《VRMMO生活は思ってたよりもおもしろい》23.無心道場
叔母さんのお店に戻った僕は、買ってきたと殘金と龍二くんを返上して、叔母さんに一週間後に面が出來ることを伝えた。
「そうなのね、ありがとう、龍くん」
「いえ、龍二くんとたくさん喋ることが出來たので良かったです」
「ぼくも、りゅうにいちゃんとおはなしできてたのしかった!」
「ありがとう」
そう言いながら僕は龍二くんの頭をでた。
いや本當に龍二くん、凄く良い子なんですけど……! 叔母さんからどんな教育をけたらこんな風になるんだ、っていうくらい良い子。
「なぁ龍君」
「なんですか、叔父さん」
「道場に通わせるとして、どこの道場が良いかな?」
「そうですね……。この辺で強い道場と言ったら無心道場ですね。確か、大會の決勝で當たった丹紫君が無心道場だったと思います」
「その子ってもしかして、龍くんの彼のお兄さん?」
「あぁ、まぁ、そうですけど?」
叔母さんにそう聞かれて、僕は恥ずかしさで聲を細めながら答えた。
すると、叔父さんがこう言ってきた。
「じゃあそこにしよう。龍くんから無心道場に連絡してくれないかな?」
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えっ、また僕!? う~ん、まぁ、良いけども……。分からないからって僕に全部押し付けるのは筋違いだと思う。
「あぁ、まぁ、良いですけど、こういうのは直接行って話すのが良いと思いますよ?」
「じゃあ、龍二を連れて行ってきてくれないかな? 僕も菜々子もお店があるからさ」
うぇ~、やっぱり僕が行くのか……。提案した意味無し。
「それは、今からですか?」
「出來れば」
そう言われた僕は、取り敢えずばあちゃんとじいちゃんに許可をもらい、それから龍二くんと一緒に外に出てから、桃香に電話をした。
『は、はい! もしもし!』
「あ、桃香? 今、時間大丈夫?」
『大丈夫です! 大丈夫じゃなくても無理やり時間作ります!』
「……」
『り、龍さん?』
「あ、あぁ、ごめんごめん。今って、お義兄さん居る?」
『兄さんですか? 兄さんなら道場に行ってますけど、それがどうかしたんですか?』
「ならちょうど良い。今から、その道場に行って従弟をれてもらおうと思ってるんだ」
『えっ!? 従弟ですか!? 會ってみたいです! 私も一緒に行っても良いですか?』
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「へっ?」
『ダメ、ですか?』
か細い聲でそう聞かれた。くっ……そんな聞かれ方したら、OKしないわけがないじゃないか! 「へっ?」って言ったのは、一緒に行きたいと言われると思わなかったから驚いただけ。
「ダメなわけないよ。一緒に行こう」
『はい! ところで、今どこに居るんですか?』
「叔母さんのお店」
『なっ!? 抜け駆けしたんですか!?』
「いやいや、違うよ。実はさ……」
そう言って、何故僕が今叔母さんのお店に居るのかと従弟が剣道を始めるに至った事の一部始終を説明すると、桃香は『そういうことなら仕方ないですね』と言って許してくれた。
『それじゃあ、私が車で迎えに行くので、そこで待っててくださいね』
「あ、うん、わかった」
そこで會話が終了した。桃香が車……ってことは……嫌・な・予・・がする。
その予想は的中し、しばらくすると黒いリムジンが駐車場に颯爽さっそうとってきた。
それを見た龍二くんが、目をキラキラさせながらんだ。
「すごいよりゅうにいちゃん! りむじんだよりむじん! おかねもちのひとがのるりむじんだよ!」
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リムジンをご存知とは、龍二くんは知りだ。その上、リムジンはお金持ちの人が乗るということをちゃんと理解している。……本當にどんな教育をけてるんだ?
「そうだね、リムジンだね」
取り敢えず龍二くんの言葉に適當に相槌を打っていると、リムジンから桃香が降りて僕目掛けて走ってきた。
「ねぇ、桃香? アレって、リムジンだよね?」
「そうですよ?」
「僕には不釣り合いだと思うんだけど」
「そんなことないですよ、龍さんに似合わないものなんてありませんから!」
それはない。絶対無い。心の底から否定する。自分で自信を持って似合うと言えるのは、和服だけ。洋服は、コーディネートを考えれて著れば、似合わないこともない。まぁ、考えたこと無いから単純なコーディネートばかりなんだけどね。
「それより、道場へ行こうか。稽古が終わっちゃうといけないし」
「そうですね、じゃあ二人とも、乗ってください」
桃香にそう言われて、僕と龍二くんはリムジンに乗った。中は広くて、10人は余裕で乗れそうなじだった。
リムジンに揺られること30分、無心道場に到著した僕達は、道場の中へった。
中では、20人くらいの人達が大きな掛け聲を出しながら稽古に勵んでいた。
そんな人達の傍らには、椅子に腕と足を組んで稽古をしている人達に罵聲を浴びせながら座っている中年男が居た。
その人がこちらに気づき、こちらにやって來た。
「桃香さんじゃないか、まだ終わる時間じゃないんだがどうかしたか……って、うちのエース丹紫君を決勝で三回も破った猿渡龍君じゃないか! どうしてここに?」
嫌われてるのかな……。し落ち込みつつ、ここへ來た目的を言った。
「えっと、この子をれてもらえないかと思いまして」
そう言いながら傍らに居る龍二くんに目をやる。
「もちろんだ。それより、しだけあいつらを見てやってくないか? その間、この子に剣道について教えてやるから」
「は、はぁ、良いですよ」
「おお、そうか、じゃ頼むよ! おい、お前ら、よく聞け! 今から猿渡龍君に稽古を見てもらうからちゃんと言うこと聞けよ! その間、俺は新生を教えるから、サボるなよ?」
『はい!!』
わぁ良い返事……。理由も聞かずに了承しちゃったけど、本當に僕が教えても良かったんだろうか……? 頼まれたからにはやるけど。
そんなことを思っていると、見覚えのある剣道姿の人が一人こちらにやって來た。
「おい、なんでお前がここにいる?」
「なんでって、たった今、先生に連れていかれた従弟をこの道場にれてもらおうと思って來たんですけど」
「兄さん聞いて、龍さんの従弟、龍二くんって言うんだけどね、禮儀正しくて良い子なんだよ!」
「そ、そうなのか……まぁ、龍の従弟なら禮儀正しくて當然だろう」
あれ? 今、僕のこと名前で呼んでくれたような……。
「それで、何を教えてくれるんだ?」
「えっ? あぁ、えっと、今は何をしてたんですか?」
「今は、掛かり稽古を一時間前からやってるな」
「技的なことはしないんですか?」
「技的なことはしないな。振り方が良くて力があれば速さで勝負出來る。と、先生が言っていた」
だからあんなに打ちが速いのか。それで今まで東京都の道場で一番を維持し続けてるのか……凄いな……。
「じゃあ、その速さを見せてほしいので、僕が元立ちしますから全力で打ってきてください」
「龍さん!? それは危ないですよ! 生はダメです!」
「そうだぞ、いくら龍でも無理だ。やめておけ」
心配する二人に大丈夫だと伝え、一番最初にやりたい人と聞くと真っ先に手を上げた人が居た。
その子は、桃香と同じくらいの背で珍しいことに竹刀以外の全て白だった。面・著・袴・小手・・垂れ・各種紐に至るまで、全て白だった。
「えっと、白の君、名前は?」
「橋本津笠つかさです」
「津笠君ね。じゃあ全力で掛かり稽古の要領で打ってきて」
「わかりました」
僕は竹刀を借りて津笠君と対峙した。僕が「どうぞ」と言うと、津笠君の竹刀が一瞬消えたように見えたと思ったら僕の頭の上まで來ていた。
なるほど、速さね。そう思いながらギリギリのところで竹刀で防いだ。
周りは「おお!」とか「津笠のあれを生で防ぐとかやっぱすげぇな!」とかガヤガヤしていた。
その言い方からして、津笠君の速さはこの道場の中で相當速いのかな?
そんなことを思っていると、津笠君が今度は小手を打ってきた。これも結構速くて、一瞬消えたように見えたけど防ぐことは出來た。
打たれては防ぎ、打たれては防ぎを繰り返しながら僕は津笠に話し掛けた。
「津笠君、速いね」
「全部防いでるのによくそんなことを言えますね」
「いやいや、結構ギリギリだよ? 振り上げるとき消えたように見えるから」
「じゃあなんで防げるんですか?」
「長年の勘ってやつだよ。剣道始めて13年だからね。相手がどこを打ってくるかは大わかるよ」
あれ? 自分で言っててツッコミたくなったぞ? 長年って言うほど年取ってないだろって言いたくなったぞ?
「長年って言うほど年取ってないだろ!」
そうツッコミをれてくれたのはお義兄さんだった。代わりに言ってくれるとは、さすがお義兄さん。
「でも勘って、皆が皆獲得出來るものじゃないですよね?」
津笠君が打ちながらそう聞いてきた。さっきから結構な速さで打ちっぱなしなのに、よく喋れるなぁ。さすが無心道場の門下生。
「まぁ、気持ちの持ちようだと思うよ。稽古の時、如何に相手がどこに打ってくるかのやまをはる事を意識してやるかによって、勘が當たる確率に差が出來ると思うから」
まぁ、これは僕の持論なんだけどね。ただ、無心道場の皆には心に響いたようで、「なるほど」とか「これからそうしようかな」とか言っていた。
それから津笠君の打ち込みを一段落つけて、次の人に替わってもらった。そして、打ち込みを18人続けた。ちゃんと、細々こまごました癖なんかを一人一人に教えながら。
というか、全員津笠君よりはし遅いけど、普通の人よりはかなり打ちが速かった。
そして、全員の打ち込みが終わると先生が龍二くんを連れてやって來た。
「龍君、そのくらいで良い。今日はありがとう。急な頼みを聞いてもらって」
「いえ、僕の稽古にもなったので、やって良かったです」
「そうか、そう言ってもらえると助かる」
先生がしホッとした表をした。でも僕は聞きたいことが有ったので、聞いてみた。
「あの、失禮ですけど、先生は技的なことは教えられないんですか?」
「いや、教えられるぞ? これでも六段だからな」
まぁ、六段なら教えられなければ六段を持ってる意味がない、と僕は思う。
「じゃあ何故教えないんですか? もしかして、若いは速さで勝負させて技的なことは年を食って速くくことに限界が來てからとか考えてたりしますか?」
「あ、あぁ、そうだが?」
それが良くないんだよな……。だから僕に負けることになったんだと思う。
なので、僕は今日元立ちをしていて思うところが有ったので、先生に言いたいことを言った。
「やり方に文句をつけるつもりは無いですけど、言わせてください。早くからやるからにに付くんです。自分で言うのも難ですけど、僕が良い例です。4歳から剣道を始めて、父に技的なことを全て仕込まれました。だからこそ、丹紫君に大會で三回も勝てたんです。ですから、この言葉に思うところが有るのなら、しでも技的なことも教えてあげてください」
僕が言い終えると、先生の顔は驚きに満ちた顔だった。ズケズケ言うような格じゃないと思ってたのかな。まぁ、當たってると言えば當たってるけど、僕は言うときは言うように父さんに躾られたので、言わせてもらいました。
先生はし黙った後、細々ほそぼそと口を開いた。
「君の言う通りだ。覚えの良い若いうちからやった方がにに付くのは當然だからな。これからは、技的なことも教えることにする」
「そうですか。それで、龍二はどうでしたか?」
「それだ! 龍君、この子何者なんだ!」
「あれ、言ってなかったでしたっけ? 僕の従弟なんですけど……というか、何があったんですか?」
「従弟!? ならあんなに上手なのも頷ける……!」
本當に何があったんだ……? 先生を落ち著かせて、何があったのかを聞いた。
「それが、足捌きと竹刀の振り方を教えたら、あっという間に出來るようになった上に、姿勢は綺麗だし振り方も真っ直ぐだしで教えることがもう実踐的なことだけになったんだよ!」
な、なんですと!? それはさすがに、僕の従弟だからという範疇を超えてる気がするんですけど?
「龍二くん、ちょっと竹刀振ってみてくれないかな?」
「うん、いいよ!」
僕が龍二くんに頼むと、快く承諾してくれた龍二くんが竹刀を持って構えた。
えっ、ヤバ。構えすら様になってるんだけど……。竹刀の重さを諸ともしない堂々としていて姿勢の良い構え方……僕がその域に達したのは6歳の頃だったんだけどなぁ。
龍二くん本當に恐ろしい子……! 何度目かわからないけど、どんな教育をけたんだ……! そう思わずにはいられない程だよこれは。
そして、龍二くんが竹刀を振った。……はい。初めてとは思えないほど振りが安定していて、且つ中心からズレずにちゃんと真っ直ぐで、肘で振らずに肩で振ってる。しかも、やっぱり竹刀の重さを諸ともしないしっかりとした振り方だった。
「ねぇ、どうだった、りゅうにいちゃん」
「あ、うん、よく出來たね。じゃあ今度は摺り足に合わせて振ってみてくれないかな?」
「うん、わかった!」
快く承諾してくれた龍二くんが、摺り足に合わせて竹刀を振った。
……うん、重心はブレてないし、摺り足もおかしなところは無いし、左足の踵かかとの高さも変わらずに摺ってるし、ちゃんと摺り足と竹刀の振りも合ってるし非の打ち所が無いんだけど……。
「りゅうにいちゃん、どうだった?」
「うん、よく出來てたよ」
「やった! ぼくね、りゅうにいちゃんのみてやったんだよ!」
まさかの僕がお手本!? いや、だとしても、見てやっただけで直ぐ出來るようなものじゃないんだけど……。んー、これは、僕を超えること出來るかもしれないな。
それから、無心道場は毎日やっているので、龍二くんは明日からここへ通うことが決まったので、報告をするためにお店に戻ることにした。
そして當然の如く、帰りも桃香のリムジンに乗ってお店に行くこととなった。
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