「む、行き止まりみたいですね」

「そうだな」

窟をしばらく進んだ俺たちの前に現れたのは巨大な地下水源だった。

水は澄み切っていて底の方まで見渡すことができた。

「ん？あれなんだ？」

水底にのようなものがあるのが見えるがいかんせん距離が遠すぎて詳細に見ることができない。

あ、そうだ。水の中にればいいのか。確か水著には固定で【水棲】がつくんだったな。

水著の効果を思い出した俺は即刻マイセットに登録しておいたビーチスタイルに著替える。

水をパチャパチャして遊んでいたアンリはそんな俺の行を見て「は？」って顔をしていた。

「何やってるんですか？」

「見ての通り著替えたんだが」

「なんで著替えるんですか？」

「あのを調べるぞ！」

「【水棲】が無いと継続ダメージで…あ」

どうやらアンリも気がついたようで微妙な表を浮かべている。

アンリが宙空で何かを作するように指をかすとアンリの手に水著が現れる。

そして一瞬の躊躇いの後、バサッとローブをぎ捨てた。

「何してんのお前！？」

「ちょ！見ないでください！恥ずかしいんですから！」

グリっと強制的に背後を向けさせられる。背後から聴こえるきぬずれの音に普段とは違った興が…って違う違う。

「なあ、アンリ。マイセット登録してなかったのか？」

「…まさか使うとは思ってませんでした」

背後のれの音が止むと「もういいですよ」と言ってアンリが俺の肩をポンと叩く。

背後を見てみれば昨日買った水著にラッシュガードを羽織った姿だった。水著姿を期待していたんだが殘念だ。

アンリは俺をじーっと見つめると一言。

「…変態ですね」

どこのエスパーだよ。怖えよ。

俺は平然を裝いながらも心でビビっていると、アンリは「とりあえず早く行きましょう」と言うと水に飛び込んでしまう。

後を追いかけようと俺が水辺に近づくとアンリが水中から上昇してくる。ただし、そのに手を纏わせながら。

「いやぁああああ！シュウ君！助けてください！」

「えっと、とりあえず。ごちそうさまです。でも、を言うならもっとがしかった」

「ちくしょう！後でぶん毆ってやりますからね！？」

ギャーギャー騒ぐアンリはとりあえず無視して手に【鑑定】を使用する。

◇◇◇◇◇◇

名稱:－－－

種族:メラドーラ

HP　:2900/2900

狀態:無し

◇◇◇◇◇◇

なるほど、あれがフィールドボスか。

俺が冷靜に分析していると、水中から更に幾つかの手が俺に向かってびてくる。

バックステップで手を避けると短い詠唱で火魔法【炎鎚えんつい】を発させる。

炎で形作られた鎚が1本の手に當たるとタコの焼けるいい香りがして、戦闘中だというのに俺の腹が間抜けな音を鳴らした。

俺の魔法によって焼かれた手は慌てたように水に引っ込んでいく。もう無駄だと思うが。

さて、次はどの手が相手だ？

「あ、あのっ！は、早く、助けっ…ひんっ！」

む、そう言えば忘れていたな。

手に絡まれて顔を赤らめているアンリは中々エロくてまだ見ていたかったがそろそろ可哀想なので助けることにする。

俺が風魔法【エアカッター】を発すると、複數の不可視の空気の刃がアンリに纏わりついていた手を切り落とす。

突然自分を持ち上げていたものがなくなったアンリは「ひぁああああ！？」と間抜けなび聲をあげながら、重力に従って當然の如く落下する。落下先は水なので死にはしないだろう、多分。

「ぷはぁ！？ちょっとシュウ君！？死ぬかと思いましたよ！？」

「ああ、悪かったな。それはそうと水著げてるぞ」

「いやぁあああああ！シュウ君の変態！」

いや、お前が気づかなかっただけだろ、と心でツッコミをれつつ俺は手のきを観察する。

流石に2本も破壊されたせいか、手達も警戒したようで中々襲って來ない。

「くっ…！この恥ずかしさの原因は全てあのタコ野郎にあります！焼きタコにしてやりますよ！【フレアカノン】！」

アンリがそうぶと橙の魔法陣が現れそこから極太の熱線が放たれると、その進路上にあった3本の手が熱線にれた途端消し炭に変わる。

手がついに1本だけになると、手が水中に潛ってしまう。

するとザパーン！という音と共に水しぶきが舞い散る。

音と水しぶきの中心を見てみればそこには妙にリアルな巨大タコ【メラドーラ】の姿があった。

メラドーラは大層ご立腹なようで元々元気な3本の手と俺に焼かれて未だに味しそうなじになっている手を振り回して威嚇いかくしてくる。

「吹っ飛びやがれです！【トリプロージョン】！」

アンリのびと同時にアンリの目の前に３つの紅の魔法陣が現れ、そこから3本の紅に輝く槍の形をしたエネルギーが飛び出すとメラドーラにれた瞬間に発する。

煙が晴れてその場を見るとそこには手を全て失い頭部を半分失いながらもなんとか生きているメラドーラの姿だった。

「おー、頑丈なやつだな」

「そうですね、シュウ君早くとどめをさしてください。私はお腹が空きました」

そう言ったアンリのお腹から間抜けな音が鳴る。まあ、俺も腹は減っているのだが。

俺は目の前で死にかけているメラドーラに向かって風魔法【ウインドカッター】を放つとメラドーラは大した抵抗もせずにそのまま死に絶え、の粒子に変わる。

なんて言うか、呆気なかったな。