《転生プログラマのゴーレム王朝建國日誌~自重せずにゴーレムを量産していたら大変なことになりました~》85 モンスター討伐依頼 強敵との再會

馬車が傾き始め、上り坂にさしかかってきたかなと思っているところへ、獣の遠吠えが聞こえてきた。

「出たぞ、全員戦闘準備!」

全員張した面持ちで馬車を下り始める。

馬車から下りると、そこはすでに戦場となっていた。

針葉樹林の隙間をうねるように通っている細い馬車道。その周辺、木々の合間からわらわらとモンスターが歩みを進めている。頭部はオオカミだが、二足歩行だ。歯の潰れかけている巨大な段平だんびらを手にしている。その數、50は下らないだろう。

村にあった書で見たことがある。あれはたしかワーウルフというモンスターだ。魔力を多く持って生まれたオオカミがまれに進化し、ワーウルフとなる。知能はそれなりで、群れを組んで行商人などを遅う事が多い、好戦的なモンスターだ。

「後方支援部隊、放て!」

龍選隊のかけ聲により、魔道士や弓使いの攻撃が放たれる。

近くにいたワーウルフが數匹倒れたが、かなりの數がまだ殘っている。木や窪みなどにうまくを隠し、まぬがれたようだ。

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だが魔道士たちの攻撃はまだまだ止まない。俺の隣でも、千春さんが詩詠唱を始めていた。

『――私は魔道を行使する

止まぬ雨は我の心を寫したるか

吹き荒む風は我が憎しみの現れか

我が涙は土塊を砕き汝らを覆い

我が慟哭は暴風と為りて汝らを巻き上げん

汝らの悲鳴が我が愉悅

汝らの絶が我が恍惚

怨嗟の囃子はやしを打ち鳴らせ 心の二重奏ブラッド・ストリーム』

千春さんが唱え終わると同時に地面から唸るような震。警戒して足を止めるワーウルフだが、それがいけなかった。ワーウルフの足下から吹き出した水は、渦を巻きながら上昇。そのまま他のワーウルフを大量に巻き込みながら上っていき、大木に激突したところでようやく霧散した。

水の竜巻が通過した後には、ワーウルフの無殘な片が散している。

「凄いですね、千春さん! あれは水屬……いや、風屬ですか?」

「両方の屬を同時に発してますです。復讐の魔道士と名高い倉敷水羽の詩詠唱です。この詩詠唱を本人以外に使えるのは私だけで、師匠にも使えないんです」

千春さんが得意げに言った。

これはに隠れた敵を倒すのにもってこいだな。基礎修行が終わったらぜひ教えてもらおう。

「よし、敵は浮き足立ったぞ! 前衛部隊は各個撃破にかかれ!」

龍選隊の合図で前衛部隊が一斉に駆け出す。戦士たちの刃は面白いほど簡単にワーウルフたちをやっつけていく。先ほど千春さんが放った魔法で浮き足立っているようだ。50はあったワーウルフの頭數は、半分も殘っていない。

俺もしは仕事をしないと……お、ちょうどいいところに2のワーウルフが。

「私は魔道を行使し続ける――サポート・ゴーレム」

したゴーレムの力で一気にワーウルフとの距離を詰める。

間合いにるよりし早く、手前の一が俺に気づいた。

俺はゴーレムで急停止。

ワーウルフが振り下ろした鈍刀が目標を見失い空を切る。ゴーレムに魔力を送り、再加速。ワーウルフの橫を通り過ぎながらがら空きのへ橫薙ぎに一閃。

切られたワーウルフが悲鳴を上げるより速く、次の目標に方向を定め、加速。

次のワーウルフが慌てて武を振り下ろす。

先ほどのワーウルフと同じ、代わり映えしない攻撃手段だ。手慣れた冒険者であれば、深くを取ることは無いだろう。サポートゴーレムで能力を強化している俺であればなおさらだ。

先ほどと同じく急停止で刃を剃らす。刃が地面に突き刺さると同時に跳躍。ワーウルフを飛び越える瞬間に頭部へ振り下ろしの一撃。

地面へ降り立つと同時にワーウルフがばったりと倒れた。……人型の生きを直接殺めるのはこれが初めてだ。知能の低いモンスターとはいえ、とてつもなく罪悪がある。

《気に病むことはありませんマスター。ワーウフルは人々を襲う殘な種族です。マスターのご活躍で多くの人が命を救われることになります》

(ありがとうコン先生。うーん、しかしこれは気持ちの問題だからなあ。いくら理的に納得しようとしても、この罪悪だけは拭えない気がします)

《マスタ。これから始まる呉と戦いで殺すのは人間です。マスタはその罪悪というを捨てなくてはいけない》

(それは……考えないようにしていたんだが。……まあ、そうなるよな)

これから始まる戦爭は、人間同士の爭いだ。モンスターなんかでためらっているばあいでは無いだろう。

俺が煩悶していると、突然の頭痛に襲われる。この痛みは……まさか。

『おーい、あるじ。修行は中斷じゃ。また影が出てくるぞ』

馬車から顔を出した鈴音が言った。あいつ、さぼっていやがったな。

『グロォォオオオオオ』

ん、なんだか懐かしい鳴き聲。

聲の正へ視線を向ける。

いた、大型のモンスターが2。馬車道の上から俺たちを見下ろしている。そのモンスターにはとても見覚えがある。

グレーターウルフ。俺がこの世界で始めに出會った強敵だ。

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