《転生プログラマのゴーレム王朝建國日誌~自重せずにゴーレムを量産していたら大変なことになりました~》71 二百年前の追憶九(右京 六慶視點)

――否、撥ね飛ばす…………はずだった。

「…………く…………そ」

俺は自分の肝臓を的確に貫いた短剣に目を落とす。

「…………不粋だな、客人。一騎討ちに橫槍とは」

「悪いなお頭――いや、隊長。俺っちは昔から空気を読むのは苦手なんすよ」

客人はそういうと、倒れそうになった六慶のを支え地面に橫たわらせた。客人は顔に巻いてあった包帯を解く。そこには六慶がよく見知った顔があった。

かつて六慶が東國陸軍に所屬していた頃の部下、正義の顔だった。

「……よく分かったな。今の俺が二回目・だと」

「見れば分かりますよ。いったい何年、隊長と戦場を駆けずり回ったと思ってるんすか」

正義はへらへらとした表で六慶話しかけた。その口調や表は六慶が知るままの正義、そのものであった。

「隊長には報告していませんでしたが、そのおっさん臭いは町で一戦えた時既に、剣を錬する技を使っていた。その技はまさに錬の覇者そのもの。……錬の覇者に恨みを持っている隊長なら、殺気を抑えることは出來ないだろうなあって思って」

なるほど、と六慶は服したようなを持った。

(通常の俺であれば、殺気を悟られるような下手は打たない。もし俺が殺気を出すようなことがあれば……それは一度の技を見た時――即ち)

「俺が一回目での技で殺された……そう踏んだ訳か。……すっとそうやって俺が次元兎を発させるのを待ち、正を隠していたわけか」

(普通に暗殺をしようとしても次元兎で逃げられてしまう。だから正を隠し、機會を伺っていたのだろう。

「近くにいながら挨拶もしないなんて……ごふっ!………隨分と、つれないじゃないか、正義」

「その言葉、そっくり返しますよ隊長。……俺っちだって気づいてたんでしょ、隊長。気づいた時點で隊長が俺を始末すれば、あんたが死ぬことは無かった。……俺はあんたに殺られるなら、それでも良かった。なんで俺を殺ろうとしなかったんすか、隊長?」

はたして俺は気づいていただろうか、と六慶は自分に問うた。確かに十中八九そうだろうという確信は心のどこかにあったような気がする。だが、それを意識の隅へ追いやっていたのだ。

「……俺は……俺は、死に場所を探していたのかも知れないな」

それは六慶が自分でも思いもしない言葉であった為、六慶自がその言葉に驚いていた。

(俺は死に場所を探していたのか? ……そうかも知れない。俺は戦場でしか生きられない男だ。隊長だと祭り上げられても、所詮は殺しに長けただけの狂人。戦爭が終われば用無しだ。戦場で死にはぐった俺を、誰かに始末してもらいたかったのだろうか)

「自殺方法にしては、隨分と大迷っすね。盜賊団の親玉なんてやったりしちゃって……最後に言いたいことはありますか?」

「……がはっ……そう、だな」

六慶は過去を想っていた。正義と共に駆けたあの戦場を。皆の笑い聲を。凱旋パレードで見た錬の覇者の……前國王の眼差しを。

「…………俺のような……クズが……役に立つことの無い世界を……」

六慶はそこまで言うと大きくを吐き、かなくなった。

「……あんたが俺を殺ればよかったんだ。そうすりゃ、俺っちがこんな思いをせずに済んだのになあ」

だが正義のそのつぶやきを聞く相手はすでにいない。

過去の戦爭で英雄とまで呼ばれた男の、最後であった。

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