《聲の神に顔はいらない。》44 これは夢だから! 夢だからノーカンです。

  床に膝をついてる私の前に現れたのはお世話になった先生だった。私が初めてフルで出演したアニメの原作者様だ。あのアニメでは聲優としての自信がなくなったよ。私は技だけはあると思ってたからね。

  でもこの人は厳しかった。自分では上手くできたと思ってもそれ以上をいつも求められてたと思う。けど打ち上げの時、褒めてくれた。謝ってくれた。良い人だとはわかってる。だからこんな私にも聲を掛けてくれたんだろう。

  だってこの人は私みたいな底辺を這ってる聲優からすれば天上人のような人だ。私をよしんば潰したとしても、きっとこの人は責められることなんかない。だってそれだけ、私とこの人の価値は違うんだ。だからもっと橫暴であってもいい……いや、いいとは思わないけどあれだけヒット作連発して鼻が高くならないんだろうか? 普通なると思う。

なくとも私はなるね。容姿がこんなだから他の事でマウント取れるのなら、それを最大限活用したい。本當なら聲優としてそれが出來れば……いや、聲優は一生続けたいから業界の人に嫌われる様な事は極力しないけどね。まあ皮算用でしかないが。

私は結局今だ底辺聲優で、この手を差しべてるそこそこのイケメンは大人気作家。

「何が……目的ですか?」

思わず二の句にそんな事を言ってしまった。だって確かに知り合いではあるが、わざわざ私に手を差しべるだろうか? 私は何度も言うがブサイクだ。しつこいが、男に優しくされた事なんか、詐欺師以外からない位にはブサイクだ。

だからこれを善意で……なんてうけとれない。けど、この人が私に何かを求めてるとも思えない。だってこの先生は全てを持ってる人なのだ。実力も実績も人気も全てを兼ね揃えてる。これでブサイクなら親近しは湧いたかもしれない。

けどこの人はそこそこイケメンなのだ。ハッキリ言ってそこそこイケメンで、更にさっきの肩書がプラスされれば最強だ。そんな人が私に親切にしてくれる? これは……

(夢だね)

多分私はいつの間にか気絶してしまったんだろう。やけにリアルな夢だが、そう思わないとこの人が私に聲を掛ける理由なんてないんだ。私は全ての男にスルーされて詐欺師に鴨だと思われるだ。だから結論……これは夢なのです。

「ああ、すみません夢でした」

「はい? 本當に大丈夫か?」

夢にこの人が出てきたという事は、私はなからず意識してたのだろうか? いや、超怖い人として意識はしてた。勿論それは面じゃない。この人の権力的なだ。だからそんな意識がこの人を……いや、今めっちゃ優しいけど。それはあれかな、打ち上げの時の印象が引っ張ってるんだろう。

「大丈夫です……先生のお手を煩わせるなんてしませんから……」

そういって無理矢理立ち上がろうとすると、調が悪かったせいで足がもつれた。それによって私は先生のに倒れこむ様な形になって……傍からはきっと抱き合ってるように。

(これは夢だから! 夢だから許されるよね!?)

私はグルグルする思考の中で、そんな事ばかり考えてた。

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