《Creation World Online》第12話

キョウラクとキョウジの試合が終了した後、しの休憩を挾んで2回戦が開催されることになった。

「えーと、2回戦は…え、俺なの?」

「いや、なんで確認してないんですか」

「な、なんとなく?」

「…」

呆れたような目でこちらを見るアンリ。やめて!そんな目で見ないでっ!

アンリの視線に耐えられずに反対を向くとそこにはぼーっとした瞳で前を見ている、俺の対戦者であるサイカが手に鏡だけを持って座っていた。

サイカはこちらの視線に気がつくとトタトタとこちらに小走りでやってくる。

「やあ、次の相手だよね?よろしくね」

「ん?ああ、よろしくな」

「そろそろ試合開始だし行こう?」

「あ、ああ、そうだな」

そう言ってスタスタとステージの方に歩き去っていくサイカ。

…なんだろう、対戦前ってじが全くしない。

しかし、いつまでも座っているわけにもいかないので立ち上がるとアンリに向かって手を振る。

「それじゃあ行ってくるぜー」

「はーい、今度はちゃんと戦ってくださいね」

「失禮な、俺がちゃんと戦ってないみたいじゃないか」

「…あれをちゃんと戦っていると言うならゴブリンの方がまだマシな戦いをしますよ」

そう言ってアンリはため息を吐く。

心外な、俺の戦い方はゴブリンにも劣るというのだろうか。

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その事を言うとアンリはさらにため息を吐いて言う。

「もういいです、早く行ってください」

そう言ってまるで犬を追い払うかのようにしっしと手を振る。

ちくしょう、人を犬みたいに扱いやがって、覚えてろよ。

試合終了後に絶対に悪戯をしてやろうと心に決めて俺はステージに上がるのであった。

「よう、待たせたな」

「いや〜?待ってないよ〜」

俺はステージに上がると先に待っていたサイカに軽く謝罪するとサイカは気にした様子もなく軽く返事をする。

俺たちが上がったのを確認した審判が試合開始の合図を出した瞬間に俺は驚愕きょうがくした。

「おいおい、噓だろ…」

「殘念ながら真実だよ〜。あ、でもここは仮想世界だから真実じゃないのかな?まあ、どっちでもいいか」

俺の視界、正確にはサイカの頭上には數百もの火の玉や水の玉、土の塊などの様々な屬の魔法が浮遊し旋回していた。

「それじゃあ行くよ〜」

「ちょ!待て!うおっ!」

俺目掛けて飛んできた火の玉を橫に転がって回避するが追撃するかのように他の魔法が飛んでくる。

ちくしょう!どうやって勝てと!?

俺は飛んでくる魔法を見ながら1つの案を思いつく。しかし、これは功するかわからない、が…

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まあ、ここでやらないと負けるよな。

そう考えた俺は決意を固めステージにを開ける、それも俺の足元に。

俺はに落ちる前にったビンをサイカに投げつける。

に落ちる直前に俺が見たのはサイカの放った土魔法にぶつかって砕け中を撒き散らすびんだった。

そして俺はの中にると即座に口を塞ふさいだのだった。

そして俺はマップに映る點を確認すると功していることがわかり、ニヤリと口角を吊り上げてこう言った。

「上手くいったな、これで確定したぞ、勝つのは俺だ」

「ん〜、どうしたものかな…」

僕の名前はサイカ、これでもこのゲーム【Creation World Online】では上位のプレイヤーだと思っている。

そんな僕は今『攻略者パーティー』というものに所屬するための大會に參加している。

面倒くさかったのだけど馴染のの子が一緒に參加すると言って聞かなかったため仕方なく參加しているのだった。

そんな僕も固有裝備【増鏡インクリースミラー】の力でなんとなく勝ち進んでいた。

しかしそんな僕も今困っていた。なぜなら対戦相手が__

「さすがに地面の下なんてどうしようもないよな〜」

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そう、対戦相手である【鬼畜】のシュウという人がさっきからずっと地面に潛っているのだ。

それにしてもどうやって破壊不可能設置オブジェクトであるこのステージにを開けられるんだろうか。

僕が疑問に思っていると突然先程シュウがいた場所にが開き、そこから彼が飛び出してきた。

なんのために出てきたんだろう?

そんな風に考える僕を見ながら彼はニヤッと笑って言った。

「チェックメイトだ」

「何言ってるのか僕にはさっぱりわからないや」

そう言いつつ僕は全魔法を彼にぶつけようとして__落ちた。

次の瞬間僕はを貫く痛みと衝撃に驚く。確認してみるとどうやら石造りの槍が僕のアバターのを貫いているようだった。

そして僕を見下ろすかのように現れた対戦者シュウに僕は尋ねる。

「な、にを、した…?」

「簡単な話さ、を掘っただけだ」

苦しそうに尋ねた僕を見下ろしながら彼はニヤリと笑ってそう言った。

そんな彼の掲げた手の上には轟々と燃え盛る火球が構されていた。

おそらく今の僕がければライフは規定値以下に下がり試合終了となってしまうだろう。

どうにかしてここから抜け出そうと々考えたが…どう足掻いても無理なようだった、なので僕は諦めを含んだ聲で彼に言う。

「僕の負けだよ、これからよろしく」

「ああ、よろしくな」

彼はそう返すとその手を振り下ろす。すると火球は予想通り僕のライフを削り取り僕のライフは規定値以下に下がる。

ああ、負けたなあ。後でシラクモに怒られちゃうな…

僕は脳でギャーギャーとやかましい彼を想像してしだけ笑うとそのまま意識を手放した。

『試合終了!勝者シュウ!』

審判の聲が響くと先程のキョウジ達の試合ほどではないが歓聲が上がる。

まあ、今回はわりと真面目に戦ったからな。それに今回の戦いで得られたものは大きかった。なぜなら__

「シュウ君!」

「のわっ!ア、アンリ?」

俺が今回の戦いでの結果を噛み締めていると突如アンリに抱きつかれる。

アンリの方に視線を向けるとそこには嬉しそうな顔で俺を見ている彼がいる。

「おめでとうございます!」

「お、おう。ありがとな」

「どうしたんですか?嬉しくないんですか?」

「ああ、いや、その嬉しいことには嬉しいんだがな?」

そう言って俺は周囲を見渡す。アンリはおそらく忘れているのだろうがここはステージの上なわけで、つまり多くの人間が見ているわけで…

その時ひゅーひゅーと冷やかしの聲がどこからか聞こえるとそれが會場中に伝播して大音量の冷やかしが俺達に降り注ぐ。しかし、一部許容できないのか男プレイヤーから怒聲や罵聲、はたまた魔法が飛んでくる。審判が慌てて止めにるが魔法の幾つかは俺に當たる。まあ、決闘モード中なので外部からのダメージは全くないのだが。

そしてその原因を作った張本人であるアンリは、自分がしでかしたことに今更気づいたのかアワアワと慌てていて使いになりそうにない。

こんな時はどうしたらいいんだろうか…

対策も何もわからないので取り敢えず會場から離れることにする。何かあれば連絡してくれるようにキョウジにフレンドチャットを飛ばしておく。すると數秒で『任せろ』と返事は返ってくる。頼もしい限りだ。

取り敢えずアンリを落ち著かせるために會場の側にあるベンチに座らせるとアイテムボックスから飲みを取り出してアンリに手渡す。

アンリはそれを手に取るとし飲んで落ち著いたのか一言。

「ごめんなさい」

そう言って俯うつむいてしまう。しかし、その様子はどうも恥ずかしがっているようなじではない。

んー、なんでこんなに落ち込んでるんだ?

「なあ、アンリ。なんでそんなに落ち込んでるんだ?」

「だって、私のせいでシュウ君が…!」

あ、なるほど、さっきの魔法か。

しかしあれはアンリが気にやむようなことではないのだ。

「やっほー、アンリちゃん。お久〜」

アンリをフォローしようと口を開きかけた時見知らぬがそう言った。

そちらの方を見ると不良然としたが3人立って、こちらを見ながらニヤニヤしていた。

聲をかけられたアンリの方を向くと顔を青くしてガチガチと震えていた。

…ああ、こいつらあの男ソウと同じタイプの人間なのか。

怯えたアンリを見て糞悪くなった俺の視線に気がつかないのかリーダーっぽい不良はこちらに近づいてきてアンリに言う。

「ねえ、あんたソウのこと知らない?あんたと遊んでたと思うんだけど」

アンリはガクガクと震えて俺にしがみついてくる。

それを見たは面白くないようでアンリを蹴ろうとしてきたので創り上げた剣の腹でその足を止める。

するとは忌々しそうにこっちを見てぶ。

「なにすんだよ!あんたには関係ないでしょ!」

「いーや、大有りだ。こいつは俺のパーティーメンバーだ。それに…そのソウってやつを殺したのは俺だからな」

「なっ…!」

「気づいてなかったのか?ほら、フレンドリストからそいつの名前消えてるだろ?…ああ、それともフレンド登録してないのか?」

デスゲームという現実と変わらないような狀況になったというのにフレンド登録も行っていないなんてどうやって連絡を取り合うつもりだったんだ?

「あああああ!あんたがあああああ!」

「おおっと、危ないなあ」

不良達の愚かさに呆れているとリーダーっぽいのが衝撃から立ち直ったのか俺に向かって腰に下げていたナイフで切りかかってくる。

俺はそれをもう片方の手に生した鉄の剣で弾く。

それを見てぶ。

「なんであんたまだ剣持ってるのよ!」

「簡単だろ、俺の技能スキルだ」

そうこれは先程の戦いで手にれた力である。正確には【法則介】のスキルレベルがようやく上がって解放されたのだが。

そんな俺の現在のステータスはこれだ。

◇◇◇◇◇◇

名前:シュウ

別:男

レベル:19

職業:メインジョブ【錬金士Lv.8】

サブジョブ 【盜賊Lv.14】

HP:285

MP:2500(+250)

STR:95(+25)

DEF:75(+125)

INT:320(+120)

MEN:220(+120)

VIT:70

DEX:280

SPD:340(+30)

〈技能〉

固有技能:【法則介Lv.2】

通常技能:【錬金Lv.15】【火魔法Lv.20】【風魔法Lv.35】【罠知Lv.10】【罠解除Lv.10】【罠作Lv.18】【敵知Lv.15】【鑑定Lv.20】【魔力増加[大]】【魔の心得Lv.13】

〈裝備〉

 :鉄のショートソード

頭 :鉄の額當

 :鉄の軽鎧

:大鬼オーガのズボン

:鉄の小手

靴 :小鬼ゴブリンの靴

裝飾品:風魔の指シルフリング

:盜賊のピアス

【所持金:28900L】

◇◇◇◇◇◇

とまあ、この様になかなかに強くなったと思う。

そしてレベルの上がった【法則介】その能力はズバリ武の生である。

これだけ聞くと強いとじるかもしれないが、これは一度手にれて戦闘で使用した武以外は生できないのである。なので固有裝備なんかは全く作れないのだ。

しかし、この能力はなかなかに使えるのだ。例えばこの様にいきなりの戦闘になった際に武を引き抜かずにすぐに生できるのだから。

もちろん生した武にも欠點はある。それは戦闘終了と同時に使用限界を迎え砕け散るのである。なので換金することもできない。

そんな俺の説明を聞いてはさらにぶ。

「そんなのズルじゃない!」

「殘念だったなあ!ズルでもなんでもないんだぜ」

「クソがああああああ!」

そうぶとは俺に切りかかってきたので、俺はし橫に逸らすとの足を引っ掛ける様な位置に足を固定する。

すると見事にはつまづいて顔面から地面に激突する。いい気味だ。

痛みにのたうち回っているの髪を俺はしゃがんで摑み上げると耳元で囁く。

「なあ、今までお前アンリになにしてきた?」

「な、なにもしてないわよ!」

「はい噓」

「ぎゃっ!」

噓をついたの頭を地面に思い切りぶつけてやる。

噓なんてついてもすぐにわかるのだ、だいたいアンリがあんなに怯えているのになにもしてないわけないだろ。馬鹿か。

俺はの髪を摑み直しまた顔の前まで引っ張り上げると耳元で囁く。

「噓はよくないよな?噓は、さあ、本當のこと話せよ」

「ひぃ…っ!い、イジメてましたっ!」

なるほどイジメか…

俺は質問を続けることにする。

「イジメって的には?」

「毆ったり、蹴ったり、隠したりですっ!」

「ああ、テンプレ通りのイジメってやつか。クソむかつくな」

俺がイライラしながらそう吐き出すとは怯えた様に短く悲鳴を上げる。

そして俺はに優しく語りかける。

「今の話を総合した結果俺は思うんだよ、まあそういうイジメって世の中に絶対あるものだよなって」

「じ、じゃあ!」

「うん、でもさそれは他人がされてる場合。知らない人間がやられてる場合にのみ言える言葉なんだ。まあつまりなにが言いたいかと言うと…俺のに手を出した時點でテメェらの死は確定だってことな」

そう言って俺は一際大きく腕を振りかぶると地面にめり込む様な勢いでの頭を地面に叩きつける。パキャリという音となにかったものが潰れるグシャリという音が聞こえるとその場には一の赤い花が咲き、周囲にむせ返る様なの臭いが充満する。

「い、いやァアアアアア!」

「あー、うっせうっせ」

「あがっ!」

騒いだ取り巻きその1を黙らせるために一気に距離を詰めてそのに【風纏い】を使用して風を纏わせた拳で毆ると簡単にが開く。

なんだこいつら脆すぎないか?

「なあ」

「ひぃ!こないで!【ウインドカッター】!」

俺が達のレベルを聞こうとまだ怪我をしていない取り巻きその2に聲をかけると魔法を放ってきたので掌を前に向けてけ止め、消滅させる。なんで俺にこんな魔法を放ったのだろうか、効かないのはわかりきってるだろうに。

俺が魔法を消したことに驚いたのかは踵を返すと走って逃げようとしたのでその足に生したショートソードを投げて腱を切ってやる。このゲームのすごいところはこんな風に特定の部位を怪我させると現実と同じようにけなくなったりするところだな。

俺が倒れたに近づくとはキッと俺を睨んでぶ。

「この人殺し!」

「人殺し?おいおい、心外だなあ。俺は殺しちゃいないぞ」

そう言って俺は倒れ伏している共を指差す。

そう、俺は殺してはいないのだ。なぜならあいつらはピクリともかないが粒子になって消えていない。つまり、まだライフは殘っているのだ。まあ、しばらく放置すれば死ぬ可能はあるが。

そのことを伝えるが目の前のは信じる様子がないので仕方なくそいつを引きずって共を1カ所にまとめる。

そしてムカつくが最も効果が低い回復ポーションを投げつけてやる。

そして俺は目を覚ました最初のリーダーに話しかける。

「で、お前らの名前は?」

「…こんなことしてタダで済むと思うなよ」

「質問に答えろよ」

「イヤァ!痛い!痛い!」

質問に答えないので人差し指をへし折ってやる。

パキッと軽い音がして細かった指は折れてしまう。

暴れてウザいのでもう1本折ろうとするとは途端に靜かになる。よかったよかった。

靜かになったところで俺は質問を始める。

「お前らの名前は?ああ、プレイヤーネームでいいぞ」

「…キョーコ」

「ミスズ…」

「ユリ」

なるほどリーダーがキョーコ、腹に開けたのがミスズ、そして足の腱を切ってやったのがユリか。

さらに気になっている質問をすることにする。

「お前らのレベルは?」

「何であんたにそんなこと教えなきゃいけないわけ?」

「いや、お前らがあまりにも弱いからさ。殺すにしても相手のレベルが低いならレベルアップの足しにならないじゃん?」

そう言って俺は笑いかけてやる。まあ、たとえ低くても殺すんだけどな。

キョーコたちは俺の笑みをどう捉えたのかわからないが希を持ったような聲でこう答える。

「レベルはみんな8です!」

「ん?レベル低くないか?この數ヶ月間なにしてたんだ?」

「ほ、ほとんど街から出てない…」

「ふーん」

大方ソウに依存して生活していたんだろう。愚かだ。もしソウが死んだら、なんて考えてなかったんだろうな。

俺がそんな風に考えているとユリが涙聲で言う。

「お願い!私達は弱いの!助けて!」

「助けて…ねえ?お前、それはちょっと都合が良すぎないか?」

「え?どういう…」

「お前らはさアンリが助けてって言った時、やめてと言った時にイジメをやめたのか?」

「それは…でも!」

「でももクソもねえよタコ、ちゃんと伝えたろ。俺のに手を出した時點でお前らの死は確定だって」

そう、こいつらを殺すのは確定事項なのである。助けたのだって話を聞くためだし、用が済めばこんなやつら即刻殺してやる。

そう考え俺がショートソードで斬りつけようとしたその瞬間アンリが俺の腰に抱きつき剣の軌道が狂いキョーコの右肩に切り傷をつけるだけに留まった。

そして俺に抱きついたままアンリはぶ。

「逃げてください!」

達は一目散に逃げるとその姿が見えなくなる。くそっ、殺し損ねたか。

俺は殺し損ねたイラつきをぶつけるかのように止めたアンリに問いかけようとして__息を呑んだ。

なぜならアンリがポロポロと大粒の涙をこぼして泣いていたからだ。

「お、おい。アンリどうした?」

「ごめんなさい…!ごめんなさい…!」

「なに謝ってるんだ?大丈夫か?」

「私のせいでまたシュウ君が…!」

どういうことだ?なぜアンリは泣いているんだ?

けないことに俺はなにもできずただただ立ち盡くすことしかできなかったのであった。          

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