《転生プログラマのゴーレム王朝建國日誌~自重せずにゴーレムを量産していたら大変なことになりました~》72 二百年前の追憶 終(鈴音視點)

鈴音は男が肩で息をしながら、死にゆく男の姿を見屆けた。男が死んだことが判ると、命が助かった事の安堵でほっと息をはいた。

「包帯の男。まずは禮を言っておくぞ――が、わからんな。なぜワシを助けた?」

「禮を言うのはこっちだぜ。鈴音っちだろ? 前國王陛下が契約を結んでいた隠し干支様だ。國から話は聞いてるぜい。俺っちは正義っていうんだ」

「正義とやら、お主がなぜワシに禮を言うのじゃ?」

「鈴音っちのおで隊長を倒せたからさ。…………この男は東國の元隊長でね。卯卯の干支と契約している能力者なんだけど、その能力が厄介なんだ。一日に一度だけ、殺されてもリスタート出來るんだ」

「リスタート?」

「殺されても、時間を遡ってやり直すことができる」

「時間を遡る? そんなことが可能なのか」

「出來るんだなあこれが。反則な能力だと思うけど。隊長はその能力を使って過去の戦爭で死線を何度も乗り越えてきた。俺っちは間近でそれを見てきたから間違いないぜ」

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そうか、それで正義はこの男を隊長と呼んでいたのか。

「じゃが、それとお主がワシに禮を言うのは何の関係があるんじゃ?」

「俺っちはこの男の殺害命令を國からけていたんだ。たいの側近だったから、弱點もよくわかるだろうと考えたんだろうなあ。だけど、この男には時間を遡る厄介な能力がある。この男は二度殺さなくては倒すことが出來ないんだ。だけど俺っちが二度殺すことは出來ない。リスタートされて返り討ちにあうからねー。だから、部に潛してこの男が殺されるタイミングを待っていたのさ。そこに、鈴音っちが現れた。あんたは、さっきの戦いでこの男を一度殺しているんだ――錬剣の不意打ちでね」

「そうか。先ほどの不意打ちで放った竹林が簡単に避けられてしまったことに驚いていたが、一度見られていたから簡単に避けられてしまったというわけか」

「そういうことー」

「じゃが、よくわかったな。やつが二回目だということに」

「…………判るさ。俺っちはずっと隊長の背中を見てきたんだ」

…………この隊長と呼ばれた男も、正義も、ワシが國を放り出した被害者だというわけか。

「…………すまなかったな。ワシがこの國を放り出していなければ、お主らの運命は変わっていたかもしれぬ」

「…………俺っちはあんたがこのがれたのはあんたのせいだとは思っちゃいない。前國王陛下は良くも悪くも英邁過ぎた。みんな頼りっきりになっちまったんだ。國王陛下が戦死したとき、みんな真っ白になっちまった。柱を失った家みたいなもんで、ガタガタと崩れちまったんだ。この國がれたのは、俺たちが子供で、自立できていなかったせいだ。――それに、鈴音っちは探してたんだろ? 次の國王のを。皆そう噂してるぜ」

「ワシはただ面白そうな奴がおらんか探していただけだ。…………じゃが、もうその必要は無さそうじゃ。お主のような男が居ればこの國もまだ大丈夫じゃろ。そうじゃ、エマニエル」

「は、はい!」

エマニエルは直立不當の姿勢で敬禮をしている。

「いったい何じゃ? 急にかしこまって?」

「いや、だってあんた…………鈴音様は國のお偉いさんだったんですよね? ため口なんて聞けませんよ」

「はあ。別に昔の話じゃ。そう固くなるな。それで、エマニエル、ちょうどいい機會じゃ。この男の紹介で東國にかくまってもらえ」

「「は?」」

「よし、決まりじゃ。良かったの」

「いやいやいや、話が見えないから。包帯男だって急に言われたら迷でしょ」

「俺っちは別にいいぜー。エマっちはうちでもんな意味で有名人だからな。鈴音っちの紹介だっていえばすんなりれられるんじゃないかなあ」

「え? いいの? なんか軽いなあんたあんた」

ワシは正義という男の心を読んでいた。言葉に裏表が無く、真っ直ぐな男だ。つまり、言葉が軽いのと同様に――

「この男、面もそうとう軽いぞ。エマニエルが補助してやれ。お主は意外とが真面目じゃからな。いいコンビになるかもしれん」

「…………なんか酷い言われようだな。それで、鈴音っちはこれからどうするんだ?」

「…………そうじゃな」

ワシは盜賊達が城にしていた窟を見る。窟の脇には縄で縛られてうなだれている盜賊たちがいる。窟の奧は大きく口が開かれていて、中はとても快適そうに見えた。

「ワシは暫くここに隠居することにする。外を歩いても面白い奴はおらんかったからな。時が來れば、向こうからやってくるだろう」

「…………あの、鈴音様。々とありがとうございました。私、また魔法が使えるように頑張ります」

「敬語は良いというのに」

「鈴音様はいつまでここで隠居なさるんですか?」

「面白い奴が出てくるまで何年でも待つことにする」

「…………その面白い奴というのが現れなかったらどうします?」

ワシは空を見上げる。そこには雲ひとつなく、ただ風が吹いていた。この空は百年先も変わらないのだろう。

「きっと現れる。そんな気がするんじゃ」

「そうですか。じゃあ、あたいはその時お役に立てるように頑張ります!」

――こうしてワシは森の奧へと引きこもり、その後二百年森の外に出ることはなかった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「――それで、二百年後、たまたま俺がその森に転生したというわけか」

「そうじゃ。主が想像以上に面白い奴だったのは嬉しい誤算じゃな。おで退屈せんわい」

「あの正義さんと二百年前から知りあいだったとはねえ。あれ? 正義さんって二百歳越えてるっておかしくない? エマニエルは長壽の燕の國出だからわかるけどさ」

燕の民は壽命が長い。

老化の要因は神的な耗で、的には衰えることは無い。

どんなに年寄りでも見た目の年齢は東の民……つまり普通の人間で言うところの20代でストップする。

中には500歳を超える人もいるそうだ。

「それは國王が直々に説明してくれるじゃろ」

「國王が?! どゆこと?!」

「他にも昔話はいろいろあるぞ。小夏が次の人間と契約をかわす話とか、後はエマニエルが魔法を使えるようになる話とか。――あのときは正義が炭になりかけてだな」

「――鈴音様、巧魔くん! 話は終わりです! 首都が見えてきましたよ!」

「おお、遂に首都が。どれどれ…………」

俺は首都を確認するため馬車からを乗りだし――度肝を抜かれた。

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