《FANTASY WAR ONLINE》第四八話
俺たち四人は次のウサギを求めて草原を歩いている。
「あいつだな」
「また一匹だね」
ウサギを見つけることには見つけたのだが、殘念なことに、一匹だけである。
「ウサギが二匹以上で固まっているって報告は一度も聞いたことないからな。そういうものだと諦めてくれ」
ウッドが言っていることだし事実なのだろう。しかし、一匹を探すのにうろうろするのは何とも効率が悪い。こりゃ、すぐにでも他の狩場に行くのは當たり前のことなんだろうな。仕方なし。
「一匹を複數人で囲んで殺すんだね。ひどいなあ」
かおるは空を見ながら笑っている。まあ、パーティ組んだらそうなるよね。
「まあ、そうなんだけどね……」
「でも、レベル1のプレイヤーがソロだとウサギに殺されることがよくある程度には強いんだぞ」
「ほんとかあ?」
先ほどの戦闘で強そうに見える要素がしもなかった。一撃でが真っ二つにされるのだからな。
「じゃあどっちが先に戦う?」
かおるは俺に聞いてくる。
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「じゃあ、じゃんけんで勝ったほうでいいんじゃないのか?」
「ああ、それもそうだね」
「おいおいおい!」
と、じゃんけんしようとするとウッドが止める。何かね?
「なんだ?」
「さっきの話聞いてた」
「聞いてたよ」
「一人だと殺されることもあるんだって言ったじゃん」
「ああ、そうだな。じゃ、かおる。じゃんけん」
「うん」
俺たちはじゃんけんをする。勝ったのはかおるだ。
「じゃあ私だね」
「おう、頑張れよ」
「わかってるよ」
ウッドたち二人をしり目にかおるはウサギの方へと歩き出した。二人は眉間を抑えている。さすが雙子だなあ。シンクロしてる。
かおるは自然な足取りでウサギへと近づいていく。と、ウッドが警戒される距離よりもさらに遠くからウサギが警戒を始める。しかし、かおるはそれに気にする様子は見せない。同じ速度で近寄る。
「きゅっ!」
ウサギは角を突き出すようにして飛び掛かる。その速度はかなりのであり、ウサギの瞬発力の高さをじさせることが出來る。止まった狀態から、すぐにマックス速度まで加速できるのなら、不意打ちで敵を殺すこともできるのだろうな。なかなかやる。
しかし、殘念なことに、かおるには効かない。かおるはそのままタイミングを合わせて木刀を振り上げる。それはウサギの顎にる。ウサギは宙を舞い、地面へ力なく落ちる。そこからウサギがくことはなかった。
「終わったよ」
「あ、ああ……」
ウッドが固まってしまっている。どうしたのかね?
「いやあ、強いというのはわかっていたけど、ここまでなんだね」
ライフが心したようにしている。
「ああ、そういえば、二人は知らないんだったな」
「まあな。お前もあまり強いということを見せびらかさないし」
そりゃ、黒歴史ですし。
「じゃあ頼んだよ」
かおるがウサギの首っこを摑まえてウッドに近寄る。ウッドはし後ずさるがそんなことは関係ない。
「あ、ああ。とりあえずおいてくれ」
「はーい」
かおるは地面にウサギを置く。ウッドはほっとをなでおろした。
ウッドが近寄ってナイフを突き立てる。すると、ウサギはと皮に変わる。先ほどのナイフは剝ぎ取りナイフというらしい。そのまんまである。何故かおるが剝ぎ取りをしないのか。それは、ここに來たときに剝ぎ取りナイフなんてものがないからだ。自分で買わないと剝ぎ取りナイフが手にらないということなわけだ。で、俺たちは剝ぎ取りナイフなんか買っているわけがないので、おとなしくウッドに任せているというわけだな。
「はい、かおるの取り分な」
ウッドはドロップした素材をかおるへと渡す。
「ありがとう」
かおるはそれをアイテム欄へとしまう。これで終わりだ。
「次は俺か」
「そうだな。早く行こうぜ」
ではそうしよう。俺はウサギを探すとどうやら一匹、こちらに近づいているのがいる。
「ここで待とう。近づいてきてる」
「そうか」
ウッドは地面に腰を下ろす。
「けっこう重いんだよ防って」
「あと、著慣れてないからね。疲れちゃうんだよ」
そう言いながら、ライフも腰を下ろす。
そうして、ウサギが近寄ってくるまで俺たちはその場で談笑していた。
「まだかね」
飽きたのか知らないが、ウッドが聞いてくる。もしかしたら獨り言かもしれないが。
「あいつ、ゆっくりとこっちに近づいてはいるんだがな。道草を食っているのかもしれない。ふらふらとしているからな」
まるで酔っぱらっているかのようである。
「こっちから行かね?」
「だなあ」
あの進む速度だったらすぐにでもこっちに來ると思ってたのに、突然止まりやがって。
「野生の本能ってすごいよね」
かおるはにこやかに言った。
……ああ、そういうこと。
「それ、逃げられるんじゃないのか?」
「どうかな? かな?」
かおるは口を三日月に広げる。俺は気持ち殺気を抑えてみる。そのあとかおるを抱きしめて興狀態を抑える。
「ふふ」
かおるの笑い聲が心地よく俺のに響いている。
「さて、これで大丈夫だろ」
俺はにっこりと笑う。これなら、目の前で人が殺されても穏やかな笑みを浮かべ続けていられるだろう。
「うわー……」
ウッドが何かまずいものでも見たような聲を出した。俺はウッドの方へと向く。すると、ウッドの顔が青ざめていく。人形のようなをしているな。はく製に出來るな。今なら多くのご婦人に用されることだろう。
「助けて……」
ウッドは天に祈り始めてしまった。何をそんな。救済の言葉なら俺が掛けてあげるというのに。
「さて、行くか」
気を取り直して出発しよう。
かおるは俺の腕に自分の腕を絡ませる。デートではないのだけれども、まあいいだろう。近くに敵はいない。
そうしてウサギの方へと歩けば、見つけた。玉である。真っ白な玉が草の中に隠れようとしてを掘っている
「を掘ってるな」
「へえ、そんな行をとるのか。初めて見たぞ」
恐怖から解放されたウッドは興味深そうにウサギのことを見ている。ライフとかおるの二人組はうっとりとウサギを見ている。可らしいのかね。あれ、何かから逃げようとしているように見えるけど。
ウサギは顔を上げてきょろきょろとあたりを見渡す。と、俺と目が合う。俺は笑う。笑顔が一番である。ウサギは引きつる。石になってしまったかのようにかなくなる。ただ、目だけは俺を真っ直ぐ見つめている。
俺は一歩足を踏み出す。ウサギはブルリと震える。ウサギは諦めたのか覚悟を決めたのか。俺を睨み付けるように見ている。
「ああ……あはっ」
やばいな、楽しすぎるぞ。
俺はゆっくりと木刀を抜く。そして正眼に構える。
覚悟を決めようぜ。俺はお前を敬意をもって殺す。だから、お前も俺を全力で殺しに來てくれ。
「ひゅっ」
瞬間、俺はウサギの間合いにり込み、そのまま振り下ろす。力した速度の乗る一振り。威力は? ある。俺の重を乗せている。これで効かないわけがない。
ウサギは橫に避ける。當然だ。あからさまな攻撃。リズムを相手に合わせてあるんだ。避けるに決まっている。避けなければ楽しくない。
ウサギは俺に飛び掛かる。角の一撃が俺に迫る。だが甘い、やはりウサギは不利だな。飛び掛かるときに急所に當てようと思うと、空中に待機することになってしまう。その瞬間に俺の膝蹴りを食らってしまう。こうやって、タイミングを合わせられると、もろいな。どうしても。
だが、俺はここでやめることはしない。すぐさま橫に木刀を振る。ウサギのを橫薙ぎにする。
そうしてウサギはぽとりと地面に落ちる。
俺はウサギに禮をする。
「頼んだ」
「あ、ああ……」
ウッドは同じようにウサギに剝ぎ取りナイフを突き立てて、素材を手にれる。俺はそれをもらう。
ああ、満足した。
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學校內でも生粋のモテ男である三人と行動を共にする『俺』。接點など同じクラスに所屬しているくらいしかない四人が連む訳は、地元に流れる不可思議な『噂』、その共同探訪であった--。 微ホラーです。ホラーを目指しましたがあんまり怖くないです。戀愛要素の方が強いかもしれません。章毎に獨立した形式で話を投稿していこうと思っていますので、どうかよろしくお願いします。 〇各章のざっとしたあらすじ 《序章.桜》高校生四人組は咲かない桜の噂を耳にしてその検証に乗り出した 《一章.縁切り》美少女から告白を受けた主人公。そんな彼に剃刀レターが屆く 《二章.凍雨》過去話。異常に長い雨が街に降り続く 《三章.河童》美樹本からの頼みで彼の手伝いをすることに。市內で目撃された河童の調査を行う 《四章.七不思議》オカ研からの要請により自校の七不思議を調査することになる。大所帯で夜の校舎を彷徨く 《五章.夏祭り》夏休みの合間の登校日。久しぶりにクラスメートとも顔を合わせる中、檜山がどうにも元気がない。折しも、地元では毎年恒例の夏祭りが開催されようとしていた 《六章.鬼》長い夏休みも終わり新學期が始まった。殘暑も厳しい最中にまた不可思議な噂が流れる 《七章.黃昏時》季節も秋を迎え、月末には文化祭が開催される。例年にない活気に満ちる文化祭で主人公も忙しくクラスの出し物を手伝うが…… 《八章.コックリさん》怒濤の忙しさに見舞われた文化祭も無事に終わりを迎えた。校內には祭りの終わりの寂しさを紛らわせるように新たな流れが生まれていた 《九章.流言飛語》気まずさを抱えながらも楽しく終わった修學旅行。數日振りに戻ってきた校內ではまた新たな騒ぎが起きており、永野は自分の意思に関係なくその騒動に巻き込まれていく 《最終章.古戸萩》校內を席巻した騒動も鎮まり、またいつものような平和な日常が帰ってきたのだと思われたが……。一人沈黙を貫く友人のために奔走する ※一話4000~6000字くらいで投稿していますが、話を切りよくさせたいので短かったり長かったりすることがあります。 ※章の進みによりキーワードが追加されることがあります。R15と殘酷な描寫は保険で入れています。
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