《聲の神に顔はいらない。》338 真正面から叩き潰すからクジはやめてください

私は若い芽を摘む老害になんてなりたくない。なりたくないって思ってた。老害はただ去るのみ……そんなかっこよさに憧れてたりしてた。確かにそんなふうにできたら格好いい。格好良く生きられたらどんなにいいだろう。こんな時でも「チャンスは若い人たちへ」なんて言えれば、「おぉ」なんて一目置かれたりするかもしれない。でも……それは余裕があるから出來ることだって、今の私は知っている。

だってまだ終わるには私達は早い。まあ北大路さんや登園さんはすでに十分活躍したじゃん……って気持ちはある。これ以上活躍しなくても……とか私の勝手な思いだがある。でも緑山朝日ちゃんから見ると、この二人と私って同世代なんだよね。つまり、緑山朝日ちゃんからしたら私だって上の存在なんだ。そしてそんな私は、これが最後のチャンスと思ってる。私だって自分がオーディションをけられなくなる確率は一%でも下げたい。

それが本音。ようは私だって、淺野芽依や北大路さん、登園さんと何も変わらない。なら、もちろん言うことも同じ……同じだけけど……ただ辭退させる、実力が足りない……そんなことで緑山朝日ちゃんは納得するか? いや違うかもしれない。

若い芽を摘むのは確かに老害だけど、でも実力を知らしめるのは先に生きてる私達の役目ではないだろうか? 強引に辭退させたら、緑山朝日ちゃんが納得できないのはわかる。そうなると、私達を彼は老害……とまでは思わなくても、いい先輩とは思わないだろう。今更、あの三人がそんなことを気にしてる訳もないんだけど……でも嫌われるか、尊敬されるかなら、尊敬のほうがいいよね?

誰しもが嫌われたいわけではないし……それに私は緑山朝日ちゃんの実力はわかってるつもりだ。確かに多はあの時からびたのだと思う。でも……負けるなんておもわない。私は聲なら誰にも負けないと思ってる。

「私は……いいですよ。私は絶対に……負けないから」

「せん……ぱい」

私は珍しく真っ直ぐに見て、そしてふふって笑った。すると緑山朝日ちゃんはちょっと後ずさる。なに気持ち悪かった? ごめんね。ちょっとショック。

「何言ってるんですか先輩! そんな新人まで巻き込んだら、混沌としちゃうじゃないですか!」

「そうよ、まだこのオーディションに出る実力は彼にはないでしょう。やるだけ無駄なのよ」

「殘念だけど、そうだと思うな」

淺野芽依、北大路さん、登園さんがそれぞれそういう。確かにそんなのわかってる。でも、言葉だけでは納得なんてできないっことだ。

「私は!」

「朝日……ちゃん。私はいいと思ってる……よ。戦おうよ。そうしないと納得なんてできない……よね? だから私は逃げない。ちゃんとけ止めて……そして……叩き潰して上げる」

それが私が出した答え。老害じゃないやり方だよ。

「よし、なら公平にクジでオーディションへ行く二人を決めましょう!」

「それだけはやめて!!」

私はその一文だけは初めてつっかかりもなく、自分の聲で最大の聲量で言っていた。だってクジって……実力じゃないじゃん! 運じゃん!! 私は運だってないんです!!

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