《VRMMO生活は思ってたよりもおもしろい》24.再びイベントに參加
お店に戻ると、ばあちゃん達は帰ったようで居なかった。
そして、僕は叔母さんと叔父さんに明日から通うことになったということを伝え、恥ずかしかったけど桃香を紹介した。
「貴が桃香ちゃん! 龍君とは仲良くやれてる?」
「はい! それはもう、ゲームでデートしたぐらいですから!」
あれってデートって言えるのかな? 全然デートらしいことしてなかったけど……。それに、結構殺伐としてた気がする……。
「へぇ~。デートの場所はこの際おいといても、仲が良いのは良いことよね」
「ねぇ、げーむってママがやってる『てぃーぴーおー』のこと?」
「そうよ」
「りゅうにいちゃんもやってるの?」
「うん、やってるよ」
僕がそう答えると、龍二くんは叔母さんにこう言った。
「ぼくもやりたい!」
「なに言ってるの、明日から道場通うんでしょ? やる時間無いわよ?」
「やだ! りゅうにいちゃんとげーむするの!」
そう言いながら駄々をこねる龍二くん。こういうところは年相応だなぁ。
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しかし、叔母さんは卻下した。
「だ~め! 龍二はまだ4歳でしょ? 『TPO』は5歳からしか出來ないの。たとえ道場を休まないと約束しても、『TPO』は出來ません」
叔母さんがそう言うと、龍二くんが食い下がった。
「ごさいになったらやってもいい?」
「道場休まないって約束出來る?」
「りゅうにいちゃんたおすくらいつよくなるってやくそくしたから、ぜったいやすまない」
「そうね……。じゃあ、やって良いわよ」
「ホントに!? やったぁ! りゅうにいちゃんとげーむ!」
よかったね、龍二くん。……あれ? 確か『TPO』は、5歳から10歳までは17歳以上の保護者同伴だったから……もしかして……!?
「というわけで、龍二が『TPO』やることになったときは面倒見てあげてね? 龍くん!」
やっぱりかぁ……そうだと思ったよ……。理由はどうせ、「お店が有るから面倒見れない」だろうから聞かない。
「それはまぁ良いですけど、龍二くんの誕生日っていつなんですか?」
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「フフフ……よくぞ聞いてくれた……! 私は頑張った! 龍くんと同じ誕生日にするために痛みに耐えながら、その日に出産出來るように……!」
拳を握りしめ、遠い目をしながらそんなことを言う叔母さん。なにキャラですか、それ……。
因みに、僕の誕生日は8月22日だ。これが寂しいのなんのって、夏休み中だから昔から祝ってくれるのは家族ぐらいで、クラスの人達からは言ってもらえない。何故なら、登校日が前々日だからだ。ただ、中學になってからは、部活の人達が祝ってくれるようになったので嬉しい。
それにしても、龍二くんの誕生日が僕と同じだったとは……同じにするメリットが全く思い浮かばない……! なにも痛みを我慢してまで同じ誕生日にする程の珍しい日でもないし、特別な日でもない。
「なんで態々わざわざ同じ日にしたんですか?」
「決まってるじゃない! おもしろいからよ!」
「……じゃあ、そろそろ帰りますね。龍二くん、またね」
「うん、ばいばい、りゅうにいちゃん」
「龍君今日はありがとう」
「いえ、それじゃあ」
そう言って桃香と一緒に店を出た。叔母さんのことは無視、超無視。呼び止められても無視。
店を出た僕は桃香にお禮を言った。
「桃香、今日はありがとう、送り迎えしてくれて」
「そんな、気にしないでください! 私がすることは全て龍さんのためですから!」
「あ、ありがとう……?」
「はい! それじゃあ、また明日」
「うん、また明日」
やり取りを終えると、桃香がリムジンへ乗り帰っていったので、僕も家に向かって歩き出した。
家に著くと、ちょうど夕飯の支度が終わったところだったらしく、リビングに行くと機には料理が並んでいた。夕飯を食べ終えた僕は、風呂にった後すぐに部屋に戻って寢た。
今日は、とても、良い日でもあり非常に疲れる日でもあった。
◆◇◆◇◆
――時は、僕が『ヤマタノオロチ』を倒した日の翌日まで遡る。
僕が朝食を食べ終えて適當なチャンネルでテレビを見ていると、速人からメールが屆いた。
何かな、と思って見てみると『今日のイベントも參加しませんか?』という容だった。なので、僕は即刻『僕は見てるから、速人達で倒してね。』と送った。
すると、『本當にやりたくないんですね……。まあ、そう言うのはわかってたので、その上でってるんですけど。』と返ってきた。
あっそうなの? なんだそれなら、ということで參加する旨を返信してから、ばあちゃん達にゲームすることを伝え、それから部屋に行ってログインした。
ログインした僕は、シアンとブランをいつも通りに肩に乗せ抱き上げた後、クロの様子を見ることにした。
僕がクロの巣を覗き込んで名前を呼んでみると、目を合わせたクロが驚いた。
「どうした?」
「グルァ!」
なんでもないです兄貴! という鳴き聲を出しながら用に敬禮するクロ。
不思議なことに、僕が教育をしてからクロは僕のことを兄貴と言うようになった。
なんでだろう? ただ、モモにクロの前に立ってもらって、クロがエロいことをしそうになったら僕がクロのHPが1になるまでボコボコにして殘り1になったらブランに回復してもらう。っていうのを繰り返してエロいことをしないように躾ただけなのに。
まぁ、それが功を奏して、クロがエロ熊から健全な熊になってくれたから、呼び方は悪口でなければなんでも良いんだけどね。
「今日のイベントには付いていっても良いぞ」
「グル、グルァ!?」(本當ですかい兄貴!?)
「本當だよ」
「グル、グルァ?」(姉あねさんに付いていっても良いんで?)
「僕が噓を言うとでも?」
「グル、グルァ!」(そんなわけねえでしょう!)
「まぁとにかく、今日から同行を許可するからモモをしっかり護れよ?」
「グルァ!」(もちろんでさぁ!)
クロの喋りが、凄く兄貴を慕ってる弟分のそれなんだけど……。
そんなことを思っていると、皆がログインしてきた。
「リュウさん、何してるんですか?」
「今日からクロを同行させようかと思って」
「大丈夫なんですか? その熊、モモさんにエロいことしようとしたんですよね?」
「大丈夫だよ、ハヤト君。龍さんが躾てくれたから」
「そ、そうなんですか……」
「まぁ、大丈夫なら連れていっても良いんじゃないかしら」
「そうだよ、なんせキングベアなんだからさ。龍さんのシアン程じゃないにしろ、強いんだからイベントで活躍してくれるって!」
「グルァ!」(任せてくだせぇ!)
そんなやり取りをした後僕達は、昨日と同様にイベント用のステージに向かった。
今日は昨日に比べて、ギルドの參加數が多かった。
「今日は多いね」
「たぶん、リュウさんが原因かと……」
「やっぱり、僕が原因かぁ……」
「でも、これはさすがに多すぎなんじゃないかしら」
「それな。見たところ、20くらいあるっぽい」
「これだけ居るんだったら、僕達が居なくても良いんじゃないの?」
「何を言ってるんですかリュウさん。昨日はリュウさんが一人で倒しちゃって僕達戦ってないんですよ? 僕達だって『ヤマタノオロチ』と戦ってみたいんです! だから參加したんです!」
「あっ、はい……」
そんなやり取りをしていると、またあの音聲が流れた。
『は~い、プレイヤーの皆さん! おっはようごさいま~す! 今日もイベントの時間がやって參りました~! 今日初めて參加するプレイヤーの人達のために簡単に説明するよ~!』
やっぱり軽い。フレンドリーと言えば聞こえは良いけど、僕からしたら単にテンションの高い子が喋ってるようにしか聞こえない。
(説明は昨日のと同じだったので割)
しかし、その後重要なお知らせがあった。
『ここで、運営から重大な発表がありま~す! それは、なんと、今日の『ヤマタノオロチ』は昨日より格段に強くなっているのです! 運営の理由グチは、一人にサクッと倒されたから! ということらしいので、プレイヤーの皆さん頑張って倒してね~!』
………完全に僕のせいですね、わかります。なので、みんなして一斉に僕の方を見るのを止めてください。
なに今の、怖かった。全員が一斉にバッと僕の方に顔を向けてきた。しかも、その目が全部ジト目だった。
でも安心してほしい、今回は絶対に戦わないから。どんなに脅されても、どんなに懇願されても、絶対に戦わないから。
それからは、昨日と同様にカウントダウンが始まり、例の如く全員が一斉に大聲でカウントダウンし始めた。
そして、カウントダウンが0になった途端に窟へ雪崩れ込んでいった。
「またやる気出なくなったんですか?」
僕が立ち盡くしていると、ハヤトがそう聞いてきた。
「いや、別に?」
「じゃあ早く行きましょうよ!」
「おいハヤト、昨日のこともう忘れたのか? リュウさんのおで一番乗り出來たのにさ!」
「わかってますど、それでも早く行かないと萬が一ってこともあるでしょう!?」
「はいはい、ケンカしてると、それこそ萬が一があるかもしれないわよ?」
「そうだよ、喧嘩は良くないよ」
「「リュウさんが言うな!!」」
デスヨネ~……すみませんでした……。
そんな事も有りつつ、窟の中へってしばらく歩くと昨日と同じく分かれ道があり、それに加えて一つしか開いていなかった。
「またですか。でもさすがに、今回はリュウさんの豪運でも無理でしょう」
またハヤトが一番乗り出來ないとぼやいたけど、誰もなにも言わず気にせず、殘りの分かれ道を進んだ。
そして、分かれ道を抜けて『ヤマタノオロチ』が居る場所に到著すると、不思議なことに誰も居なかった。
「これって……一番乗り……?」
僕がそう呟くと、ハヤトがびだした。
「なんで!? なんでですか!? なんでなんですか!?」
「いや、僕に聞かれてもわかんないけど……運がよかった、ってことかな?」
「運が良いの度合いを超えてますよ! だって、昨日の今日ですよ!?」
「よく言うでしょ? 殘りには福があるって」
「それは昨日も聞きました! ことわざ通りすぎて怖いです!」
「そんなことより、早く戦わないと他のギルド來ちゃうよ?」
「言われなくてもわかってます!」
プンスカ怒りながら3人と一頭を連れて『ヤマタノオロチ』の所へ向かったハヤト。
ちょうどその時、一つのギルドが分かれ道を抜けてきた。
「う~わっ、またリュウのところが一番乗りかよ」
「トッププレイヤー様じゃないですか、お疲れ様で~す」
そう僕がニコニコしながら言うと、マクロは青筋を作りながら近寄ってきてこう言った。
「喧嘩売ってんのか! 買わねえけど!」
「えっ、買わないの?」
「売ってたのかよ」
「売るためじゃなきゃ、あんなこと言わないよ」
「ムカつくけど、絶対ぜってぇ買わねえぞ!?」
「まぁ、買うんだったらお金貰うけど。1000U」
僕は、そう言いながら手を差し出した。
「金とんのかよ!」
「冗談だよ冗談」
「っておい! リュウのギルドの子達が既に戦ってんじゃねえか! おい、お前ら行くぞ!」
そう言ってマクロは他の3人を連れて『ヤマタノオロチ』の所へ走っていってしまった。
殘念、あまり良い時間稼ぎにはならなかった。マクロ達はあまり苦戦しなさそうだから、ハヤト達だけで倒せるように時間稼ぎしたかったんだけど、そんなに上手くはいかなかった。
しかもこの後、次々と他のギルドが分かれ道を抜けてきて『ヤマタノオロチ』を倒すべく向かっていってしまったので、ハヤト達が止めを刺せるのか不安になってきた。
まぁ、別にハヤトは戦いたいと言っただけで、倒したいとは言ってなかったから、心配する程のことでもないか。
そう思って、しばらくの間シアンやブランとお喋りをしながら待っていると、ハヤト達が走ってきた。
「リュウさん、リュウさん!」
「どうした?」
「僕達やりました! 『ヤマタノオロチ』を倒しましたよ!」
「それってつまり?」
「マクロさん達より早く『ヤマタノオロチ』を倒しました!」
「おぉ! それで、誰が止めを刺したの?」
「僕です! 魔法が運よく當たって倒せたんです!」
それは、なんというか、おめでとうと言って良いものなのだろうか? でも、運も実力のって言うし、気にしなくていっか。
「そっか、おめでとう。良かったね」
「はい!」
その後、ハヤトが【オリハルコン】の防一式を貰うと全員【始まりの広場】に転送され、ほとんどの人達が殘念がりながら去っていった。
そこから何故か、僕の家で打ち上げをすることになった。
僕は大急ぎでログアウトしてばあちゃんに説明しなきゃいけなかったので、とても大変だった……。
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