《FANTASY WAR ONLINE》第五五話
そうして晝食を食べ終わり、食堂から俺たちは出る。俺たちが先ほどまでっていた食堂は店員と客の距離というものが近く、和気あいあいとした雰囲気の店であった。だからといって、料理の手が抜かれていたということはなかった。十分満足できる仕上がりになっていた。
外には軽い食べを扱う店が並んでいる。目の前の店群は今が客の書きれ時なため、大聲を張り上げながら客を奪いあっている。
「うわ、すごい活気」
るときはそこまでの賑わいはなかった。道行く人々もここまでの數はおらず、せいぜいがぽつぽつとあたりを歩いているのみだっただろう。
「みんな晝休憩に狩りから帰って來たんだろうなあ」
と、考察するのはウッド。
「弁當を持ち歩いたりしないんだな」
あとは、その場で軽く料理を作ったりなどである。長時間フィールドにいるためにはそれぐらいの工夫はいるだろう。さすがに、それを思いつかないということはあるまい。
しかし、ウッドは驚いたような顔で俺を見ている。まさかそんなことはあるまい。そうだよな? な?
「それ名案だな」
「まじかよ……」
俺はドン引きした。さすがにあり得ない。それは思考停止どころの話ではあるまい。脳みそが走しているではないか。
俺の顔はあまりの衝撃で青ざめていることだろう。の気が引いていることが自分でもわかってしまう。
「いや、冗談だって」
ウッドは軽く笑いながら訂正してくる。
「むしろ、冗談じゃなかったら正気を疑ってたわ」
「じゃあ、なんでそういうことをしないの?」
かおるがウッドに質問する。
「正直な話、弁當を作ってくれる生産職がいないんだよ」
「だったら、自分たちで作れよ」
簡単な話である。自分たちで料理をすればいいのだ。
「その時間がもったいないじゃん」
「ああ、そう……」
町に戻ってくる時間と自分たちで料理をする時間を天秤にかけた結果なのだろう。
ああ、町に帰れば素材とかの売卻もできて荷を軽くできるからデメリットしかないわけではないな。そこまで、効率を求めているわけでもないのか。
「でも、弁當がほしいやつとかいないのか?」
「さあ? そういう話は聞いたことないしな」
「需要がなければ供給はされないんだし、みんないらないと思っているんじゃないの? そういうもんでしょ」
と、ライフが結論を出す。まあ、納得できる話ではある。
「さて……次はどうする?」
ウッドは手を頭の後ろに回しながら、話題を変える。
「じゃ、解散ということで」
「早いよ!」
ライフは俺の左手を両手で勢いよく摑む。ライフの手はし冷たい。竜人だからなのか、冷えなのか。俺は、ライフの手をみしだいてそれを溫めようとしてみる。ライフも俺の手と自分の手をこすり合わせている。
「…………」
かおるはじっとライフの手と顔を互に見つめている。その無言の圧力は相當のものであるだろう。
「えーっと……あはは」
ライフはさっと手を放す。すると、かおるは今度は俺の方へと向く。先ほどのライフを見つめていた目つきのままである。俺はさらなる重圧をじている。
かおるは首をかしげる。俺は笑う。笑顔を見せる。笑顔は大事だ。かおるも口元だけ笑わせる。綺麗な笑顔だ。
「綺麗だよ」
大事なことだから、口に出しておく。
「ありがとう」
かおるはその目つきをやめた。機嫌がよくなっている。いや、最初から機嫌はよかった。さらに良くなったのだ。
「ま、解散は冗談だからな。次も一緒に狩りでいいんじゃないか?」
「他のフィールドに行くか?」
ウッドは期待した目でこちらを見ている。まあ、ステータスはレベル2の數値ではないのだから、他のフィールドに言っても構わないだろうが。
「いやあ、まだレベル2だからな。しばらくはウサギ狩りでレベル上げかな?」
「まっ、そうだよな」
ウッドはし肩を落としながらそう言った。
「かおるたちは強いんだから問題ないんじゃない?」
不思議そうに言ったのはライフ。
「レベルは上げられるだけ上げてから次のステージに行く派だから」
「あー、わかる」
ライフも同じタイプの人間らしい。
「じゃ、ウサギ狩りの続きってことで」
そういうわけで、俺たちは再び草原の方の門へと歩き始めた。
【書籍化&コミカライズ】私が大聖女ですが、本當に追い出しても後悔しませんか? 姉に全てを奪われたので第二の人生は隣國の王子と幸せになります(原題『追放された聖女は、捨てられた森で訳アリ美青年を拾う~』
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