《転生プログラマのゴーレム王朝建國日誌~自重せずにゴーレムを量産していたら大変なことになりました~》49 挑発

正義はどかっと俺の橫に座り、あぐらをかいた。うん、イケメンはあぐらをかいてもイケメンである。しかし、何となくこの人の近くにいると気後れする。あまりに堂々としていて、本當にただの行商人なのか? と疑いたくなってしまう。

「ええ、楽しんでます。今日は素敵な村へ案していただきありがとうございました」

「巧魔っちー、そうかしこまるなよー。今日はめでたい席なんだぜい」

「そうですね、分かりました。ーーところで、正義さんはどうして豚狩村にを売りに來ているんですか?」

「んー? それは儲けも出ないのにこんな遠くに來る必要無いんじゃないのーってことかい?」

「ええ、おっしゃる通りです」

「巧魔っちは若いのに商魂しょうこん逞しいねえ。これは俺の趣味みたいなもんだよ。本業は別にあるんだけどねえ。部下があんまり厳しいもんだから、こうしてたまに抜け出してくるんさ」

部下が厳しい? なんだろう、あんまり慕われて無いんかこの人。そんな印象はけないけどな。

「それは大変でしたね。ここは良い村です。いい気晴らしになるでしょう」

「お、解ってるねー巧魔っち。ここは酒も一級品なんだ。どうだ、一杯やるかい?」

「ははは、僕はまだ子供ですよ。20年後にお付きあいしましょう」

猿彥さんあたりを連れてくれば大喜びするだろうな。今日はちょうど龍都に仕れに行っていたから同席出來なかった。後で會ったときに伝えておこう。

「ところで、話は変わるんだけどー。ーー巧魔っちは巳へびの契約者に目をつけられてるんだって?」

「……どうしてその事を?」

別に隠しているわけではないか、公表しているわけでもない。それを守谷村の住人でない正義さんが何故知っているんだろう。

「まあ、行商人をやってると報がってくるのさ。厄介な奴に目をつけられたね」

「知っているんですか? 戮の事を?」

「大した報は持ってないけどねー。危険な奴だってことぐらいは知ってるよん。そうだー、いい機會だからさー、僕が稽古をつけてあげようかあ?」

「正義さんがですか?」

「こう見えて、ある程度の心得は持ってるんだよねー。ほら、行商人って長距離移が多いから何かと危ないでしょー?」

正義さんを改めて視る。確かに、筋は引き締まっており鍛えているように見える。だが、所詮は行商人だ。稽古なんかして怪我をさせてしまっては申し訳ない。ここは穏便に斷ることにしよう。

「申し出は非常に有難いんですが、自分はゴーレムを作ることしか能が無くて、稽古をつけていただくまでもありません」

……俺がそう言うと、正義さんは腕を組んで「うーん」と考えるようなポーズをとった。

「……そっかー。巧魔っちは巳に襲われた時も、油斷をしたせいでボロ負けしたって聞いてるからなあ。今回も油斷して行商人なんかに負けっちゃったら、みんなに示しがつかないようね」

…………油斷など、俺はもう、していない。戮やつにしてやられてから5年。次に會うときには必ず勝つ、その事だけを考えて修行を積んできた。

「……油斷なんて、していませんよ」

「うんうん、口だけなら誰でも言えるよね」

「いいでしょう。稽古、つけて下さい。正義さん」

「んー? いいのかな? 油斷をして僕に負けっちゃっても」

「ははは、そちらこそ、油斷をして5歳児に負けてしまわないように気を付けて下さい」

「そ。じゃあ、さっそくやろう」

正義さんはそう言うと、にやりと笑う。余裕があるのか?

いいだろう。正義さん、その余裕、すぐに払拭してあげますよ。

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