《(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~》年越しそばと除夜の鐘・中編

「もちろん、そんなことは有り得ないですよ。ただ、そういう習慣があるというだけのことです。だからそれに誰も違和を抱くことはありません。みんな『そういうもの』という認識でしか無いですから」

小難しいことを言うが、要するに『みんな食べているから食べる』だけのことなのだ。

まあ、私としては食事に七面倒な知識をもって臨みたくない人間(今はドラゴンメイドだが)であるから、ケイタのその発言は私のプライド的にはし苛立ちを隠せないものだった。

◇◇◇

そしてなんやかんやあって――今私の目の前には蕎麥があった。時刻はケイタの國でいうところの二十三時を回ったあたり。即ち、もうすぐ年が変わるというタイミングでのことだった。

「ほんとうは家族で過ごしたかったんですけれどね……でもメリューさんたちにそれを伝えるためにわざわざこの日にやってきたわけですよ」

「……何でさっきから上から目線で話しているんだ? まったくもって、理解出來ないのだが」

「……な、何でもないですよ。実はいろんな事があって家族がバラバラになって大晦日に集まれなくなったとか、そういうわけではないですから!」

………………。

なんというか、噓が下手だよなぁ……こいつ。別に噓を上手く吐けとは言わないけれど、もうし、限度ってものがあるだろ。

ま、そんなことはどうだっていい。私もティアも、今日の夜ご飯は何にするか悩んでいたところだったし、今日くらいケイタに甘えるのもいいのかもしれない。

「というわけで、こちらです」

そう言ってケイタは私たちの目の前に――今カウンターの席に座っているのだ――丼を二つおいた。

「……なんだ、これは?」

「それが、俺の言った『年越しそば』ですよ。年末にぴったりでしょう?」

いや、そういうことでは無くてだな……。

まあ、とりあえず中をようく見ていくことにしよう。中は麺だから、し放置してしまうとすぐにびてしまうが、そんなことはどうでもいいだろう。初めて見る料理だ。あわよくば新しいメニューに追加出來るよう、しっかりと中と見た目をこの目に焼き付けておかねば。

それでは一つずつ中を見ていくことにしよう。なに、中は至ってシンプルだ。揚げ玉にわかめ、それに灰の麺。そして目を引くのは、丼の真ん中をぶった切るように置かれている、巨大な天ぷらだった。

「これは……?」

「海老の天ぷらですよ。……ああ、そう言ってもあまり聞き覚えが無いかもしれないですね。メリューさんにはシュリンプって言えば通じますかね」

シュリンプ!

なんと謎の天ぷらの正はシュリンプだった。何たることか、まさかケイタの世界にはこんな巨大なシュリンプがあるなんて!

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