〈奏太side〉

エレベーターの扉が開くと同時に聞こえてきた來蘭の歌聲に、もうは勝手に走り出していた。

歌聲のれ聞こえる部屋に、無我夢中で駆け込んだ。

來蘭の姿しか目にらなかった...もうそれしか、それだけしか見えなかった。

ギターを奪い、膝を著き、抱きしめた。

｢良かった...無事で良かった...｣

｢そうちゃん...ごめんなさい...聲が出なくなって、怖くなってわたし...｣

｢ばか...謝るな...來蘭1人にいろんな重圧を背負わせてしまった俺たちがいけないんだから｣

來蘭の頭に手を置き、髪をでる。

｢なんだよー！せっかく來蘭ねーちゃんの歌聞いてたのによー！じゃますんなよーもー｣

なんかちっちぇー吉井先輩みたいなガキが、ブーブー文句言ってる...

｢こらっ！和人！まったくもぅ...

あの...今、來蘭ちゃんが歌ってくれた曲ってもしかして『Re Light』ってバンドの曲じゃ...

最近SNSで仲良くなった子がRe Lightのこと大好きで、し聞かせてくれた曲に似ていたような...｣

そう話すの子の背後から優輝が

｢いかにも！今來蘭ちゃんが歌ったのは、僕ら『Re Light』の曲だよ！｣ 

｢僕ら？｣

｢ボーカルの來蘭、ギターの介、ベースの加奈、ドラムの奏太、そして僕がキーボードの優輝。｣

優輝が順番に紹介をすると

｢えっ？！ 今目の前に『Re Light』のメンバー全員が居るってこと？｣

驚く彼に向かって全員で頷いた。

｢信じられない...｣

｢私...來蘭ちゃんの歌、すき...

來蘭ちゃんがすき...｣

パジャマの裾から義足を覗かせるの子が、來蘭に歩み寄り呟いた。

｢來蘭ねーちゃんは、オレのなのっ！｣

チビ吉井がどさくさに紛れて、來蘭のおっぱいに顔をうずめる...

｢うぉいっっ！！なにやってんだよっ！！そんなこと俺だってしたことねーのにっ！！｣

來蘭は苦笑いしながら、おっぱいにぐりぐりしてるチビ吉井をよしよししてる...

｢和人ずるい...私も來蘭ちゃんのおっぱいもふもふしたい｣

義足のの子がむくれてる。

｢はい、ほら芽ちゃんもおいで｣

來蘭はそう言って右側のおっぱいに迎えれ、左側にはチビ吉井を抱いてやった。

｢うわ...あんなんパラダイスじゃん...｣

思わず呟いた介の後頭部を叩く。

｢痛って｣

｢生の迫力なんかあんなもんじゃないよね？青木？｣

｢あんなもんじゃないよ！っておい！加奈！見た事あんのかよ！｣

｢あるに決まってんじゃん、一緒に住んでる同士なんだから｣

と言って、不敵な笑みを浮かべた。

｢來蘭ちゃんって子はほんとに、老若男を虜にさせちゃうよなぁ...あの魅力に墮ちないヤツは居ないもんなぁ...本人全く自覚ないけど...｣

と言う優輝に

｢優輝さんも來蘭ちゃんに？｣

と聞く一番お姉さんのの子

｢ん？僕？もちろん墮ちたよ、あの歌聲にね...

僕があの歌聲を見つけたんだ...だから來蘭ちゃんを『歌姫』に導くのは僕の使命なんだよ...｣

と言って來蘭を見る橫顔を、隣で剎那に見つめるの子の視線には、優輝はまだ気が付かずにいた...

｢Re Lightのライブ、いつか見に行ってみたいなぁ...｣

と言うの子に、始めて視線を向けて優輝は

｢おいでよ！えっと...君の名前は...｣

｢あたしは由香。行ってみたいけど...まだこれから抗がん剤の治療があるの...白病なんだ、あたし｣

｢.....よし、わかった、僕らがこれからやるライブには、必ず由香ちゃんの席を用意しておくから！由香ちゃんが病気を克服したら、必ず見においで！僕たち待ってるから！｣

｢ほんとに？あたしの席を？｣

｢ああ！いつ來たっていいようにしとく！だから治療がんばれ、由香｣

由香と言われた彼の頬が、ほんのりと桜に染まった。

優輝と由香ちゃんの間に生まれたを、僕らは微笑ましく見守っていた...