《一目惚れから始まった俺のアオハルは全部キミだった...》メジャーデビューへ 6
春子さんに連れられて小児病棟にやって來た。
長くこの病院に院していたが、小児病棟に來るのは初めてだった。小児病棟は、患者の子供たちの心をしでもやわらげるようにと、廊下やレクレーションルーム、病室にも様々な裝飾がしてあって、とても可らしい雰囲気だった。
｢院生活が長引いて、學校に通えない子たちのための院學級っていうのがあるの。その子たちの相手をしてあげてくれないかなと思ってね｣
『院學級』と書かれた部屋の窓からは、小學校低學年の子から高學年の子まで、男合わせて5人ほどが機を突き合わせて仲良く勉強をしている姿が見えた。
春子さんに続いて部屋にると、多分この中で一番低學年の男の子が駆け寄って來て、わたしにぴとっと抱きついて來た。
ん？誰かに似てるなこの子...
顔をよく見ようとしゃがむと、その男の子はおもむろにわたしのおっぱいに顔をうずめてきた！
｢！！｣
驚くわたしに向かって
｢後でオレの部屋こいよ｣
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とか言ってニヤっとしてる...
あー！！吉井先輩だー！！
チビ吉井だー！！
｢こらっ！和人(かずと)！生意気なこと言ってんじゃないの！｣
一番年上そうなの子に叱られて、チッとか舌打ちしてる。
｢和人がすいません｣
と頭をさげる彼にしがみつきながら、わたしの様子を伺ってるの子と、我関せずとでもいうように、黙々と勉強する眼鏡の男の子。そしてもう1人、こちらの様子に興味は見せてるものの、席に座ったままの大人しそうなの子。
それぞれ皆あんな小さいで、病と戦っているのかと思うと、が締め付けられる...
｢はいはい、みんな席に座ってくださーい。｣
春子さんがみんなを座らせた。
｢今日は、お姉さんにお勉強教えてもらってくださーい。
このお姉さんもみんなと同じで病気でね、今ちょっと聲が出ません。だから、お話しする時は紙に書いてお話ししてね。
あ、あと右手も不自由だからね、手伝ってあげてね。｣
それだけ言うと、春子さんは仕事に戻って行った。
さっきから大人しく座っていたの子が席を立ち、わたしのもとにやって來て、遠慮がちにわたしの右手にれてきた。
｢お姉ちゃん、手が不自由なの？｣
わたしはコクんと頷くと
｢わたしは足がないの｣
と言って義足を見せた。
｢芽(めい)が自分から話しかけるなんてめずらしい...｣
わたしと芽ちゃんのやり取りを見て、一番お姉さんの彼が驚いてる。
｢あ、ごめんなさい。
あたしは由香、白病で院してます。
この子は芽、骨腫というガンで右腳を無くしたの。あまり喋らない子で、あたしにも自分から話しかけてくるようなことはないからびっくりしちゃって...多分、あなたが手が不自由って聞いて自分と同じように思ったんだと思います。｣
コクコクとわたしは頷いた。
｢それから、さっきの悪ガキは和人、小學1年生で一型糖尿病。
眼鏡の男の子は優斗(ゆうと)小學3年生、心臓が悪いの。
あたしにくっついて離れないこの子は心(ここあ)小學2年生、小児がんなの。
あたしは6年生、芽は4年生よ｣
わたしは慌ててそこにあった畫用紙に、側にあったクレヨンで
『わたしは來蘭(らら)高校2年生です』
と書いた。
それからわたしは、子供たちとお絵かきをしたり、算數ドリルや漢字の読み書きを見てあげたりしながら時を過ごした。
ふと部屋の隅にあるピアノとギターが目にる...
ギター弾く子が居るのかな...なんて思いながらそのギターを持った。
｢來蘭ちゃんギター弾けるの？｣
芽ちゃんがわたしに聞く。
頷きながら、ギターの音を出した。
｢紫音先生がね、時々弾きに來てくれるの｣
由香ちゃんが言う。
紫音先生、ここでギター弾くんだ...
｢あれ...だって來蘭ちゃん右手不自由なのに、どうやってギターを...｣
答える代わりにギターを弾いて鳴らしてみせると、腳を無くした芽ちゃんが、じっとわたしの鳴らすギターに耳を傾ける姿が目にり、この子に思いを伝えたいという強い衝に駆られ、わたしは歌い出していた。
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