《FANTASY WAR ONLINE》第二九話

奧の扉にった後、地下へと続く階段を下りていくと、重厚な鉄の扉が見えてくる。なんと重々しい雰囲気を醸し出しているのだろうか。ここは獨房か何かか?

「はい、この奧です」

付嬢が扉の鍵を外していく。一つ。二つ。三つ。そして付嬢から魔力が流れて扉が纏っていた魔力が霧散する。

「けっこう厳重なんですね」

「ええ……街の中でここが一番危険ですから」

と、何でもないように答える付嬢。……名前なんて言うんだろう。気になる。それに、付嬢ってなんか他人行儀なんだよなあ。

俺は半歩後ろにいるかおるに視線を向ける。かおるは俺の視線に気づくとにっこりと笑いかける。え、これどっち?

扉をくぐると、そこは広々とした空間が広がっていた。天井には明かりがいくつも設置されており、地下であるのにもかかわらずまるで晝間のような明るさである。

「ええと、はい。こちらで登録する魔を見せていただければ……お願いします。……ああ、戦級の魔はやめてくださいね。前に一度……ニュークアタックされて建が吹き飛びましたので」

え、なにそれ。頭おかしいだろそいつ。

「おー、なにすんの? 誰? お、オロートス様お久しぶりです」

と、一人の男がこの広間にってきた。

「彼は?」

「ああ……はい。彼はミールス。……魔法化式の職員ですね」

「へえ、彼はミールスというのですね。……そういえばあなたの名前を聞いてませんでした。あなたは?」

ちょっと不自然っぽいが許せ。今の付嬢さん呼びは無理なんじゃ。これは必要なことなんだ。なんか言い訳すると悪いことしてるみたいだから、堂々としてよ。

「え、いや……あの……そういうのは……大丈夫……?」

と、付嬢はちらちらとかおるを確認している。汗を流しながら。名前を教えただけで殺しに來るようなことはないと思うけどなあ。変なことさえ言わなければ問題は全くないんだよなあ。

「大丈夫だよ、大丈夫」

「そ、そうですかね……えーと……私の名前は……カナリヤです」

「うん、カナリヤだね。いい名前だ」

「あ、ありがとうございます」

と、カナリヤは顔を赤くしながらうつむいてしまう。カナリヤの顔っての気が通っているんだなと俺は思っていた。

「スバル」

かおるに呼ばれた。俺は聲のした方へ向く。すると、にっこり笑ったかおるが立っていた。そして、表を消してカナリヤの方をちらっと見ると、再び笑みを戻す。

……ああ、これかおるさん、楽しんでいるわ。カナリヤをからかって楽しんでいるわ。俺も楽しくなってきたぞ。

「ねえ、スバル」

かおるは近づいてくる。カナリヤの先ほどまでの顔つきから青ざめたの変化を眺めながら。そして、腕を絡ませる。

そして、ゆっくりと顔をかしてカナリヤをのぞき込むようにして見つめる。カナリヤの方がガタガタと震えている。かおるさん、楽しそうですねえ。

「ねえ、スバル。三人目?」

「ち、違います違います! 本當に違います! そんなつもりはありません! 違います違います! ……? ……三人目?」

慌てたように、カナリヤは言葉をまくしたてていたが、あることに気づいたようでその口はピタリと止まる。

「お主、もう一人おったのか」

「ああ、はい。そうですよ。今は離れ離れですが、いづれ再開する約束をしています」

「じゃあ、かおるさんは……なんで怒っているのですか?」

カナリヤは困したように質問をする。まあ確かに、怒っているようにも見えるのかもしれないな。

「怒ってないよ。私が笑うと恐怖にあふれた表を見せて楽しいから、怖がらせているだけだよ」

かおるはいい格をしている。そんなところも好きだ。おしくじてしまう。俺はかおるの髪を梳くようにでる。かおるはこちらに視線を向ける。俺はそこでにこりと笑う。かおるもそれにつられるようにして笑顔を作る。

「で、三人目になる?」

「……いえ、いいです。あなたと一緒にいても疲れそうなんで」

まあ、その選択は間違いではないだろう。あと、俺を抜いて勝手に三人目の奧さんにするかどうかを決めないでね。男の問題があるからさ。そこは大事だと思うんだよね。大事だよね?

あと、俺の妻にはなる気はないと宣言しているのに、ゆっくりと近寄ってきて俺の腕に絡ませてくるのはどうしてですかね。かおるが笑顔崩して困しているんだけど、これまずいよね。

「ああ、いいですかね。本來はここで魔の登録をするんですよ。さっさとしてくれませんかね?」

ミールスは待ちくたびれたようにあくびをしながら急かしてくる。正論である。何も言い返せない。

「ああ、そうでした。……では、スバルさん。さっさと登録しましょう」

カナリヤの聲が俺の名前を呼ぶときに、すこしトーンが上がったのは気にしないでおくことにしよう。

っと、魔の登録を開始するとしよう。

俺は、ミールスの方へと近づいていくのだった。

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