《転生プログラマのゴーレム王朝建國日誌~自重せずにゴーレムを量産していたら大変なことになりました~》51 チェックメイト

「ほらー、っちゃうぞー」

正義さんはいつの間にか俺のすぐ左手に回り込んでいた。

ってか言い方。変態か。

『ライト!』

俺のが突きかされるようにして右へ飛びのく。

「その魔法自分にも使えるんだー。アイデアマンだね君は」

「プッシュ!」

「おおっとー」

正義はのんびりした口調で話ながらも追撃の手を緩めない。ゆっくり歩いているようにしか見えないのだが、気がつけばすぐ近くにいるのだ。

『プッシュ!』

「はっはっはー、もうその技は見慣れちゃったよー」

くそー、のらりくらりと避けられて全然當たらない。本來ならデキム・ウォーターで逃げ場を狹めたいところだが、いかんせん殺傷能力が高すぎる。ん? 殺傷能力か……。よし。

「あれ? もう諦めたのかい? それじゃあ捕まえちゃおうかなー」

『クリエイト・ミドルゴーレム・武50』

ずん、と地面に振が走り、正義が歩みを止める。地面から沸いた50の土人形。それぞれ剣、鎧、盾を一式裝備している。

クラス定義により、50のミドルゴーレムを同時召喚出來る。

魔法量の消費が半端ではなく、一日一回の使用が限度だが、正義さんを止めるには使うしかあるまい。

「これはしんどい。規格外だねまったく」

「東商店仕用ゴーレムですが、鎮圧にも使えます。お怪我をしないようにお気をつけください」

「気にするなって。どうせれはしないよん」

むかっ。じゃあもう遠慮しないぞ!

俺は正義さんに向かって指を指す。

『ゴーレム、全員制圧モードへ移行』

ゴーレム達の蒼い眼に強いが燈り、一斉に襲いかかった。

「おおー! 流石にヤバイかなー」

やりすぎたか? と思った瞬間、破壊音と共に砂煙が舞った。

犯人は正義さんだ。ゴーレムの攻撃を躱かわしながら、掌底で次々とゴーレムを破壊している。

「よっ、と」

後ろから襲い掛かったゴーレムの攻撃をくるりと反転して躱し、そのまま掌底を顔へ叩き込む。後ろに目でも付いているんだろうか。だが――

「お! そうきたか」

正義の顔に引き攣った笑みが浮かぶ。

背後から襲い掛かったゴーレム、その後ろに回り込んだ俺が現れたからだ。ゴーレムはただのだ。虛を突いたこのタイミングでは、どんなに鍛え上げた人間でも避けられるものではない。

(チェックメイトです、正義さん)

『プッシュ!』

俺は正義さんの腹部、ちょうど鳩尾を狙って空気弾を放つ。

空気弾は外れる筈も無く命中。可哀そうだが、夕飯は食べられまい。

だがその直後、正義さんの姿が掻き消えた。

へ? いったいどこに?

首に衝撃。

ぐらりと視界歪む。

後ろに回り込まれたか。あの一撃を食らってけるなんて完全に想定外だ。

「最後の一手はよかったねー。でも、油斷大敵だよ。躱されたあとの事も考えておかないとね。戦闘は最後まで気を抜いちゃ駄目さ。じゃあ、巧魔っち。またあとでねー」

俺の意識はそのまま戻ることなく、そのまま深く深くへと沈んでいった。

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