《VRMMO生活は思ってたよりもおもしろい》22.従弟との対面(現実)

ログアウトした僕は、ばあちゃんとじいちゃんに、叔母さんと會ったことを伝えた。

「そう、菜々子に會ったの。菜々子ったらこの前、龍ちゃんがこの3年間全然來てくれないって泣きべそ掻きながら電話してきたのよ? だから龍ちゃんがやってるゲームの話をしたの」

「へ、へぇ~、そうなんだ……」

やっぱり、そんな様子を聞くと、叔母さんじゃなくてお姉さんの方がしっくりくるな……。

「でもさっき、夏休みに必ず行くって言っておいたから、その時行ってくるよ」

「夏休みだと、あの子達も行くことになりそうね」

「ちゃんとそれも伝えてあるから大丈夫だよ」

「そう、なら安心ね」

ばあちゃんとそんなやり取りをしていると、じいちゃんが不機嫌そうにしながら、こんなことを聞いてきた。

「龍、敏行の話は聞いたか?」

敏行というのは、叔母さんの旦那さん、つまりは僕の叔父さんだ。そして実は、じいちゃんは叔父さんのことを嫌いしている。

何故嫌いしているのかと言うと、叔父さんが叔母さんと結婚した経緯が問題で、所謂いわゆるできちゃった婚だったのだ。

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しかも、反対するじいちゃんを押しきって結婚しちゃって、それがまたじいちゃんの叔父さんに対する嫌いを増長させた訳だ。

なので、そんな質問をしてくるとは思わなかった。

「えっと、今日は叔母さんに言われて馬車馬のように働かされてるらしいよ。叔母さんがゲームの中でお店をやってるから」

僕がそう言うと、じいちゃんはフンッと鼻を鳴らしながら「そのくらいするのは當然だ」と言った。

「ねぇ、いつまでに持ってるの? そろそろ4年だよ?」

僕がそう言うと、じいちゃんは「いや……」と呟いてからダンッと機を叩きながらこう言った。

「年數は関係ない! 事後承諾だったのが気に喰わん! しかも、産まれた子どもすら見せに來ないんだぞ!?」

「そうは言っても、もう過ぎたことじゃないですか。許してあげたらどうですか?」

「いいや許さん。敏行より余程、晃佑君の方が弁えていた!」

晃佑というのは僕の父さんで、父さんはじいちゃんと酒で飲み明かすぐらい仲が良かったらしい。まぁ、ばあちゃんから聞いた僕が産まれる前の話だけど。

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結局、じいちゃんは斷固として許そうとしなかった。

叔母さんの話、しなければ良かったかな。それか、ばあちゃんだけに伝えるべきだったかな……。まあ、今更だけど。

あっ、そうだ、良いこと思いついた!

「じゃあさ、今度じいちゃんも叔母さんのお店行こうよ。働いてる姿を見たら気が変わるかもよ?」

「良いわね、ナイスアイデアよ! 龍ちゃん!」

ばあちゃんが両手の親指をグッと立てながらそう言った。

じいちゃんはというと、不満そうにしながらもし笑みを浮かべながらこう答えた。

「せっかく龍が考えてくれたんだ。行って、隅から隅まで敏行の働いているところを見てやろう」

とことん僕に甘いのか、今はそんなに叔父さんのことを嫌いしていないのか……。ともかく、これで許してあげてくれると良いんだけど……。

◆◇◆◇◆

そして、夏休みの前の土曜日、ばあちゃんとじいちゃんと共に、叔母さんの店へ行くことになった。

夏休み前なのは、速人達が居ない時の方が良いと思ったからだ。家族の事だから。

加えて、今回の作戦は叔母さんには伝えてあるので、叔母さんは所謂、部協力者だ。

お店にると、叔母さんが「いらっしゃいませ、3名様ですね。席へご案します」と他の人と変わらない接し方で席へ案してくれた。

もちろん、叔父さんのことがよく見える席へ。

注文するのは、僕はもちろんオムライス、ばあちゃんはスパゲッティ、じいちゃんはカルボナーラを注文した。

注文した品が來るまでの間、じいちゃんはずぅーっと、腕を組ながらジーッと叔父さんの働きぶりを観察していた。

その間僕は、ばあちゃんと他ない話をしながら、注文の品が來るのを待った。

しばらくすると全員の品が來て食べ終えると、じいちゃんが叔母さんに「敏行を連れてこい」と言った。

そして、廚房から出てきた叔父さんがじいちゃんを見ると、顔が真っ青になりあわあわし出した。

「え、あの、お、お義父さん。い、いらっしゃいませ」

叔父さん、落ち著いて! 凄くどもってるよ!

叔父さんが挨拶をすると、じいちゃんが叔父さんとは目を合わせていないけど名前を呼んだ。

「敏行」

「は、はいッ!!」

呼ばれたことに驚いて聲が裏返る叔父さん。じいちゃんは、気にせずこう言った。

味しかった。また來る」

そんなことを言われると思っていなかった叔父さんは、し目をパチパチさせた後、深々とお辭儀をしながら元気よくお禮を言った。

「あ、ありがとうございますッ!」

他のお客さんが居るんだけど……。まぁ、その嬉しさはわかるけどね。

叔父さんのお禮の後、じいちゃんが至極真っ當な事を言った。

「それでだ。赤ん坊はいつ見せに來るんだ? 儂に見せなくとも、せめて彌生さんと龍に見せるのが筋だろう。何故4年も見せに來ないんだ?」

「すみません、お店が忙しくて、伺うことが出來ませんでした」

この店人気だもんね。なお、それを聞いたじいちゃんは、アイコンタクトで叔母さんに事実か聞くも、事実らしかったので咎めなかった模様。

「でも、確かにいとこだから、見てみたい気はする」

「私も、龍ちゃんに次ぐ二人目の孫を見てみたいわ」

「じゃあ今連れてきます」

僕とばあちゃんがそう言うと、叔父さんが速歩きで奧へっていった。

待ってる間に他のお客さんに僕が、「お騒がせしてすみません」と、ペコペコ頭を下げながら謝った。

それからし経って叔父さんが男の子を連れてきた。

「この子が息子で、名前は龍二です。字は龍君の龍に漢數字の二です。ほら、龍二、右側に座ってるのがおじいちゃんとおばあちゃんだぞ」

僕の次だから龍二? それはともかく、そう叔父さんに紹介されて、自分で指を指しながら(人を指さすのは良くないけど)ちゃんと「ばあばとじいじ」と言う龍二。男の子だけど、天使だ。可すぎる。

「それから、左側に座ってるのが龍お兄さんだぞ」

僕のことはなんと呼んでくれるのかな? と思ったいたら、座っている僕の足に抱きついてきた。

「どうしたの? 龍二くん」

僕がそう聞くと、抱きついたまま顔を上げてこう言った。

「りゅうにいちゃん、チャンバラしよ」

な、なんですと!? 初対面だよね? どうなってんの? そう思って叔父さんに聞いてみると、こう答えた。

「いやぁ、龍二はチャンバラが好きでいつも僕とやるんだけど、大僕が負けるから『お父さん弱くてつまらない』って言い始めたんだよ。それで、龍お兄さんはお父さんよりもチャンバラが強いんだよって言ったら、會ったら絶対戦うって言って會えるのを楽しみにしてたんだ。だから、戦ってあげてくれないかな」

「まぁ、そのくらいならお安いご用です」

「ありがとう」

思わぬ形で、僕と龍二くんの一騎討ちが決まった。

それからオムライスを高速で食べ終えた僕は、叔母さんに言われて龍二くんと共に外へ出た。

は、プラスチックで出來た刀で、戦場は店の広い駐車場の車の無い安全な場所だ。

そして、龍二くんと対峙すると龍二くんが聲を張り上げて戦國武將がするような名乗りをあげた。

「われこそは、りゅうじなり、うでにおぼえのものよ、てあわせねがう!」

本當に4歳なのか!? そんな難しい言葉をスラスラと……龍二くん、恐ろしい子……!

しかも、こんな人通りの多い道の近くで大聲で言うなんて、4歳児って凄い……! 僕はというか、大の人は出來ないと思う。

なので、僕はやらない。というか、やりたくないので、適當に「かかってこい」とだけ言った。

すると、龍二くんがトテトテと刀を振り上げながら僕に向かって走ってきた。チャンバラだから振り方は滅茶苦茶だけど、それなりに強い打ちだった。

すぐ終わらせるのは大人げないので、しばらくは防ぐことにした。ただ、龍二くんの背との差があって防ぎにくいのが難點。

しばらく防いだ後、龍二くんの頭に僕の刀をポンッと當てて僕の勝ちとなった。すると、龍二くんは悔しくて泣くかと思いきや目をキラキラさせながらこう言ってきた。

「りゅうにいちゃんすごいね! パパはいつもいちげきでやられるのに!」

叔父さん、それはちょっと、弱すぎです……。そりゃつまらなくなりますよ。チャンバラ以前の問題ですから。

「そ、そうなんだ……。龍二くんは、大きくなったら何になりたいの?」

「う~んとね、りゅうにいちゃんみたいに、つよくなりたい!」

「どうして僕みたいに強くなりたいの?」

「だって、りゅうにいちゃんって、とうきょうでいちばんつよいんでしょ?」

それは、剣道で高校生だったらっていう條件付きでの話なんだけどね……。だけど、そっか、そんなこと言うなんて男の子だなぁ、龍二くんは。

「ねぇ、どうやったらそんなにつよくなれるの?」

「え、あ、う~ん……。龍二くんは、剣道って知ってるかな?」

「うん! りゅうにいちゃんがやってるやつだよね!」

なんだ、知ってたのか。なら話は早い。

「だったら、剣道を習うと良いよ。僕も習ってるから教えられるし」

僕がそう言うと、龍二くんが走って店の中へ戻っていった。追いかけて店へると、ばあちゃん達と喋っている叔父さんと叔母さんに「りゅうにいちゃんがやってるけんどうならいたい!」と頼んでいた。

「龍君、どういうこと?」

「どうやったら僕みたいに強くなれるのって聞かれたので、剣道習ったら? って言ってみただけです」

「あぁ、なるほどね。龍くんもやってるから龍くんが暇な時に教えてもらえるもんね」

「ねぇ~いいでしょ~?」

叔父さんと叔母さんのズボンをグイグイ引っ張りながら頼み込む龍二くん。そんな龍二くんに叔母さんがしゃがんで質問をした。

「途中でやめない?」

「やめない!」

「逃げ出さない?」

「にげださない!」

「弱音は?」

「はかない!」

なんですかそれ……? そう思うも、言わないでおいた。意志確認なのはわかってる。ただ、変わった意志確認の方法だなぁと思っただけ。

し間があって、叔母さんは一つため息をついた後、龍二くんにこう言った。

「わかった。やって良いわよ。その代わり、途中でやめないこと。逃げ出さないこと。弱音を吐かないこと。それから、龍お兄さんを倒せるくらい強くなること。わかった?」

「うん! りゅうにいちゃんよりつよくなる!」

それはさすがに、自分で言うのもアレだけど、ハードルが高過ぎな気がする。だって、僕がここまでになったのは、小さい頃から父さんにしごかれたからなんだけど……。

アレは地獄だった。まだ龍二くんと同じ年の頃、父さんと稽古してた時に言われたのが、「どうした、こんなのも避けるのも防ぐことも出來んのか! そんなんじゃ強くなれんぞ!」だった。

ゆっくりだったならあの頃の僕でも避けるなり防ぐなりは出來てた。父さん以外なら……。そう、父さんは相手が4歳児だろうが構わず全力の打ちをしてくる、キチガイだったのだ。

そんなもんを4歳児の僕がどうやって避けたり防いだりすれば良いんだ! という理不盡をじたことを今でも覚えている。今思い出しても、よくあんな稽古耐えられたなと思う。それくらいヤバかった。

「龍ちゃんに教えてほしいときは家に來なさい。家の庭なら存分に出來るから」

「そうだな。龍、責任を持ってちゃんと教えてやるんだぞ」

「わかってるよ」

僕が答えると、叔父さんと叔母さんがこう言った。

「剣道やると決まったことだし、早速竹刀とか防とか揃えないと!」

「でも私達じゃよく分からないから龍くん、今から一緒に買いに行ってくれない?」

デスヨネ~。まぁ、僕しか分からないから行くけども……って、今から!? まぁ、面だけは今すぐ買えるものでもないから、今注文しておいて損は無いけど……。

それに、斷る理由が無いので、了承した。

「あ、はい、行きます」

「やったぁ! りゅうにいちゃんとおかいもの!」

そう言いながら僕の足に抱きつく龍二くん。

お買いって言っても、買うものが買うものだから、お買いって言って良いものなのか……。でも、本當に初対面なのに、こんなに喜んでくれるのは非常に嬉しい。

今まで會ってなかったのにこんなに慕ってくれるなんて、龍二くん超良い子だなぁ……。

ばあちゃんとじいちゃんに許可をもらい、叔母さんから五萬円の資金をけ取り、いざ、お買いをしに剣道の防屋さんへ!

◆◇◆◇◆

龍二くんと共に、僕の行き付けの剣道の防屋さんに著き中へると、店長の林田さんが気づいてやって來た。

「やぁ、いらっしゃい、龍君。今日はどういったご用件?」

「こんにちは、林田さん。今日は、この子の防一式やら竹刀やらを買いに」

「こ、こんにちは!」

龍二くんが挨拶をすると、林田さんは龍二くんの頭をでた。

「はい、こんにちは。もしかして、龍君のおとう……」

「いえ、従弟です」

「否定が早いよ!? 最後まで言わせてくれよ!」

「そんなことより、この子のサイズに合った大きさの防をお願いします」

「はいはい。じゃあえっと……名前は?」

「りゅうじです」

「そうか、じゃあ龍二君。ちょっとおいで」

そう言って林田さんは、不安そうな龍二くんの手を引いて店の奧へと連れていった。

ただ面を作るために必要な顔の骨格の長さを測るだけなので、僕は店に置かれている防や竹刀等を見ながら待つことにした。

竹刀を試し振りしていると、林田さんと龍二くんが戻ってきた。

「相変わらず、龍君の振りは速くて真っ直ぐだね。さすがは大會で三連覇しただけはある」

「おだてないでくださいよ」

「すまない。それで、面の方はし大きめにしておいたよ。育ち盛りだからね。それと、これが龍二君の防と竹刀と鍔と鍔止め、それから白の著と紺の袴で34,675円ね」

こんなもんだっけ? まぁ、足りるから良いか。予算五萬円だし。

會計を済ませた僕は、林田さんから面は一週間後に取りに來るようにということを聞いたので、叔母さんのお店に戻ることにした。

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