《聲の神に顔はいらない。》18 味噌
「何か食べたいものでもありますか? 作りますよ?」
「は?」
ちょっと耳が仕事してないみたいだ。靜川秋華が何を言ったのか聞こえなかった。
「何か作りますよ?」
「おいおい噓だろ?」
俺の人生の中でトップテンにはいろうかという衝撃が起きた。あの我が道を行く……というか我が道しかいってないこいつが料理?
「まともに食えるもの出せるんだろうな?」
俺はそこら辺曖昧に濁したりはしない。不味いは不味いという派だ。他者とのいざこざを好まない俺からしたらあれ? と思うかもしれない。勿論相手は選ぶ。付き合いで招いて貰った場所の食事をけなすような事は社會人としてはしない。
だが個人的で近い相手なら遠慮なんていらないだろう。近いなんてこいつに使いたくない表現だが……でも確実に近づかれつつあるよな。家にあげる頻度が確実に上がってる。こいつって事を利用してくるからな。
「先生、私こだわるですよ? 確かに楽ちんが好きですけど、拘ったら楽なんて求めません。求めるのは最高です」
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「聲優は?」
「楽ちんが一番ですね~。まあ楽しんではいますからいいんですけど」
どうやらこいつの中では聲優は楽しいけど、最高を求める程のではないようだ。それで大人気聲優なんだからな……必死な人達が聞いたら怒りそうだ。
「そもそも俺、晩飯食ってるけどな」
「それじゃあお任せって事でいいですね」
聞いてねえこいつ。何が何でも手料理を食べさせたいみたいだ。けどそもそもこいつ何回か來てるが、大食っちゃ寢するだけで、料理しようなんて気すらなかった。それなのに突然こんな……絶対に最近始めただろ。
不安が強くなったが、不味かったらズバリいうだけだ。こいつにはなんの遠慮もいらないからな。
案外手際は良いらしく、テキパキと作業を進めてく靜川秋華。ずっとあいつを見てる訳にもいかないから、俺はパソコンで仕事をする。本當なら寢ようと思ってたんだがな。深夜アニメは、深夜とつくだけあってやってる時間が遅い。
だからここから靜川秋華の料理が出來て食べてこいつがうるさい事を勘定にれると、寢るのは三時くらいになりそうだ。睡眠時間は大切だというのに、若さはそんなの吹き飛ばすらしい。いや、若さというよりとかか?
自分で言って恥ずかしくなるな。まあけど、ならこっちの事も気にしてしい。
「先生、どうして私って先生の作品に出れないんでしょう?」
「ぶっ」
料理しながら靜川秋華がぶっこんできた。まあここまで近くて、今までその質問してこなかったのが不思議なんだけどな。
「合わなかったんだろ?」
そういうのは事実ある。特に靜川秋華の様な大人気聲優は々と合わない事は多い。スケジュールとかな。だってどこだった大人気聲優は使いたいんだ。だからこっち的にはどうぞどうぞ……ってスタンスな訳で実際使わないって意思があるわけじゃない。うん。
ただほら、こいつ大人気聲優だから。
「先生が故意に私を外してるって噂を聞いたんですけど? 噓ですよね?」
「そんな事する訳ないだろ?」
「ですよね!」
一オクターブくらい上がった聲を出す靜川秋華。
「ないない、だって俺一人でそんな事言ったら我儘な奴になる。俺は円満な関係を築けるように気を使ってるんだよ。一人でお前を外すような主張はしないよ」
「それじゃあ、一人じゃなければするようなこと言ってません?」
「だからそこは合わなかったんだよ」
んな要素がさ。原作者だからってなんでも決めれると思うなよ。じっさいはそれとなくこいつを外してる訳だが……それはいわない方がいいことだ。結局皆さんが納得してくれるんだから、俺だけの意思でもないしな。
そもそもこいつは仕事に困って何ていないし、俺の作品に拘る理由なんてないだろ。
「でも妻としては夫の作品に一つくらいは參加したいと言いますか」
「妻じゃないだろ」
「時間の問題ですから」
どんだけ自信満々なのこいつ。そんな會話をしてる間に靜川秋華の料理は完したようだ。それは何故か味噌だった。見た目の割に渋いチョイスしてくるな。今深夜だが? 味噌って朝に食べるイメージがある。
殘ってた白飯を茶碗に盛って、そして味噌。まじでこれは朝食か? しかもかなり質素な……おかずないからな。まあ十分だが。
「さあどうぞどうぞ」
にこにこ顔の靜川秋華。その顔からは自信がうかがえる。確かに不味そうには見えない。てかこいつが作ったにしては普通だ。とりあえずお椀をもって啜ってみる。
「どう、どうですか?」
「…………普通?」
正直な想だ。別に不味くはない。味噌って味だ。
「よし!」
何故か腰位の位置にある手をしっかり握ってそういう靜川秋華。この出來でこれだけ喜べるのがわからない。いや、安心あるがな。
「お味噌に一番大切なのは安心なんですよ先生?」
ぐっ、なんか俺がじた事が言葉に出されたらから、負けた気分になる。狙ってこんな普通にしてるのだとしたら、凄い…………様な気もしなくもない。
「こうやって胃袋を摑んでいくのって大切ですよね」
「まだ摑まれてないけどな」
安心はあるが、普通だからな。別に印象に殘ることはない。ワンカップ極みでいいよ。ちなみにワンカップ極みは市販のボトル型味噌をセットすれば、簡単に味噌を製造してくれる機械だ。手軽でとても簡単に味噌が飲める。
「直ぐに私に夢中になりますよ。実際、先生は私を拒絶しても他の作らないし。それは無意識下で私に悪いと思ってるからですよ」
「別にそういうわけじゃ……」
「先生に言い寄ってくるとかいっぱいいるでしょう?」
「そうでもないぞ?」
お金があれば沢山のが寄ってくるとはいう。それは事実ではあるとは思う。でもそれはそういう場に行けばの話だ。
「俺は大抵家にいるし、外に出る時も仕事関係だしな」
いうなれば出會いがない。そういう店に行くときも接待とかだ。こっちがするんじゃなく、される側だが……そういう所の子達はとてもちやほやしてくれる。だがそれは仕事だ。俺は外であったりとかしたことない。
寧ろ俺は一歩引かれてる事が多い気がする。
「先生はただの作家じゃないですもんね。相手もしり込みするのかもですね~」
「そういうものなのか?」
「その點、私ならなんの問題もありません。ビックカップルですよ」
「俺、お前のファンに刺されたくないんだよ」
聲優のファンとか怖そうじゃん。寧ろ、俺は自分の作品のファンでさえ恐ろしいと思う事あるぞ。だって自分よりも詳しいんじゃねこいつ? ってファンレター時々屆くからな。気にらない展開とか、お気にりのキャラの死とか……そういうのがあると過激なファンレターは増える。
それだけ語にのめりこんでくれてるって証拠なんだろうが、フィクションとして割り切ってしい。ありがたいんだけどな。
「確かに私のファンには濃い人多いですからね~。大丈夫ですよ。先生のもとに嫁ぐときに聲優はやめますから」
「それで許してくれるものじゃないだろ、ファンって奴は」
きっぱりすっぱり次に行く人もいるんだろうが、そうじゃない人だって大勢いるだろう。そういうのが怖いからこいつとはそういう間柄になりたくないんだ。そう割り切ってるから、ここまで許してるのかもしれない。
でもこの心の柵の様なものは結局意識一つで変わるんだよな。こいつの見た目に時々見惚れるとかは確かにある訳で、実際こいつは近くに寄せ過ぎたと思ってる。今更遅いが……これくらいなら仕方ない――とかおもってるといつのまにか手料理食わされてるからな。
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