《Creation World Online》88話

青年を拷も…お仕置きした後、俺は古城の部屋を片っ端から漁っていた。

大浴場、使用人部屋、図書室、応接間などなど様々な部屋を覗いたのだが、大したものは無かった。

唯一、図書室でエクストラスキルを手にれることのできる魔導書を手にれたが、見たところ劣化版・盜賊王の眼晶程度のスコープ機能を一時的に付與するというものだったので、後でアンリ達にくれてやろうと思う。

調べる部屋も無くなったため、次に二階に上がろうと階段に通じる通路の曲がり角で階段の様子を伺う。

「だから私はそこで言ってやったわけよ。『Fuck off!!おとといきやがれ!』ってね!」

「それでどうなったんだよ」

「クビになったね。なんでクビになったのかよくわからないや」

「なるべくしてなってんだろ。俺が社長だったら即切りするわ」

「ちなみに言った相手社長だよ」

「それはアウトだろ」

「だよねー」

そんな風に先程の糸目の男と、紫のスーツを著た厳つい顔の男が談笑しながら階段の前に立っていた。

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さて、ここをどう突破するかだな。取り敢えず足音を消して進んでみるか。

足音を消し、気配を消し、完全にバレるはずがないと思いつつ階段に向かって歩いて行く。

ん?なんか糸目のやつこっち見てないか?いやいやいや、まさかな。

糸目の男は唐突に懐から拳銃を取り出し、俺目掛けて発砲する。

弾は俺に當たりこそしなかったものの、コートの裾を掠かすって後ろの壁に小さな弾痕だんこんを創り出す。

「おい、いきなり何やってんだコラ」

「んー、いやなんかあの辺空間が揺らいでるというか、誰かいるっぽい?よく見えないや」

「ッ!おい、イドリス!目ぇ開け!」

「えー、だって疲れるしー」

「うるせえ!敵だろ!敵!明らかに來てんだろ!」

ぶ男にめんどくさそうな表をすると、イドリスと呼ばれた男は俺の方角を見て目を見開く。

瞬間放たれる閃、赤熱、衝撃。

目からビームとかギャグじゃねえか!

咄嗟に【世界介】で壁を生すると、通路を覆い隠すくらい大きくなったビームが生した壁にぶつかって、ガリガリと削っていく。

削れる度に新しく壁を生し続けること數十秒。

急速にビームは威力を落とし、消えていく。

「おお!凄い凄い、やるねえ!」

「そりゃどーも。あんたこそ半端ねえな。ネタ臭が」

「あはー、よく言われるー」

そう言ってイドリスはケラケラと笑う。

その時突然、俺の【知】に何かが引っかかる。

を反らせると、俺の顎があった位置に拳が打ち込まれる。

「チッ、躱されたか」

そう言った男は先程の場所からいてはいなかった。

ただ一つ違う點があるとすれば、その右の手首から先が消え去っていたことだけだろう。

男が腕を振ると、俺に打ち込まれた拳がスルスルと戻っていく。

「ビームにロケットパンチとか…。ネタ意識高いな」

「ネタとか言うな!そしてテメェ、どこの所屬だ?」

所屬か…。特にどこかに肩れしてるってわけでもないしなあ…。

俺がどう答えるか悩んでいると、突然男が「ふっ」と笑う。

「なるほど、お前を倒して口を割らせてみろってことか…。上等だ」

おおっと、なんか良い合に勘違いしてくれたぞ。

「イドリス!」

「はーい」

男が両手の拳を飛ばすと同時に、イドリスの両目から細いビームが大量に放たれる。

迫り來る拳を自分の拳で去なしつつ土魔法で生み出した石の塊をビームに當てて相殺する。

「おー、凄いね!君、うちに來なよ!」

「悪いけど無理だな」

「おい!何勧してんだ!」

「クロッドさんは黙っててよ。ね、君名前は?」

パチパチと拍手をしたイドリスが俺にそう尋ねる。

「シュウだ」

「そう、シュウ、か。それじゃ、墓標にはそう刻んでおいてあげるよ!」

「それは無理だな。こい【フラジール】」

俺がそう言うと、俺の影からズルリと眠たげな表を浮かべる半明のが現れ、浮遊する。

_フラジールは欠をして半分閉じた目で周囲を見渡す。

『あ、ご主人。どうしたの?』

「今何のために周り見たんだ。明らかに戦闘中だろ」

『あー、そっかー』

まとわりついてペタペタと俺の頬をフラジールはイドリスとクロッドに向き直る。

イドリス達は突然現れたフラジールを警戒しているようで、武を構えるだけで特になにかを仕掛けてくる様子はなかった。

「フラジール、やれるか?」

『後でごほーびちょーだいね』

フラジールはヘラっと笑うと、プカプカと浮きながらイドリス目掛けて移する。

それに気づいたイドリスが懐から取り出した銃でフラジールを撃つが、そのをすり抜けるだけで全く効果はなかった。

難なくイドリスの前にたどり著いたフラジールはその整った顔を悪辣な笑みに歪める。

『ちょっと借りるねー』

そう言うと、フラジールはイドリスに口付けをすると、そのままそのはイドリスの口にスルスルとっていく。

ビクンビクンと痙攣していたイドリスだったが、完全にフラジールがった數秒後に下を向いて沈黙してしまう。

「おい、イドリス大丈夫か?」

俯くイドリスの肩にクロッドが恐る恐るれると、バッとイドリスが顔を上にあげ、クロッドの顔を見るとニヤリと笑う。

パンッと乾いた音がして、クロッドが崩れ落ちる。

「な、なぜ…!」

「ククク…、アハハハハハ!」

ケタケタと狂ったように笑うイドリス、そしてイドリスは未だ白煙を上げる銃口を自の顳顬こめかみに當てると、その顔をフラジールと同じ悪辣な笑顔に歪ませるとこう言った。

「じゃあ、ありがとねー」

「待っ_」

クロッドが言い切るより早く、イドリスは引金を引いた。

乾いた音と共に床に赤い粘り気を帯びた塊が飛び散る。

ゴトリとそのを倒したイドリスの口から、先程の悪辣な笑顔とは違い眠たげな表に戻ったフラジールが出てくる。

「イドリス!」

「あれ…?クロッドさん…?あはは…私は何で寢てるんだい?…あれ?力がらない?」

「もういい!喋るな!」

「ふふっ、クロッドさんは泣き蟲だ_」

『そろそろいいかな?【ソウルイート】』

フラジールがスキルを発させると、イドリスのが一瞬での粒子に変わり、収束すると雫型の青白く揺らぐ塊へと変化する。

呆然とするクロッドの前でフラジールはそれを手に取ると_パクリと可らしく噛みちぎる。

ブチブチという繊維が千切れるような音と人の斷末魔のような聲がフラジールの咀嚼と共に周囲に響く。

最後の一欠片ひとかけらを、ヒョイと口の中に放り込んで飲み込むと、フラジールはペロリと舌なめずりをする。

『んん〜!やっぱり鮮度のいい魂の味は格別だよーっ。もう1人も食べちゃおーっと!』

「おいおい、あいつはまだ生かしておけよ。まだまだ使い道はあるからな」

『はぁーい』

殘念そうな表でちらりとクロッドを見てはヨダレを拭うフラジール。

本當にわかってるんだろうか。

そんな俺達の會話を聞いたクロッドはボロボロのを抱いて青ざめる。

「俺をどうするつもりだ」

「お前は知る必要はない。フラジール」

『りょーかーい』

クロッドの正面にフラジールが移するとクロッドは自の口を抑える。

そんな様子を見てフラジールは心底楽しそうに笑う。

『口開けないんだねー。じゃあ仕方ないや。痛いけど我慢してねー』

そう言ってフラジールは、その新雪のように白く細い指をクロッドの耳のれ、そこからに侵していく。

人間のにはいくつかの侵できるルートが存在する。

フラジールは基本的に口などから侵し、の吸収機能などを使って脳へと到達し、そのを支配する。

それがフラジール【悪意の霊魂マリス・ソウル】の特徴である。

元々フラジールは第52界層のボスで、當時は巨大なゴーレムなどに寄生して最終的に20人の聖リジェアッタ所屬の司祭団の【浄化】スキルでなんとか倒したのだった。

そして、そんなだが、吸収機能のない耳からの侵の場合、脳へと通じる迄にあるものへダメージを與えながら進むのだ。

結果として與えられるのは激痛。

その激痛にをよじらせてクロッドは悶絶する。

だが、それもすぐに収まる。

ふらりと立ち上がったクロッドの目には、支配が完了した証である小さな星が浮かび上がっていたのであった。

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