の有無を見分けている。ただ、すぐに出來ることではない。何度も嗅ぎ分けてどの程度の強さで攻撃を仕掛けてくるのかがわかるようになったのだ。
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「――ッ!」
殺気。先ほどまでのとは格別に違う。これは? マナトだ。
「くくくっ」
何が面白い? 突然殺気が噴出したのは? きっと更なる難易度の戦いへと赴く事態が起きるのだろう。
まずいな。俺の目は片方失明しているんだけど。楽しみで顔が歪んでるぞ。
「シャッ!」
マナトの裏拳が飛んでくる。速度も威力も先ほどまでとは比較にならないぞ! なんだこれは!
一撃でも當たったらどうなるのだろうか? おそらく戦闘不能。復帰は諦めるべきだろう。それはいけない。ならば避け続ける必要があるな。
《只今までの行により【嗅覚強化】がレベルアップしました》
《只今までの行により【聴覚強化】を習得しました》
《只今までの行により【徒手武】がレベルアップしました》
《只今までの行により【け】がレベルアップしました》
《只今までの行により【回避】がレベルアップしました》
《只今までの行により【見切り】がレベルアップしました》
《只今までの行により【魔力知】がレベルアップしました》
《只今までの行により【心眼】を習得しました》
【心眼】とやらを習得できた? おそらく、目を使わない狀態で長い間戦っていたからであろう。このスキルによって、また更に周囲の知覚が容易になった。全方位の存在がなんとなくでわかるのだ。何もしていないにもかかわらずである。しかも、師匠の存在は大きく知覚できている。り輝いているのだ。これは、生としての格までもがわかるのかな?
……このスキルって、こんな簡単に覚えられるものなのかな? いや、目を閉じて半刻以上も戦場にいることが出來るのかといわれれば、まあ習得できたのも納得か?
あとは【聴覚強化】である。これは種族スキルらしい。音がクリアになっていると思う。スキルを習得できたからそうじているだけかもしれないけどな。
「ほれ、これで大丈夫じゃよ」
「ありがとうございます、師匠」
俺は今、師匠に目を回復させてもらっていた。完全回復。きちんと両目で見える。片目ずつでも確認している。視野におかしなところはない。それでも眼球運を続ける。確認は念りにする必要があるだろう。
しかし、魔とはこの程度のことを何でもないかのように出來るのだな。自分の右目に師匠の魔力が集まり眼球の修復を行っている様子をじ取っていたのだ。心して惚けてしまうのも仕方ないと思う。
「マナト、先ほどのはどういうことだったのじゃ?」
祖父ちゃんがマナトに先ほどの殺気の正を聞く。たしかに、突然のことだったからな。気になる。
「種族スキルに【殺】ってスキルがあるのは知ってるでしょ? あれ」
「あれって、敵と認識してないと発しないはずじゃ……ああ、そういうこと」
ユウトは自分で言いながら、気づいたようで納得していた。ふむ、そういうことなのだろうな。
「つまり、俺たち全員を敵と認識していたというわけか」
「おう、師匠も加えてたぜ」
「でも、先頭の途中で発するのはおかしいよねえ」
父さんの発言は確かにそうである。俺たちは相手を倒すつもりで戦っていたのだ。敵と認識してもいただろう。それなのに、マナトだけがそんなことないということはありえないだろう。
「ああ、それは……本気で殺そうと思わないと発しないっぽいんだよね。だから、殺気がれたんだよ」
「なるほどね」
道理で、度の濃い殺気だったわけか。あそこまでしないと発しないとか結構難しいスキルだろう。しかし、それだけに補正は高い。マナトの対応を全員が最優先に行っていたであろう。
「わしにすら殺気を向けるとは相當じゃの」
師匠が呆れたように溜息を吐く。それほどのものが來たのだろうな。俺たちは慣れているが、師匠にはきつかったのかもしれない。
「さて、ここの泉の水でも汲むとするかの。お前らも手伝うのじゃぞ」
といって、師匠はポーチからからの樽を人數分取り出す。一人でこれを満タンまで汲むのだろう。ここの水は味しいからな。それだけ持ち帰る価値はあるだろう。
俺たちは、水を満タンになるまで汲んだ。空を見ると、太が地面に近づいている。どうやら、長居しすぎたような気がする。まだ夕方ではないだろうけどね。
「ふむ、もうそろそろいいじゃろう。では帰るとするかな」
俺たちは師匠の後に続いて帰路へとついた。
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