《Creation World Online》91話

痛む腹筋をさすりながら先日手にれたばかりの緑茶を飲んでいると、俺の影からエンリベルが姿を現わす。

『主様、調査に行っていたウィルが戻って參りました』

「そうか、ここに呼べるか?」

『そのように伝えておきます』

そう言い殘してエンリベルは部屋を後にする。

すると、俺の視界の端にメッセージ信のアイコンが現れる。

開いてみるとおっさんからのメッセージで、この間のお禮とのことだった。

それと、他のアジトで自分の部下が謎のモブに襲われたので気をつけるようにと注意されていた。

いや、まさかな?

俺は頭に浮かんだその考えを否定すると、扉が開かれる。

そちらを見てみると、赤褐のガタイのいい白髪に捻じ曲がった羊の様なツノが生えた青年が立っていた。

『マスター、今帰りました』

「ああ、おかえり。それでウィルどうだった?」

ウィルは俺の目の前で傅かしずくと淡々と報告を始める。

『ハッ、敵の総數は約3000。30人はマスターとエンリベル氏によって殺害および捕獲されています』

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「で、脅威になりそうなやつは?」

『ステータスで脅威になり得るものは3人程でしょうか。しかし、ステータスの隠蔽を行なっているものが數人居ました』

「そうか。ついでに聞くが、調査中に人を襲わなかったか?」

『姿を隠している者が數名いたので、殘念ながら仕留め損ないましたが』

やっぱりこいつか…。

俺が自の掌で目を覆うと、ウィルは心配した様に立ち上がる。

『ご気分が優れないのでは?おやすみになられますか?』

「いや、大丈夫だ。ご苦労だったな」

俺がそう言うとウィルは一禮して部屋から出て行く。

取り敢えずおっさんには謝罪のメッセージを送っとくか…。

その日の夜、俺とアンリそしてエンリベルはウィルが調査を行った中でも手練れが多く駐在している拠點が見下ろせる位置にある小高い丘の上に立っていた。

冷たい夜風が、俺のコートをはためかせる。

「うう、寒いですねえ」

「これでも著とけ」

寒そうにそのこまらせるアンリ。

そんなアンリに自分のコートを放り投げると、した様にアンリがこちらを見る。

「シュウ君…!自分のを犠牲にしてくれるなんて…!でも、これは返します。シュウ君が寒いでしょう?」

「いや、大丈夫。もっと良いやつがあるから」

新しく防寒機能が高いコートを取り出すと、アンリに肩を毆られて奪い取られる。

アンリは俺が渡したコートを投げ返すと、奪い取ったコートを著る。

ちくしょう、理不盡だ。

「さてと…そろそろか。アンリやるぞ」

「了解です。シュウ君、手を。【共化】」

アンリがそう唱えると、アンリの目からオーラが溢れ出す。

俺も首から緑の揺らぎが溢れているのがわかった。

サッとアンリが杖を振ると、數百の魔法陣が現れ重なり合う。

そして収すると、急速にそのを失いその場には真っ黒に変した魔法陣が浮かぶだけとなった。

「さ、次に行きますよ」

「ああ、エンリベル」

『承知致しました【黒転移】』

ズプリとが足元の影に飲み込まれると、次の瞬間には周囲の風景が変化していた。

先程は城の正面から見るような位置に居たのに、今はその城を側面から見ていた。

アンリはその場で魔法陣を展開、収、そしてまた転移と合計4回それを繰り返すと、最初の位置へと戻る。

「それじゃ、やりましょう【一斉起ハロー・ワールド】」

そう呟くと、4方向にある魔法陣が一瞬煌めき大気を震わせながら橙の業火を放つ。

そして、その中心。ちょうど差する位置にある城に直撃すると、大発を起こす。

風と熱波がかなり離れた位置にいる俺達にも屆き、風魔法を展開して軽減させたにも関わらず、バタバタとコートの裾をはためかせる。

炎が晴れると、そこには所々破損し、周囲に燃え移らせながらもしっかりと建っている城があった。

だが、例え城が無事でも中はどうだろうな?

「さあ、攻略開始だ」

ニヤリと笑ってフードを目深に被ると俺達は、城目掛けて疾走するのであった。

城の近くの巖を隠すと【盜賊王の眼晶】を起する。

暗視とスコープ機能、それに【世界介】の視機能のおで城の部がよく見えた。

どうやら先程の魔法攻撃によって大量の死傷者が出たようだな。

狀態異常を治す薬が足りなくて、回復職ヒーラーが走り回ってやがる。

これで相手の回復機能も衰えただろうし、今のに叩くか。

城門や、バルコニーなどこちらを見ているプレイヤーがいない事を確認すると、ハンドサインで突撃という合図を出し、音を立てないように素早く移する。

スルリと城に侵すると、近くにあった部屋にり込む。

「よし、今回の作戦の確認だが。相手の殲滅せんめつおよび捕縛な。このリストにあるやつを最優先で排除するぞ」

バサリと三枚の書類を広げる。

そこには3人のプレイヤーの名前と顔寫真が載っていた。

1人目は筋骨隆々の男プレイヤーで名を【威刃羅イバラ】といった。

2人目はしいプレイヤーで、名を【ローゼ】といった。

3人目は眼鏡を掛けた胡散臭い笑みを浮かべる男、名を【クレート】といって、以前アルカトラで【カメレオン】と名乗った男だった。

「3人で各個撃破ってのが理想的だがそうはいかないだろうな。取り敢えず手當たり次第敵の回復職ヒーラーを削るぞ」

「了解です!」

『お任せあれ』

俺達は互いに顔を見合わせると、コクリと頷く。

「くそッ!ヒーラーは何をしてるんダ!」

苛立ったように眼鏡をかけた男_クレートが近くに落ちていた木箱を蹴り飛ばす。

木箱は壁に寄りかかっていた筋骨隆々の男目掛けて飛んでいくが、男はその節だらけの掌でやすやすとそれをけ止めると溜息を吐く。

「隊長殿よ、し落ち著け。苛立ったところで事態は好転すまいて」

「…フン。わかってるヨ」

拗ねるようにクレートがそう吐き捨てると、やれやれと男_威刃羅は溜息を吐く。

その時、突然空間が揺らぎそこからスタイルのいいが現れる。

「はぁい、隊長。ご機嫌斜めね?」

「君はうるさいネ、ローゼ。いいから早く報告するんダ」

「もうっ、せっかちな男は嫌われるわよっ」

ローゼが艶っぽくそう言うとクレートは不機嫌そうに鼻を鳴らす。

「そうねえ、敵は3人【鬼畜】と骨のモンスター、そして…『』」

「ほう?それは誠かや?」

威刃羅がニヤリとその顔を兇暴な笑みの形に歪めると、その手に持っていた木箱がみしりと音を立てて砕け散る。

「もう、威刃羅ってば興しすぎっ。そして、今彼等は侵して負傷した団員や回復職を捕獲して回っているわ」

「なるほどネ。それなら我々も行するだけだヨ」

「それならば我は【鬼畜】を貰うぞや。プレイヤー最強がどの程度か見てやろうぞ」

グフフと笑いながら威刃羅が部屋から出て行く。

「まったく、威刃羅には困ったものだヨ」

「そうねえ…。ねえ、隊長。私『』の方へ向かってもいいかしら?」

「理由を教えてもらおうカ」

クレートの問い掛けにローゼは澱よどんだ笑みを浮かべる。

「私、可い子って嫌いなの」

そう言い殘すと、ローゼが現れた時と同様に空間が揺らぎその姿を搔き消す。

1人部屋に殘されたクレートは、自の機の引き出しから黒塗りのナイフを取り出す。

「ま、使うことはないだろうけど念のためにネ」

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