父さん、母さん、隆一郎爺さんが豚狩村に到著し、宴が開始された。

俺の目の前にはこんがりと焼けた豚の丸焼き。その周りに數々の豚を使った料理が並んでいる。

「おお！　うまそうじゃのう！」

「ささ、どうぞ冷めないにお召し上がりください」

皆、用意された食事にてをつけ始める。「うまい！」「おお、これはこれは」

至るところで嘆の聲が上がっている。そんなにウマイのか。では、俺も頂くとしよう。

俺は目の前で切り分けられた豚の丸焼きにかぶりつく。すると、が湯水の如く溢れ出し、口からボタボタと零れ落ちた。むむ！　ウマい！　ウマイぞこれは！！

弾力のあるは噛めば噛むほど旨味が溢れ出す。かといって脂っこいわけではない。まるで濃厚なのスープが噛むほどに溢れてくるようだ。元の世界で食べた豚とは全く違う。

「どうですか、巧魔様。お気に召されましたか？」

「ええ！　こんなに味しいおは初めて食べました！　こんなにが溢れるなんて。何か特別なおなんですか？」

「これはポークと呼ばれる豚です。年に一匹取れれば運が良い方で、龍都では幻のと呼ばれ高値で取引されております」

ま、幻のだって？！　そんな貴重なおが丸焼きにされてるけど。これ全部でいくらになるんだろうか？

「そんな貴重なおを！　すみません、そんな貴重なおとは知らずにパクパク食べてしまいまして」

「何をおっしゃいますか！　これは我々の謝の印です、むしろ開通のタイミングでポークが獲れた事に謝をしたいところです。ほら、お連れ様のようにーー」

村長の目線を追うと、一心不ににかぶりついている鈴音の姿があった。頬は紅をさしたようで、表はふにゃふにゃと溶けきっている。案の定、耳と尾は出しっぱなしだ。あとでからかってやろう。

「ーーああして召し上がって頂くと、我々も狩ってきた甲斐があったというものです」

「そうですね。では、僕も遠慮しません。村長もこちらで一緒に食べましょう。早くしないと、僕が全部食べてしまいますよ」

「フフフ。では、お言葉に甘えて失禮致します」

俺たちは豚狩村の方々共に、豚料理の數々を味わった。どの料理ひとつとっても一級品の味わいだった。鈴音は食べ疲れたのか空になった皿に囲まれ、仰向けに居眠りをしている。腹がボールのようで、進化前の豚助を彷彿ほうふつとさせる。

村長にポークの狩り方を伺ったところ、豚の中でも魔力の高い個は、オークと呼ばれる豚のモンスターへ変化するらしく、変化する豚は淡い青にるらしい。その瞬間を逃さず仕留めると、が溢れ出すポークとなるそうだ。

問題は、ポークになるタイミングである。る時間は15分ほどしか無いらしく、偶然その瞬間に出くわさない限りは、狙って狩ることは出來ないそうだ。

だが、俺のゴーレムを使えばその問題は解決しないだろうか？　ゴーレムなら24時間制でオーク平原を見張ることが可能だ。オーク平原は広大で、相當數のゴーレムを常時放っておく必要があるが、あのポークが食べられるのであれば、やる価値はある。上手くいけば、龍都への販売品として使えるかもしれない。

ーーもちろん、俺が食べる分を確保してからの話だが。こので豚丼とか作ったら最高だろうなあ。聞くところによると、東と燕の國の中間にドワーフが住む里があるらしく、そこでは稲の先に実った小さな果実を主食としているらしい。その報だけでは解らないが、もしかしたらお米の事かもしれない。機會があれば、ぜひとも伺ってみたいものだ。

「よー、巧魔っち。楽しんでるぅー？」

俺が食後の余韻に耽っていると、正義が聲をかけてきた。