《転生プログラマのゴーレム王朝建國日誌~自重せずにゴーレムを量産していたら大変なことになりました~》52 焚き木の音

「ほおれ、何時まで寢とるんじゃ。もうワシの足が痺れてもうたわい」

俺は鈴音の聲で慌てて起き上がった。ここは食事をしていた豚狩村の広場だ。あたりはすっかり暗くなっている。どうやら俺は、鈴音に膝枕をされて寢ていたらしい。

「あれ、正義さんは?」

「正義ならとっくに龍都へ帰ったぞ。正義から伝言、『また會うときまでに強くなっておいてねー』だ、そうじゃ」

そうか。俺は負けたのか。くそ、勝ったと思って油斷してしまった。これではまたあの時の繰り返しではないか。

「主……。そうしょげるでない。主と正義とでは戦いの年期が違う。それに、主はどうせ手を抜いておったのじゃろ? 主のスキルは戮に対するものばかりで、制圧する為のスキルは作っておるまい」

「それは、正義さんだって同じだ。本気を出していたとは思えない。今回は完敗だよ」

制圧用の魔法を作っておかなかったのは今回の一番の反省點だ。戮の事ばかりを意識しすぎて、頭から抜け落ちていたようだ。今後も、殺さずに倒さなければならない場面は多くあるだろうし、さっそく明日からプログラミングに取り掛かろう。

「……ところで、前から気になってたんだけど、鈴音は正義さんの事を前から知ってるの?」

「ん、答えられん」

「答えられないって……ん?」

鈴音が何かをおに隠すしぐさをした。なんだろう。怪しいな。

「鈴音……、それちょっと見せ――」

「違う! これは口止め料では無いぞ! さっきそこで偶然拾ったんじゃ!」

鈴音が慌てた様子で両手をばたつかせていいつくろう。こいつは年寄りなんだかいんだかわからなくなる時があるな。

ばたつかせている手には、何やら細い木の枝のようなが握られている。マタタビのようなものだろうか?

まあ、いい。正義さんは『またあとで』と言っていた。焦らなくても、また會うことになるだろう。

俺は持ち上げていた頭をボフっと、鈴音の膝へ戻した。

未だ豚を焼いていた火が殘っているのだろうか。薪がぜるような音が、かすかに俺の耳に屆いたような気がした。

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