《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第84話 アポリアⅡ②

※無事第1部完結までPC力しました。書き溜めが80話(11/21時點)になってしまったので、投稿頻度上げます。

ライドヒさん、暴走しすぎだよ。もう収拾つかないよ。と僕は頭を抱える。

「でね。タオルだけ巻いた渚さんが、『口説くんならここじゃなくて、個別にしてください』って言ったの」

渚さんが「タオルだけ」? ‥‥じゃなくて、ライドヒさん!

「そうしたら、次の順番の子さんが訪れて。ふたりがかりで説得して、やっと4Fに戻ってもらったわ」

依はうなだれていた。そりゃあ、お風呂に踏み込まれたらヤだよな。

しかし、やりたい放題だな。ライドヒさん。

「‥‥‥‥でね。ライドヒさんが」

「ん?」

「『暖斗の許可はもらってる。この艦の子は全員好きにしていいんだよな?』って捨て臺詞吐いて」

え? 一瞬目の前が真っ暗になった。

「い、いやそんな、僕はそんな言い方は――――」

「ライドヒさんは確かにそう言ってた。わたしもお風呂で聞こえたもん。‥‥‥‥怖かったよ? 湯舟の子は浴槽に隠れたけど、わたし洗い場だったし」

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絶句した。そんな言い方は確かにしてないはずだけど、‥‥言葉が出てこない。

「だから、ごめんなさい。わたしたちの『治験』がバレたら、どうしよう? って思っちゃう。暖斗くんもMKでけないし。今日はもう、自室に帰ってカギかけて寢たいの」

「う‥‥うん」

ぼくにはもう、そう答えるしかなかった。――けど、何だろう。依との間に、重い空気の壁がある気がする。依の言葉使いとか、しぐさとか。距離をじる。

それを何とかしたかった。――――んだけど。

「あの、僕、そんな言い方はしてなくて」

去っていく依に、思わず聲をかける。

は微笑んだ。――――口もとだけ。

「『あの15人の中に彼とかはいないし。‥‥どうするかはあの子達の自由だし』、ね? 子さんが自白を使って暖斗くんの正確なコメントを聞き出してたよ?」

「あ、うん、ええと」

「確かにそうだわ。暖斗くんの言ったことは事実。――でもわたしは。――――ううん。みんなもきっと。‥‥‥‥暖斗くんの違う言葉がしかったわ。だって、みんな、ここまで一緒に暮らしてきて、一緒に戦った仲間でしょう?」

くるり。彼は白を揺らしながら振り向いた。

「そういう、みんなを大切に想う気持ちがった言葉を、言ってほしかったな」

*****

シューン、とドアが開いて、彼は去っていった。「中央エレベーターで彼にばったり會うとイヤだから、非常口階段で帰る」と言っていた。

いや、まさか。ライドヒさんがその辺を、依とかを狙って徘徊してるとか?

まさか、とは思うけど、今日の様子からしたら、やりかねない。――というか、依はもうその想定で行してる。

ああけない。くなら、自室まで送るのに。‥‥‥‥いや。みんなを大切に想わない僕は、送る資格も無いのかもしれない。

ライドヒさんの行は、実は男子なら、し理解できてしまう。

あ、こういう言い方良くないかな? 誤解されるかな?

僕もこの、男子僕ひとり、子15人、で選抜結果が発表された時、子の顔寫真を見て、心臓がバクバクしてしまった。

――だって、本當に人ばかりだったから。

僕の周りの男子も、さすがに平常心じゃ無かった。「すげえ」、「うらやましい」、「お前!ふざけんなよ!?」 って、無茶苦茶言われて、無茶苦茶イジられた。

だから、このラポルトにひとり男子で殘って、15人の子と楽しく絡む「妄想」が「暴走」になるのは、気持ちとしてはちょっとだけわかるんだ。子にも伝わるかな?

もちろんライドヒさんの行はダメだよ。肯定は一切してないよ。

この逆パターン。子がひとりで、イケメンが15人いたら、の子だって、ドキドキってなるよね?

でも、いくら絋國男子が子を雑に扱うからって、これはやりすぎだ。

妄想が暴走して、誰かを傷つけたらいけない。の子を泣かせたらダメだよ。

ライドヒさんは、ハシリュー村で「全て許される」育てられ方をした。

――あ、「それは殘酷な教育だ」って、誰かが言ってたな。

先生? ‥‥‥‥いや、父さんだ。

「‥‥‥‥」

マグカップとミルクは、依が用意してくれていた。‥‥正直、かしたらは痛む。

けど、依達だって嫌だし怖いんだ。止める事はできないよ。。

殘りのミルクを一気に飲み干して、スマホを取りだす。

かない手で、必死にメールを打つ。

上手くは言えない。僕は口下手で不用だから。

でも、この心に湧いた僕の魂の形は、何とか言葉にして、依に伝えたい。

通話アプリ「アノ・テリア」の送信音が続いていった。

♰ ♰ ♰

依。ごめん。

本當にごめんなさい。

僕は、みんなを守りたい。

僕は、みんなに、笑顔で暮らしてほしい。

そのために、戦ってきたのに。

もう一度、そのことだけは伝えたい。

君に。

思ったまま、一區切りずつどんどん送信してしまった。ポエムみたいになっちゃった。

でもいい。笑われてもいい。

ああ、もう一回依の笑顔が見たいな。

何とかベッドを水平にして、寢ようと思った。

天井を見てたら、涙がポロポロ出てきた。

なんだか、依との、ラポルトのみんなとの、大切な何かが切れてしまったような気がして。

寢れなかったし、涙は止まらなかったよ。

*****

どれくらい泣いてたろ。もう日付も変わったかな。‥‥時計を見る気力も無かった。

DMT(ディアメーテル)に乗るたびに、MK(マジカルカレント)を使う度に、この依が待つ醫務室に運ばれた。

みんなを守りたかったから、戦ったんだ。

依が待っててくれたから、戦えたんだ。

依がいない醫務室は、からっぽで、僕も、からっぽだ。

そのからっぽの人間から、涙が出てきて止まらないなんて、稽じゃないか。

シューン。

ん? 今の音?

その、からっぽの醫務室の、ドアが開く音が聞こえた。

※ さ、って來たのは誰でしょう? 「ライドヒじゃ無い事は確か」

ここまで、この作品を読んでいただき、本當にありがとうございます!!

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