《スキルを使い続けたら変異したんだが?》第二十六話 PvP

『おい、そこの二人、爽やかな青春劇繰り広げてるんじゃないっ。特にそこの黒髪!』

元々テンションのおかしかった司會が、怒っているのかチャラけているのかわからない叱責をぶつけてきた。

「呼ばれてるわよ、ユウト」

ぽんと、俺の背を叩くレナ。

いや、どう考えてもあの矛先はレナへ向いているだろう。

『闘技場にとか常識ってものがないの⁉』

その言葉でようやく気付いたのか。

レナは首を傾げてに言った。

「ルールに不可とは書いてなかったけど」

『だから常識的に考えろって! モラル、マナーッ!』

嘯くレナに、司會のの怒りはさらに増幅する。

「何それ食べれるの?」

ぶちっと。マイク越しに何かが切れる音が會場中に響き渡る。

『……ふふ。うん、わかった。お姉さん、よーくわかっちゃったよ』

そうして顔を上げたは、やばい笑いを浮かべていた。

あ、後ろの男とは違う意味で関わっちゃいけないタイプの人だ……。

「自分のことをよくお姉さんって言えると思わない、ユウト?」

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俺に振るな、振らないでください!

「おい、やめとけってっ。なんかやばいのわかるだろ?」

「ああいう人を怒らせるのって楽しいよね」

あ、絶対擔任の先生をわざと怒らせるタイプだ。

で、俺はその脇にいてなぜか一緒に説教をけるタイプだ……。

は目の前にタブレットを呼び出し、誰かと話をしているようだった。

『対人システムを起しなさい、そう、試運転よ。 ああ⁉ 無理ってどういうわけ⁉ 全然、私用じゃないし!

……そう、そうよ! 大、まだあの男の子がゴーレムを倒した方法はわからず仕舞いじゃない! それを確かめるためっ!』

不穏な単語の羅列に、俺は嫌な汗が流れるのをじた

PvPやっぱり実裝されていなかっただけで、用意はあったのか。

っていうか、それを試運転だなんだと起させられる立場にいる彼は、本當にただの司會なのだろうか……?

『そうそう、素直にそう言えばいいの。

さあ、待たせたわね、悪質プレイヤーたち! そして観客の皆さま! ただいまよりメーンイベントを開始いたします!』

大仰に両手を広げ、司會者のが宣言する。

ちょ、ちょっと待て!

「俺たち、さっきゴーレムと戦ったばかりで……」

『その容は、PvPの開発狀況の発表……なんて面倒なことはふっ飛ばして、早速その試験運用をご覧に頂きましょう! この私と、そこのプレイヤー三人で!』

聞いちゃいない。いや、絶対聞く気がない。

そして完全なとばっちりで巻き込まれたナツメは、タブレットを片手に目を白黒させている。

『PSモードでフィールドを形

さあ、指導の時間よ!』

タキシードにを包んだ、長い金髪のがフィールドに降り立つ。

直後、戦闘開始の電子音が脳裏に響き渡り、の頭上にセリアという名前とHPバーが現れる。

その“両手”には、いつの間にか朱と蒼の長剣が握られていた。

二つの武を裝備するなんて、このゲームではできなかったはずじゃ……。

観客席もざわめく。その様子にセリアは満足そうに頷く。

『次回のアップデートで追加予定の剣士の上位クラス、雙剣士です!

大サービス、その初お披目もここで――』

「ヨルムンガンド」

一瞬の躊躇もなく、隣のはスキルを発する。

あれ、MPが盡きていたはずなのに。PTステータスを確認すると、俺、レナ、ナツメのHPとMPは全て回復していた。

PvPの開始と同時に回復したのだろうか。

『臺詞の最中に攻撃しないっ!』

ひび割れ始めた地面。しかし、なぜかその範囲は通常の十分の一以下。

セリアはやすやすと効果範囲を駆け抜け、こちらへ迫る。

二つの刃が、並んだ俺とレナへ向かって振るわれる。

遅い。レベル50のステータスならば、余裕でかわして反撃ができる。

「ッ⁉」

いつもの覚でこうとした俺は、そのの重さに目を見開いた。

まるで、初めてこのゲームをプレイした時のような。

レナも同じようで、その顔に焦りが見えた。

う俺たちに、セリアは容赦なく己の得を振り切る。

刀と杖で防する。吹き飛ばされるような威力ではない。

『ブレイク・ウェーブ!』

それだけだったなら。

刃の先から不可視の衝撃波が放たれる。それはけた刀と杖をすり抜けて直接俺たちを襲った。

大男にタックルされたかのような重い一撃に、數メートルほど押し飛ばされる。

にダメージによる振。今の攻撃で俺とレナのHPは一割ほど削られていた。

『ブレイズ・ソード!』

こちらが構えるよりも早く、セリアは俺のよく知るスキルを発した。

一歩で間合いを詰められる。だが、振るわれる軌跡は目に焼き付いていた。

刀を橫に構え、振り下ろされる朱炎の刃をける。

セリアが、ニッと笑う。

目線を下に提げれば、逆手に持ち替えられたもう一つの刃が、真下から迫っていた。

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