《転生プログラマのゴーレム王朝建國日誌~自重せずにゴーレムを量産していたら大変なことになりました~》20 カウントダウン

「うあ!! うう?!」

鋭い痛みに思わず俺はうめき聲をあげる。

「巧魔ちゃん?!」

菫が驚き駆け寄ろうとするが、それを鈴音が手で制止する。

「菫、下がっておれ! ――食らえ小僧!!」

戮の足元が盛り上がる。

現れたのは一本の長剣。

突然生まれた刃が地面から振り上がる。

ギィン! と甲高い音が響いた。

戮の仕込み刀に防がれたようだ。

戮はその長からは想像出來ない軽やかさで大きく飛び退くと、一本の頼り気ない梢に降り立つ。まるで小鳥が降り立ったかのように梢が折れることはない。

「おっと、危ない危ない。うふふふ、る程る程、蛇を狙った攻撃ですネ。攻撃の標的が蛇であれば、私が巻添えを食らうのは『例外』となりますな。しかし、これでは蛇がワタクシから離れれば鈴音様に打つ手は無いですネ」

「貴様きさんを殺す手などいくらでもある! エズイ死に方をしたく無くば教えろ! 主に何をした! 」

「種明かしがまだでしたネ。それでは――」

パチン、と戮の指が鳴る。

すると、俺の額に深々と貫く短剣が現れた。刀は赤くき通っており、彩飾ガラスのようだ。奇妙なことに、脳天を刃に貫かれているのにも関わらず俺は死んではいない。

「かの錬の覇者が作りし七剣ななしょくけんのが一本、逢魔の剣で座います」

「――悪趣味な奴め。何が目的だ」

鈴音はそう言うと、俺に刺さった剣を一気に引き抜いた。

ちょっ?! そんなことしたらが止まらなく……なってない?

「主、案ずるな。その剣は傷を負わない」

そうなのか。どうやら鈴音はこの剣の正を知っているようだ。しかし、『悪趣味』とはどういう意味だろうか?

「うふふふ。既に伝えしておりますが、巧魔クンへ忠告に參ったのです。巧魔様は素晴らしい才能を持っていらっしいますが、その才に溺れて呆気なく死んでしまわれては勿無いと思いましてネ。僭越ながら、巧魔クンの修業のお手伝いを。……巧魔クン、君は今日一度死んだ。その慢心が故にネ」

……慢心か。確かにそうだ。今魔力を使い切っていなければ々と対処出來る事があったであろう。戮にその気があれば、千春や俺は死んでいた。いや、こいつの能力からすれば、皆殺しになっていてもおかしくは無い。

「――6年後。ワタクシと巧魔クンはまた會うことになる。その時が來たら、心逝くまでヤり合いましょう。巧魔クンにはワタクシが初めにツバをつけたんですから、ワタクシ以外にヤられてはいけませんよ? うふふふ、それでは皆様、ごきげんよう」

戮の姿が闇にまみれるようにして消えると、森に靜寂が戻った。

鈴音は暫く戮の消えた場所を睨み付けていたが、戮が本當に立ち去った事が分かると、沈痛な面持ちで俺に話しかけた。

「……すまん、主。『巳ヘビ』の危険を知りながら、今回の事態に陥ったのはワシの失じゃ。どうやら200年間森に閉じ籠っていた間にすっかり呆けてしまったようじゃ」

いや、鈴音のせいではない。俺の危機意識が低かったのだ。ここは過去に俺が暮らしていた日本ではない。常に死の危険が隣り合わせな異世界なのだ。

今回の失敗を、俺の長の糧としよう。

何故6年後にまた會うことになるのかは解らない。だが、1つだけはっきりしている事がある。

――6年後までに俺は、戮を倒す実力をに付けなければならない、ということだ。

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