《Creation World Online》95話
「これで最後か…」
古びた羊皮紙にマーカーで線を引きながら、俺は呟く。
そこには、現在敵対している組織である【Slaughter Works】の拠點の名前が書かれており、その全てがマーカーで塗り潰されていた。
數日前、幹部であるクレートを含む3人を捕獲し一気に殲滅を図ったのだが、全拠點を制圧捕獲しても構員の數が足りず、アキラを含めた數人の幹部と研究者、そして今のところ謎に包まれている組織のリーダーが見つかっていないのだ。
すると、俺の視界に通話を知らせるウインドウが表示される。
「もしもし、俺だ。今、制圧が終わった」
『ん、お疲れ様』
通話の相手は、現在屋敷で報収集を行ってもらっているナクだった。
「それでどうしたんだ?」
『新しい報がるかもしれない。すぐ帰ってきて』
それだけ伝えると、通話が切れてしまう。せっかちなやつだ。
☆
「ただーいまー」
『お帰りなさいませ、マスター』
「ああ、ただいま。ウィル」
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恭しく頭を下げる白髪のこのの妙に気品のある男は、ウィル。
フルネームは、ウィルハート・ヘル・バッツというらしい。
種族は悪魔侯デモンズロードで、頭から生えている二本の羊のような曲がった角が特徴的だ。
ボスとして戦っときは、悪魔としての姿だったのだが、その姿はいわゆるバフォメットと呼ばれる悪魔にそっくりで、おそらくそれがモデルなのではないかと推測される。
また、悪魔の貴族で魔神に仕えていた、という設定のおかげかある程度のことはなんでもこなせる上に、呑み込みが早い。
戦闘面、生活面共に能力が高いため、よく仕事を任せたりしているのだ。
『あの、どうかされましたか?』
「いや、お前は優秀だなと思ってな。ナクは地下か?」
『ええ、地下に居ます。呼びますか?』
「いや、いいよ。何か甘いものでも用意しといてくれ」
『かしこまりました』
心なし嬉しそうなウィルの背中を見送って、俺は地下室へと移する。
二階に上がり、書斎の絵の裏にあるひねりを右に回すと、本棚が橫にスライドし、そこにぽっかりと狹い空間が現れる。
その真ん中にある魔法陣に足を踏みれると、景が歪む。
歪みが治るとそこは、先程の書斎ではなく、暗くジメジメとした地下室だった。
明らかに上に上がって転移するなんて非効率的だというのはわかっているのだが、こればかりはロマンなのだ、仕方がない。
転移先にある數ない部屋の1つ、ナクの研究室である調薬室の扉を開く。
「よ、ナク。お疲れさん」
「おかえりシュウ。これ見て」
白を著たナクが、小瓶にった妙に禍々しいオーラを放つ錠剤と白い普通の錠剤を見せてくる。
「これは?」
「自白剤と解呪剤」
「おおっと、どストレートだな」
報がるかも、じゃなくて絶対手にれるってやつじゃん。
それになんで自白剤とセットで、解呪アイテムが付いてくるんだよ。
「これ絶対呪いのアイテムだよな?」
「最近功作品ができた、この薬での死亡例は今のところ無い。ただ、ちょっと痛くなる。的に言うと先っぽが」
なるほどね、スルーか。というか、先っぽが痛むって間違いなくアレのことだろうけど、そこは敢えてスルーしような。うん。
「この薬品の完のおで、例のアレの研究もし進んだ」
「そうか、引き続き頼むぞ。それじゃ、これは貰ってく」
「ん、頑張る」
軽く拳を握った後、直ぐにディスプレイを作しながら作業を始めないナクを見て、すっかり研究バカになってしまったな、と思いながら俺は地下に存在する牢屋の1つにる。
そこには─
「よ、元気か?」
「これが元気に見えるならお前は異常だヨ」
「ですよねー」
ボロボロの姿に、カサカサになったの男【Slaughter Works】の幹部であり、変能力の持ち主であるクレートが鎖に繋がれて、そこに居た。
「それで、今日は何の用ダ?」
「いくつか質問が有ってね、お前らの拠點ってここに書いてあるやつで全部なわけ?」
マーカーで塗り潰された羊皮紙を取り出すと、クレートの目の前広げて見せる。
すると、クレートはぺっと唾を吐き出してこう言った。
「簡単に口を割ると思うカ?」
「そうか、殘念だ」
羊皮紙をアイテムボックスにしまうと、懐からナクに貰った自白剤を取り出す。
「おい、なんだヨ」
「定番だろ?自白剤ってやつだよ。なに、心配するなこの薬での死者は居ないらしいぞ」
「噓つケ!明らかに呪いのアイテムだロ!?」
「俺もそれはすごく思う」
でも鑑定の結果だと、呪いのデバフを與えられるようなアイテムじゃなさそうなんだよな。というか、効果がまず無い。
テキストはあるんだが『自白剤』とかいう、本當にシステム上つけないといけないから書いた、みたいな製作者の適當な気持ちがよくわかるメッセージだしな。
「大丈夫だろ。解呪剤もあるし…」
「ちくしょウ!呪いのアイテム確定じゃねえカ!」
あ、しまった。
呪いのアイテムだとわかったせいでクレートは警戒してしまった。
こういう時は、小粋なジョークで場を和ませろとおっさんが言っていたのを思い出す。
アイテムボックスから錬金の道である、ビーカーと斗を取り出すと、俺は無言でビーカーの中にザラザラと錠剤を流し込んでいく。
「おイ!待て!何をやって─モガッ!?」
「はい、飲んで飲んで飲んで、飲んで。クレートの〜、ちょっといいとこ見てみたい!」
「ちょ─やめ─!」
嫌がるクレートの口の中に斗の先端を突っ込むと、コールと共に錠剤を流し込む。
そういえば、これ1回の服用量ってどのくらいなんだろう。
気になった俺は、瓶にられた手書きの説明書を見ると、目を逸らした。
『注意!1回の服用は3錠までにしてください。先っぽがもげるほど痛くなります。後癥は殘りません(多分)』
よし、俺は何も見ていない。
説明書を破ると、初級火魔法【ファイア】で灰に変える。
そうこうしているうちにクレートが錠剤を全部飲み込んだようだった。
「お味は?」
「納得がいかなイ…!なんでこれでイチゴ味なんダ…!」
どうやらあの禍々しい錠剤はイチゴ味だったようだ、見た目と味のギャップに納得がいかない様子のクレートが、突然黙る。
「どうした?」
「!?痛ァ!?先っぽが痛─もげるもげるもげる!!」
間を抑えようとして、拘束された鎖をガシャンガシャンと鳴らして悶絶するクレート。
何あれ怖い!これ相手に自白させんの俺!
「じ、報をくれたら解呪剤を─」
「言ウ!言うかラ!どうにかしてくレ!」
食い気味に答えるクレートの絶が地下に響き渡った。
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